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お風呂の手すりと入浴用品の選び方浴槽のまたぎ方・シャワーチェア・浴槽台

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年9月13日/最終確認日:2026年9月13日

浴室は、濡れた床での移動や立ち座り、浴槽のまたぎ、お湯の中での立ち上がりと、転びやすい場面が続く場所です。さらに冬は、脱衣所との温度差による体調の急変にも気をつける必要があります。

この記事では、手すりをどこから付けるか、浴槽のまたぎ方の選び方、シャワーチェアや浴槽台などの入浴用品の選び方、寒さによる事故の防ぎ方をまとめました。

この記事のポイント
  • 手すりを1本だけ付けるなら、濡れて滑りやすい洗い場の横手すりから。歩行が比較的安定している方は、いちばん危ない浴槽の出入りから
  • 浴槽を立ってまたぐか座ってまたぐかは、転びやすさと体の動き方で決める。手すりを持った立った姿勢が安定していれば、立ってまたぐ方法も
  • 股関節の手術(人工骨頭・人工股関節)を受けた方は、脱臼しやすい姿勢に注意。手術を受けた病院の指導を優先する
  • 入浴用品は、介護保険ではレンタルではなく購入(年間10万円まで、自己負担1〜3割)
  • 冬は脱衣所と浴室を暖め、お湯は41度以下・10分までが目安

1. 浴室で転びやすい場面

2. 手すりはどこから付けるか

浴室に手すりを何本も付けられれば安心ですが、壁の広さや費用の都合で、まず1本から、ということも多いと思います。その場合の考え方です。

浴室の手すりの位置の例 浴室の図。浴槽の端の上の壁にL字型の手すりがあり、縦の部分は洗い場側、横の部分は浴槽の縁の少し上を奥へ伸びている。浴槽の長い辺に沿った壁には、別に横手すりがある。洗い場の壁には、シャワーチェアの近くに横手すりがある。3本はつながっていない。 L字型手すり 浴槽の出入りに 浴槽の横手すり 浴槽の中での 立ち座り・姿勢の保持に 横手すり 洗い場での 立ち座り・移動に
浴室の手すりの位置の例。L字型手すりは浴槽の端の壁に、浴槽の横手すりは浴槽に沿った壁に、横手すりは洗い場の壁に付けます

手すりの形の使い分け

手すりの表面は、濡れた手でも滑りにくい、凹凸(波形)のあるものがおすすめです。付ける位置は、ご本人に実際に手を添えてもらって確かめてから決めると失敗しにくくなります。高さの測り方は「手すりの高さの決め方」もご覧ください。

3. 浴槽のまたぎ方:立つか、座るか

浴槽の立ってまたぐ方法と、座ってまたぐ方法 左は、浴槽の横に立ち、壁の縦手すりを両手で握って、浴槽側の脚を縁の上に上げている図。右は、浴槽の横に置いたシャワーチェアに手すりの方を向いて座り、縦手すりを両手で握ったまま、片脚を浴槽の中に入れている図。 立ってまたぐ 座ってまたぐ
どちらも、縦手すりを両手でしっかり握って行います。座ってまたぐときは、シャワーチェアの高さを浴槽の縁に合わせます
立ってまたぐ手すりを持って立った姿勢が安定している方に。浴槽の横に立って手すりの方を向き、両手で手すりを握って体を支えながら、浴槽側の脚から片足ずつまたぎます。
座ってまたぐ立った姿勢のバランスに不安がある方に。浴槽の縁と同じ高さのシャワーチェアやバスボードに座り、手すりにつかまりながら、片足ずつ浴槽に入れます。

公的な資料には、「高齢の方はなるべく座って出入りする方が安心で、とくに一人暮らしの場合は、立ってのまたぎは避けたい」とするものもあります。年齢とともに、脚の力よりも立ったときのバランスが大きく低下するためです。

理学療法士の視点から ただし、座ってまたぐ方法が、いつも楽とは限りません。座った姿勢は股関節がすでに曲がっていて、そこからさらに深く曲げて足を持ち上げる必要があるため、かえって足が上がりにくい方もいます。反対に、立ったままではまたぎにくい方もいます。どちらが安全かは、転びやすさと体の動き方によって変わります。手すりを持って立った姿勢が安定しているなら、立ってまたぐ方法も選択肢です。リハビリの専門職と一緒に、実際に両方試して決めるのがおすすめです。

浴槽から立ち上がるとき

足をお尻の方へ引き寄せ、頭を前に出すようにして体を前に傾けてから、縦手すりを使って立ち上がります。お湯から出るときは、急に立ち上がらず、ゆっくり動くと、立ちくらみを防げます。

4. 入浴用品の種類と選び方

シャワーチェア(入浴用いす)

シャワーチェアの例(背もたれなし・背もたれあり) 左は背もたれのないシャワーチェア、右は背もたれのあるシャワーチェア。どちらも座面に水抜きの穴と持ち手があり、4本の脚は下に向かって広がり、長さを変えて高さを調節できる。 背もたれなし 背もたれあり
シャワーチェアの例。どちらも脚の長さを変えて、座面の高さを調節できます

洗い場で体を洗うときに座るいすです。多くのものは、脚の長さを変えて座面の高さを調節できます。

  • 洗い場は案外狭いことがあります。いすを置いたら、通り道がなくなってしまった、ということもあるので、置き場所と大きさを先に確かめておくと安心です。
  • 背もたれは必要に応じて。洗い場が狭く、通り道を確保できない場合は、背もたれの優先度は低くなります。
  • 肘掛けは、座った姿勢が安定しない方向けです。ただ、そのような方は入浴そのものの危険が高いため、ご家族の見守りや介助のもとで入浴していることが多いと思います。
  • 高さ:洗うのが中心なら、足の裏が床に、太ももが座面にしっかり着く高さ。立ち上がりを楽にしたいならやや高め。浴槽の出入りに使うなら、浴槽の縁の高さに合わせます。
  • 座面や肘掛けに手をついて立ち上がる場合は、脚が座面より外に広がった、倒れにくい形のものを選びます。

浴槽台(浴槽内いす)

浴槽内いすと滑り止めマットの置き方の例 浴槽の手前の側面を取り除いて中を見せた図。浴槽の端の底に、脚の短い低い浴槽内いすが置かれ、その前の足を置くあたりに、小さな滑り止めマットが敷かれている。 浴槽内いす 滑り止めマット
浴槽内いすと滑り止めマットの置き方の例(浴槽の手前の面を取り除いて、中を見せた図)

浴槽の中に置いて座る台です。浴槽が深くて出にくい方や、膝や股関節が曲がりにくい方に向いています。

  • 高すぎると半身浴になる:肩までお湯につかれず、体が冷えてしまいます。座ったときの肩の位置を考えて高さを選びます。
  • 脚が吸盤などで、浴槽の底にしっかり固定できるものがおすすめです。

滑り止めマット

  • 浴槽の中:立ち上がるときに足が滑って踏ん張れない方は、浴槽の中に滑り止めマットを敷くと安定します。吸盤で浴槽に固定できるものを選びます。
  • 洗い場:なるべく全面に敷き詰めます。小さく分かれていて組み合わせるタイプは、端まできちんと敷き詰めないと、かえって滑ることがあります。

滑り止めマットは、介護保険の購入の対象ではありません。市販のものを使います。

バスボード・浴槽の縁に付けるいす(入浴台)

浴槽の縁に渡したり取り付けたりして、座ったまま浴槽に出入りするための台です。バスボードは、厚いと浴槽の底に足が着きにくくなるため、なるべく薄くて軽いものがおすすめです。浴槽の縁に取り付けるいすは、それだけでは体が不安定になりやすいため、手すりとあわせて使います。

浴槽用手すり

浴槽の縁を上からはさんで固定し、2本の支柱の上に輪の形の握りが付いた手すりの図。洗い場側に締め付け用のつまみがある
浴槽用手すりの例。浴槽の縁にはさみ、洗い場側のつまみで締め付けて固定します

浴槽の縁にはさんで固定する手すりです。壁に工事をしなくても付けられるので、賃貸住宅でも使えます(介護保険では購入の対象です)。主に、立ってまたぐときや、浴槽から立ち上がるときの支えに使います。

  • 使う前に、しっかり固定されているか(締め付けのつまみがゆるんでいないか)を毎回確かめます。
  • 浴槽の縁の幅や厚み、材質によっては取り付けられないことがあります。購入の前に、福祉用具の事業者に浴槽を見てもらうと安心です。
  • より安定させたい場合は、洗い場の床まで脚が伸びるタイプもあります。

すのこ(浴室内すのこ)

洗い場に敷いて、脱衣所との段差をなくすためのものです。洗い場の一面に敷き、動かないようにします。木製のものはしっかり乾かす手間がかかるため、樹脂製の方が手入れはしやすいです。

5. 片麻痺の方の場合

6. 股関節の手術(人工骨頭・人工股関節)を受けた方の場合

太ももの付け根の骨折などで人工骨頭置換術を受けた方や、変形性股関節症などで人工股関節全置換術を受けた方は、股関節が特定の姿勢になると脱臼(人工の関節が外れること)が起こるおそれがあります。入浴は、低いいすに座る、浴槽をまたぐ、足先を洗うなど、股関節を深く曲げたりひねったりする動作が多いため、とくに注意が必要です。

気をつける姿勢は、手術の方法によって違う

どの姿勢に気をつけるかは、手術の方法やご本人の状態によって異なります。手術を受けた病院で指導された姿勢と動き方を守ることが、いちばん大切です。脱臼が起こることは多くはありませんが、手術後3か月ほどまでは、とくに起こりやすい時期の目安とされています。ただし、それ以降に起こることもあるため、時期にかかわらず、指導された注意点を続けておくと安心です。

入浴のときの工夫(病院の資料でよく示されている例)

退院前に、自宅の浴槽の高さや形を病院のリハビリ職員に伝えておくと、家のお風呂に合わせた入り方を入院中に練習できます。

7. 寒さによる事故を防ぐ

高齢の方の入浴中の事故は、11月から4月の冬の時期を中心に多く起きています。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移り、熱いお湯につかると、血圧が大きく変動して体調を崩しやすくなるためです。

消費者庁が呼びかけている注意点
  1. 入浴前に、脱衣所や浴室を暖める
  2. お湯の温度は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にする
  3. 浴槽から急に立ち上がらない
  4. 食後すぐの入浴や、飲酒後、薬を飲んだあとの入浴は避ける
  5. 入浴する前に、同居しているご家族に一声かけておく

8. 介護保険で入浴用品を買うには

入浴用品は、肌に直接触れて使うため、介護保険ではレンタルではなく「購入」の対象です(特定福祉用具販売)。

壁に付ける手すりや、入口の段差をなくす工事は、住宅改修(工事費20万円まで)の対象です。どちらも、まずは担当のケアマネジャー(要支援の方や、まだ担当がいない方は地域包括支援センター)に相談するところから始めるのがおすすめです。それぞれの役割は、記事「地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い」でまとめています。

関連ツール 住宅改修と福祉用具の費用 浴室で困っている場面から、手すりの工事や入浴用品の自己負担の目安がわかります。

9. よくある質問

手すりは何本くらい必要ですか?

場所ごとに役割が違うので、まず「どこで不安か」を分けて考えます。浴室の出入口の段差、洗い場での立ち座り、浴槽をまたぐとき、浴槽の中から立ち上がるとき、の4つが代表的な場面です。
すべてに付けると数が多くなりますが、実際には2〜3本で足りることがほとんどです。どの場面で困っているかを伝えると、福祉用具専門相談員やリハビリの専門職が優先順位を付けてくれます。

浴槽のふちに付ける手すり(浴槽用手すり)は、工事なしで使えますか?

使えます。浴槽のふちを挟んで固定するタイプで、工事が要らず、介護保険のレンタルの対象です(自己負担1〜3割)。またぐときにつかまる支えになります。
ただし、浴槽のふちの形や厚みによって、取り付けられないことがあります。ふちが丸い浴槽や、エプロン(側面のカバー)の形によっては固定が不安定になるため、実物を見てもらってから決めるのがおすすめです。

滑り止めマットは、敷いたほうがよいですか?

洗い場も浴槽の中も、濡れた床は滑りやすいので、置く価値はあります。ただし、マットの端がめくれると、それ自体につまずくもとになります。吸盤でしっかり留まるものを選び、使ったあとは干して、ぬめりが出たら早めに交換します。
浴槽の中に敷くタイプは、立ち上がるときの踏ん張りが効きやすくなります。

シャワーチェアは、どのくらいの高さがよいですか?

座ったときに足の裏がしっかり床につき、ひざが軽く曲がる高さが基本です。低すぎると立ち上がりにくく、高すぎると足が浮いて不安定になります。
立ち上がるのが大変な方は、座面を少し高めにすると楽になります。背もたれやひじ掛けが付いたものもあるので、洗い場の広さと、どこまで支えが必要かで選びます。シャワーチェアは介護保険のレンタルではなく、購入(特定福祉用具)の対象です。

一人で入浴させるのが不安です。どうすればよいですか?

無理に家で続ける必要はありません。デイサービスやデイケアでは入浴を済ませられますし、訪問介護で入浴を手伝ってもらう方法もあります。
家で入る回数を減らして、その分を外で済ませるだけでも、ご家族の負担と事故の心配は大きく減ります。「家で入れないと申し訳ない」と感じる方が多い場面ですが、安全に入れる場所を選ぶことも一つの方法です。担当のケアマネジャーに相談してみるのがおすすめです。

ヒートショックが心配です。何から始めればよいですか?

いちばん手軽なのは、入浴前に脱衣所と浴室を暖めておくことです。浴槽のふたを開けておく、シャワーでお湯を張る、小型の暖房を置く、といった方法があります。
そのうえで、お湯の温度を41度以下にする、長湯を避ける、入る前に水分をとる、一人で入るときは家族に声をかけておく、といった点が挙げられます。心臓や血圧の薬を飲んでいる方は、入浴の注意点を主治医に確認しておくと安心です。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な考え方をまとめたものです。実際の手すりの位置や入浴用品は、ご本人の体の状態や浴室の広さによって変わります。