「手すりは床から80cm」とよく書かれていますが、これは多くの人に合わせた平均的な目安です。家の手すりは使う人が決まっているので、その人の体に合わせて高さを決めると、ぐっと使いやすくなります。
この記事では、場所ごとの高さと位置の目安と、ご家族でもできる測り方をまとめました。
- 廊下・階段の手すり(横手すり)は、腕を下ろしたときの手首の高さが目安。床から75〜85cm前後になることが多い
- トイレや玄関で立ち座り・段差に使う手すり(縦手すり)は、肘を90度に曲げた手の高さから、肩の高さまでの範囲が握りやすい
- トイレの縦手すりは、便座に座って腕を前に伸ばした指先のあたり(便器の先端から20〜30cm前)が目安
- 付ける前に、ご本人に実際に手を添えてもらって確かめると失敗しにくい
1. 手すりの高さは「使う人」に合わせる
駅や病院などの手すりは、誰が使うかわからないため、平均的な高さで付けられています。一方、家の手すりは使う人が決まっているので、その人にぴったりの高さにすることができます。
高すぎる手すりは肩がすくんで力が入りにくく、低すぎる手すりは前かがみになって、かえってバランスを崩しやすくなります。とくに高齢の方は、背中や腰が丸くなって、若いころの身長から考えるより手の位置が低くなっていることがよくあります。身長から計算するより、今の姿勢で実際に測るのがおすすめです。
2. 廊下・階段の手すり(横手すり)
廊下や階段の手すりは、手を添えたり、滑らせたりしながら歩くために使います。
測り方
- ふだん家の中で履いている靴下やスリッパのまま、壁の横に立ちます。腰が曲がっている方は、無理に背筋を伸ばさず、ふだん歩くときの姿勢で大丈夫です。
- 腕の力を抜いて、自然に下ろします。
- 床から、手首の骨の出っ張り(手のひらと腕の境目あたり)までの高さを測ります。
この高さは、脚の付け根の外側にある骨の出っ張り(大転子)の高さとほぼ同じで、多くの方で床から75〜85cm前後になります。
目安から少し調整したいとき
- ふらつきが強い方は、少し高めにすると体を預けやすいことがあります。胸の高さくらいまでなら、無理なく使える範囲です。
- 杖を使う方は、杖の長さも同じく「腕を下ろしたときの手首の高さ」が目安なので、手すりと杖の高さがそろいます。
- 家族みんなで使う場合は、いちばん支えが必要な方に合わせるのが基本です。身長差が大きいときは、高さの違う手すりを上下に2本付ける方法もあります。
階段の場合
- 高さは、段の先端(段鼻)から手首までを測るのが基本です。国の指針では、段の先端から70〜90cmの位置とされています。
- 手すりの端は、いちばん上といちばん下の段より少し先まで水平に伸ばしておくと、段に足をかける前と降りきったあとも支えられます。
- 片側だけに付ける場合は、転びやすい「下り」のときにつかめる側に付けるのが基本です。体の状態によっては、次のように考えます。
- 脳卒中などで片側に麻痺がある方:下りるときに、麻痺のない側の手でつかめる側
- 脚を骨折した方:下りるときに、骨折した脚と反対側の手でつかめる側
- 脚に痛みがある方:下りるときに、痛みのない脚の側の手でつかめる側
3. トイレ・玄関の手すり(縦手すり)
立ち上がるとき、座るとき、段差を上り下りするときは、手すりを「引き寄せる」「押して支える」ように使います。このとき力を入れやすいのは縦の手すりです。手首をまっすぐにしたまま握れるためです。
高さ(握る範囲)
縦手すりで握りやすいのは、肘を90度に曲げたときの手の高さから、肩の高さまでの範囲です。この範囲がしっかり握れるよう、縦に十分な長さのある手すりを選ぶと、立ち上がりの途中で握り替えやすくなります。
トイレ
- 前後の位置:便座に座って、腕を前にまっすぐ伸ばしたときの指先のあたりが目安です。一般的には、便器の先端から20〜30cm前になることが多いです。便座から立ち上がるときは、おじぎをするように体を前に傾けてから腰を浮かせるため、手すりが少し前にあると体を前に移しやすくなります。
- 横の手すり(L字型の手すりの横の部分):便座から22〜25cmほど上にあると肘掛けのように使え、座っている間の姿勢も安定しやすくなります。
左右どちらに付けるか(麻痺がある場合の考え方)、L字型・可動式などの種類の選び方、ズボンの上げ下ろしのときの使い方は、記事「トイレの手すりの付け方」で詳しくまとめています。
玄関
- 上がりかまち(玄関の段差)の端に近い壁に、縦手すりを付けるのが一般的です。
- 大切なのは、土間に立ったときと、上がった床に立ったときのどちらでも握れることです。握りやすい範囲(肘を90度に曲げた高さから肩の高さ)は、床に上がると段差の分だけ上にずれます。両方の範囲に届く、長めの縦手すりを選ぶと使いやすくなります。
- 靴の脱ぎ履きは、立ったままより座って行う方が安全です。玄関に腰かけ台を置き、その近くに手すりがあると安心です。
4. 付ける前に確かめておきたいこと
- 印を付けて試す:壁にマスキングテープで印を付け、ご本人にそこへ手を添えてもらい、実際に歩く・立ち上がる動作をしてみると、合っているかどうかがよくわかります。
- 太さ:一般的には直径32〜45mm程度です。細めのものはしっかり握りやすく、太めのものは軽く握って手を滑らせやすい特徴があります。トイレや浴室のように握って体を支える場所は細め(直径32〜35mm程度)、廊下や階段はやや太めが目安です。
- 壁の強さ:手すりには体重がかかります。石膏ボードの壁は、それだけでは体重を支えきれないため、柱などの下地に固定するか、補強の板を入れて取り付けます。手すりの工事に慣れた業者に相談しておくと安心です。
- 体の状態がまだ変わりそうな時期(退院直後など)は、工事の前に、置くだけの手すりをレンタルで試す方法もあります。使ってみて場所と高さが決まってから工事をすれば、「付けたけれど使いにくい」という失敗を防げます。
麻痺や強い痛みがある方、ふらつきが強い方は、平均的な目安がそのまま合わないことがあります。リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士)や福祉用具専門相談員に、実際の動作を見てもらって決めるのがおすすめです。
5. 介護保険を使って手すりを付けるには
- 要支援・要介護の認定を受けている方は、手すりの取り付けに介護保険の住宅改修が使えます。工事費20万円までが対象で、自己負担は1〜3割です。
- 工事の前に、市区町村への申請が必要です。申請より先に工事を始めると、介護保険が使えなくなることがあります。まずは担当のケアマネジャー(要支援の方や、まだ担当がいない方は地域包括支援センター)に相談するところから始めるのがおすすめです。
- 工事をしない、置くだけの手すりは、福祉用具のレンタル(月々の自己負担1〜3割)で借りられます。
出典・参考にした資料
- 公益財団法人テクノエイド協会「手すりを上手に使う」(福祉用具シリーズ Vol.14):横手すり・縦手すりの高さの測り方、トイレの縦手すりの位置、手すりの太さ PDF
- 国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」(平成13年国土交通省告示第1301号):階段の手すりの高さ(踏面の先端から700〜900mm) PDF
- 広島県「高齢者のための住宅改修ポイント【ポイント2】」:廊下の手すりの高さ(750〜850mm)、トイレの縦手すり・横手すりの位置、階段の手すりの端部 ページ
この記事は一般的な目安をまとめたものです。実際の高さや位置は、ご本人の体の状態や家の造りによって変わります。