第9期(2024〜2026年度)の介護保険料(第1号保険料の基準額)は、全国の加重平均が月6,225円で、いちばん高い大阪市(9,249円)といちばん低い小笠原村(3,374円)では、2.7倍の差があります。この差は、どこから生まれているのでしょうか。国が公表している保険者別のデータを並べて、保険料・給付費・認定率・重度の割合・介護予防の取り組みのあいだに、どんな関係があるかを見てみました。
ケアマネジャー、リハビリ職、地域包括支援センター、市町村の担当の方など、地域の介護を数字で見る方に向けて、データから言えそうなことと言えないことを分けて書き、最後に、サイト運営者としての考えを添えました。自分の地域の数字は、介護保険料の地域比較ツールで調べられます。
- データの結果国の公表データをもとに、このサイトで計算した関係です。関係があることを示すだけで、原因を示すものではありません
- 言えないこのデータでは確かめられないこと
- 運営者の考えデータから直接導いたものではなく、サイト運営者(理学療法士)としての考えです
厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」、同「介護保険事業状況報告(年報)令和6年度」を加工して作成。
1. この記事のまとめ
- データの結果保険料(基準額)の地域差は、第1号被保険者1人あたりの給付費の差と、強い関係が見られました(順位相関0.68)。
- データの結果給付費の差は、85歳以上の人の多さと、年齢のちがいを除いても残る、認定を受ける人の多さのちがいと関係していました。認定された人1人あたりの給付費は、要介護3以上の重度の人の割合との関係が強く出ています(0.70)。
- データの結果年齢調整認定率と重度の割合で、地域を4つの型に分けてみました。保険料がいちばん高いのは「認定が多く、重度の割合も高い」型、いちばん低いのは「認定が少なく、重度の割合も低い」型でした。
- データの結果重度の割合が高い地域は、軽い段階(要支援)の認定が少ない傾向がありました(相関−0.76)。基本チェックリストを多く使う地域は、年齢調整認定率が少し低めでした。
- データの結果保険料の差には、国の調整交付金も関わっていると考えられます。調整交付金の割合が高い保険者ほど、給付費の多さの割に保険料が低い傾向がありました。都市部の単価(地域区分)の影響は、小さく見えました。
- 言えない通いの場など介護予防の取り組みの多さと、認定率の変化(令和3年度→6年度)には、関係が見られませんでした。ただし、このことから「効果がない」とまでは言えません。
2. 保険料は何で決まるか
第1号保険料の基準額は、市町村(保険者)が3年ごとに、介護サービスの費用の見込みなどをもとに決めます。そこで、実際に介護保険から事業所に支払われたお金(給付費。利用者が払う1〜3割は含みません)を、その地域の65歳以上の人数で割り、1か月あたりにしました。これが1人あたり給付費で、「65歳以上の人1人に、介護保険から月にいくら使われているか」の平均です(サービスを使っていない人も含めて割っています)。全国の保険者の中央値は月約2万4千円でした。これを基準額と並べると、はっきりとした右上がりの関係が見えました。
図1 第1号被保険者3,000人以上の保険者(1,201)。基準額は第9期(2024年度から)、給付費は2024年度の実績。
データの結果基準額と1人あたり給付費の順位相関は0.68でした。さらに、所得の低い人(第1〜3段階)の割合、国の調整交付金の割合、積み立て金の取り崩しを合わせると、保険料の差の約6割(第1号被保険者3,000人以上では約7割)までを説明できる計算になりました。
調整交付金(普通調整交付金)は、国費のうち給付費の5%相当を、市町村間の保険料の差をならすために配るものです。75歳以上の人の割合が高い、所得の低い人が多いといった、市町村の努力では変えにくい条件の差を、全国の平均に近づけるように配られるとされています(厚生労働省の資料。古い資料なので、現在の算定は国の最新資料で確かめるのがおすすめです)。
地域区分(人件費の地域差による単価)も調べました。都市部は1単位あたりの単価が高い(大阪市は10.83円)一方で、1人あたりのサービスの量が少なめです。量をそろえて見ると、単価の影響はほとんど残っていないようでした。
3. 給付費の差は、どこから来るか
データの結果1人あたり給付費は、85歳以上の割合(順位相関0.66)と認定率(0.64)の両方と関係していました。
認定率は、年齢が高いほど上がります(全国で、65〜74歳は約4%、85歳以上は約6割)。そのため、85歳以上の人が多い地域は、それだけで認定率が高くなります。そこで、どの地域も全国と同じ年齢の割合だったとしたら認定率がいくつになるかを計算し直しました。これが年齢調整認定率です。それでも、保険者のあいだに差が残ります(上位1割は21.1%、下位1割は15.8%)。年齢のちがいだけでは説明しきれない差といえそうです。健康状態のちがいのほか、認定の申請のしかたや、地域で使えるサービスの種類など、いくつもの理由が考えられますが、このデータでは、そのどれによるものかまでは分けられませんでした。
認定された人1人あたりの給付費は、要介護3以上の人の割合との関係が強く出ています(0.70)。認定された人が少なくても、重度の人が多い地域では、認定者1人あたりの給付費が多くなる傾向がありました。
認定率の地域差は、どの年代で大きいか
| 年齢 | 下位1割 | 中央 | 上位1割 | 上位÷下位 |
|---|---|---|---|---|
| 65〜74歳 | 3.0% | 3.8% | 4.8% | 1.62倍 |
| 75〜84歳 | 12.5% | 15.5% | 19.2% | 1.53倍 |
| 85歳以上 | 50.9% | 57.2% | 63.5% | 1.25倍 |
表は、横にずらして見られます。
データの結果85歳以上は、どの地域でも半分以上が認定を受けていて、地域による差は小さめでした。差が大きく出たのは、65〜84歳の認定率です。
4. 地域の4つの型
年齢調整認定率(中央値18.4%)と、認定者のうち要介護3以上の割合(中央値34.9%)で、第1号被保険者3,000人以上の保険者(1,201)を4つに分けました。人数の少ない保険者は、数字が年ごとに大きくぶれるため、分類していません。
図2 点の色が型。破線は中央値。
| 型 | 保険者数 | 基準額 | 1人あたり給付費(月) | 要支援の割合 | 施設サービスの割合(給付費) |
|---|---|---|---|---|---|
| 認定が多い・軽め | 382 | 6,317円 | 24,549円 | 31.6% | 31.3% |
| 認定が多い・重め | 219 | 6,765円 | 26,837円 | 25.3% | 34.3% |
| 認定が少ない・軽め | 218 | 5,557円 | 21,209円 | 29.5% | 37.1% |
| 認定が少ない・重め | 382 | 5,887円 | 23,136円 | 22.2% | 42.0% |
表は、横にずらして見られます。「施設サービスの割合」は、給付費のうち、特養・老健・介護医療院などの施設サービスに支払われたお金の割合です(入居している人の数の割合ではありません)。
型ごとに多い都道府県(その県の保険者のうち、その型にあたる割合。保険者が8以上の県)
- 認定が多い・軽め:京都府85%・北海道75%・大阪府73%・東京都67%・奈良県64%
- 認定が多い・重め:沖縄県80%・福島県53%・和歌山県53%・秋田県47%・富山県44%
- 認定が少ない・軽め:愛知県60%・静岡県47%・福岡県43%・岐阜県40%・茨城県40%
- 認定が少ない・重め:山梨県95%・宮崎県83%・新潟県72%・福井県71%・鹿児島県71%
データの結果保険料がいちばん高いのは「認定が多い・重め」の型(沖縄・福島・和歌山・秋田など)で、いちばん低いのは「認定が少ない・軽め」の型(愛知・静岡・福岡・岐阜など)でした。「認定が多い・軽め」の型は京都・北海道・大阪・東京などに多く、要支援の割合が高い型です。「認定が少ない・重め」の型は、山梨・宮崎・新潟・福井・鹿児島などに多く、介護保険から支払われたお金の4割以上が、施設サービスに使われていました。
都道府県で見ると、たとえば次のように型がちがいます。
| 都道府県 | 保険者数 | 基準額 | 年齢調整認定率 | 重度の割合 | 1人あたり給付費 | 調整交付金の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 67 | 5,741円 | 21.7% | 26.5% | 22,274円 | 23.0% |
| 沖縄県 | 10 | 6,957円 | 19.3% | 43.7% | 24,793円 | 16.9% |
| 長野県 | 32 | 5,616円 | 16.4% | 35.4% | 23,574円 | 20.2% |
| 東京都 | 51 | 6,319円 | 20.6% | 33.4% | 25,477円 | 14.4% |
| 大阪府 | 41 | 7,490円 | 24.0% | 33.8% | 29,337円 | 21.2% |
表は、横にずらして見られます。
北海道は、認定を受ける人は多いものの重度の割合が低く、国の調整交付金の割合も高いことが、保険料を低めにしていると考えられます。沖縄県は、年齢調整認定率は全国の中央値(18.4%)より少し高い程度ですが、重度の割合が高く(43.7%)、調整交付金の割合が低めで、保険料は高めになっています。
型は、保険者の良し悪しを表すものではありません。人口の規模でも差があり、都市は「認定が多く、要支援が多く、施設が少ない(居住系が多い)」、町村は「認定は少なく、重度中心で、施設の割合が高い」という傾向がありました。
5. 重度の割合が高い地域は、軽い段階の認定が少ない
データの結果認定者のうち重度(要介護3以上)の割合は、要支援の割合と、強い逆の関係にありました(順位相関−0.76)。重度の人が多いというより、軽い段階で認定を受ける人が少ない地域ほど、重度の割合が高く見えている、と考えられます。
その理由までは、このデータではわかりません。考えられるのは、申請のしかた、認定の運用、介護予防・日常生活支援総合事業の使い方(認定を受けずに、基本チェックリストで事業対象者としてサービスを使う)などのちがいです。基本チェックリストは、生活の様子や体の状態を25の質問で確かめるもので、下の欄で内容を見られます。
基本チェックリストの25項目と、事業対象者の基準を見る
国の様式の25項目です。「該当」の答えになった項目を数えて、下の事業対象者の基準に当てはめます。
暮らしの動作(外出・買い物・お金・人づきあい)
- 1バスや電車で1人で外出していますか「いいえ」で該当
- 2日用品の買い物をしていますか「いいえ」で該当
- 3預貯金の出し入れをしていますか「いいえ」で該当
- 4友人の家を訪ねていますか「いいえ」で該当
- 5家族や友人の相談にのっていますか「いいえ」で該当
運動器(階段・立ち上がり・歩行・転倒)
- 6階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか「いいえ」で該当
- 7椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか「いいえ」で該当
- 815分位続けて歩いていますか「いいえ」で該当
- 9この1年間に転んだことがありますか「はい」で該当
- 10転倒に対する不安は大きいですか「はい」で該当
栄養(体重・BMI)
- 116ヶ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか「はい」で該当
- 12身長・体重(BMI)BMIが18.5未満で該当
口の機能
- 13半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか「はい」で該当
- 14お茶や汁物等でむせることがありますか「はい」で該当
- 15口の渇きが気になりますか「はい」で該当
外出の回数
- 16週に1回以上は外出していますか「いいえ」で該当
- 17昨年と比べて外出の回数が減っていますか「はい」で該当
物忘れ
- 18周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか「はい」で該当
- 19自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか「いいえ」で該当
- 20今日が何月何日かわからない時がありますか「はい」で該当
こころ(ここ2週間)
- 21(ここ2週間)毎日の生活に充実感がない「はい」で該当
- 22(ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった「はい」で該当
- 23(ここ2週間)以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる「はい」で該当
- 24(ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない「はい」で該当
- 25(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする「はい」で該当
事業対象者の基準(どれか1つに当てはまると、基準に該当)
- ①暮らしの動作全体1〜20の20項目のうち10項目以上
- ②運動器の機能6〜10の5項目のうち3項目以上
- ③低栄養状態11・12の2項目すべて
- ④口腔機能13〜15の3項目のうち2項目以上
- ⑤閉じこもり16に該当
- ⑥認知症18〜20の3項目のうち1項目以上
- ⑦うつ21〜25の5項目のうち2項目以上
厚生労働省「介護予防ケアマネジメント実施における関連様式例」様式1「基本チェックリスト様式例及び事業対象者に該当する基準」。入力して判定できる基本チェックリストの判定ツールもあります。事業対象者になるかどうかは、市区町村や地域包括支援センターで確かめます。
では、基本チェックリストは、地域でどれくらい使われているのでしょうか。総合事業の実施状況の報告(令和6年度、市町村別)にある、基本チェックリストを実施した人数を、第1号被保険者1,000人あたりに直して比べました(この数は、チェックリストを実施した人の数で、基準に該当した人の数ではありません)。保険者を実施の多さの順に5つに分け、それぞれの年齢調整認定率・要支援の割合・重度の割合を平均した表です。
| 実施の多さ(1,000人あたり) | 下限 | 保険者数 | 年齢調整認定率 | 要支援の割合 | 重度の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 少ない2割 | 0.0〜 | 239 | 20.8% | 30.6% | 32.1% |
| 中間1 | 0.5〜 | 240 | 20.5% | 28.4% | 33.5% |
| 中間2 | 1.4〜 | 240 | 19.2% | 29.3% | 33.1% |
| 中間3 | 3.0〜 | 240 | 18.8% | 27.8% | 34.5% |
| 多い2割 | 6.4〜 | 240 | 18.5% | 27.6% | 34.8% |
表は、横にずらして見られます。
この表は、「年齢調整認定率」と「要支援の割合」の列に注目すると読みやすいと思います。実施の多いグループほど数字が小さくなっていれば、何らかの関係がありそうだ、と読めます。
データの結果基本チェックリストを多く実施している地域ほど、年齢調整認定率が低めで(順位相関−0.31)、要支援の割合もやや低めでした(−0.19)。認定を受けずに介護予防につながる入口が、理由の一部になっているのかもしれません。ただし差は大きくなく、保険料や給付費とは関係が見られませんでした。
言えないこのことから「認定が少ない地域ほどよい地域」とは言えません。必要な人が認定を受けられていない可能性もあり、このデータでは、それを見分けることができないためです。
6. 介護予防の取り組みと、認定率の変化
通いの場の参加率が高い地域は、認定率が低い(または下がる)のでしょうか。令和1・3・4・5・6年度の年報から年齢調整認定率を出し、総合事業の実施状況の報告(令和3〜6年度)の通いの場の参加者実人数(第1号被保険者に対する割合)と比べました。
| 令和1年度 | 令和3年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | |
|---|---|---|---|---|
| 全国(1,198保険者) | 20.2% | 20.0% | 19.7% | 19.7% |
表は、横にずらして見られます。
データの結果年齢をそろえた認定率は、全国で見るとほぼ横ばいで、わずかに下がっていました。令和3年度から6年度の変化は、中央値で−0.20ポイントでした(下がった保険者753、上がった保険者445)。通いの場の参加率の中央値は、令和3年度4.3%、令和5年度5.5%、令和6年度5.7%と、少しずつ広がっています。
表の作り方と見方:通いの場の参加率と、認定率の変化
この表では、通いの場に参加している人の割合が高い地域ほど、3年間で認定率が下がっている(または上がりにくい)のかを確かめようとしました。作り方は次のとおりです。
- 保険者ごとに、通いの場の参加率を出します。通いの場の参加者の実人数(令和3・4・5年度末の報告)を、その年度の第1号被保険者数で割り、3年度の平均をとります。
- 参加率の低い保険者から高い保険者へ順に並べて、同じ数ずつ5つのグループに分けます(少ない2割、中間1〜3、多い2割)。「下限」は、そのグループの参加率の下の端です。
- 各グループで、令和3年度と令和6年度の年齢調整認定率(全国の年齢構成にそろえた認定率)を、第1号被保険者の人数で重みをつけて平均します。
- 「変化」は、令和6年度から令和3年度を引いた値です(単位は%ポイント)。マイナスは、3年間で認定率が下がったことを表します。
読むときは、次の点に気をつけていただくと、わかりやすいと思います。
- 注目したいのは、右端の「変化」の列です。通いの場の参加率が高いグループほどマイナスが大きくなっていれば(認定率がより下がっていれば)、関係がありそうだと読めます。
- 左の「令和3年度」「令和6年度」の値そのものをグループどうしで比べても、取り組みの効果は読みとりにくいです。もともとの認定率が、グループによってちがうためです。
- 実際には、どのグループも変化は−0.2ポイント前後で、参加率が高くなるほどマイナスが大きくなる、という並びにはなっていませんでした。本文で「関係が見られなかった」と書いたのは、このためです。
- この表は、令和3年度の認定率のちがいの影響を除く前の、そのままの平均です。影響を除いて計算した相関(−0.07〜−0.01)も、ほぼ0でした。
| 通いの場の参加率 | 下限 | 保険者数 | 令和3年度 | 令和6年度 | 変化(ポイント) |
|---|---|---|---|---|---|
| 少ない2割 | 0.0%〜 | 239 | 19.9% | 19.7% | −0.22 |
| 中間1 | 2.1%〜 | 240 | 19.7% | 19.5% | −0.22 |
| 中間2 | 4.0%〜 | 239 | 20.1% | 19.9% | −0.24 |
| 中間3 | 6.2%〜 | 240 | 19.7% | 19.5% | −0.21 |
| 多い2割 | 10.0%〜 | 240 | 20.6% | 20.3% | −0.30 |
表は、横にずらして見られます。
データの結果通いの場の参加率の多さ、基本チェックリストの該当者(事業対象者)の多さ、通いの場の増え方のどれと比べても、令和3年度から6年度の認定率の変化には、関係が見られませんでした(令和3年度の認定率の影響を除いた相関は−0.07〜−0.01)。なお、令和3年度に認定率が高かった地域ほど、その後に下がる傾向(平均への回帰)があり、それを除いた結果です。
言えないただし、この結果から「介護予防の取り組みに効果がない」とまでは言えません。次のような理由があるためです。
- 3年間は、効果が見えるには短いかもしれません。
- 取り組みの質(体操の内容、続けられているか)は、データに入っていません。
- 介護が必要な人の多い地域ほど取り組みに力を入れるという、逆向きの関係を分けて見られません。
- 参加した人が、参加しなかった場合と比べてどうなったかは、地域の数字では見えません。
7. まだ調べられていないこと、考えられること
言えないここまでの分析は、国が保険者ごとに公表している数字だけを使ったものです。地域の差を生む理由はほかにも多くありそうですが、次のようなことは、まだ調べられていません。
地域の人の体と病気のちがい
- 平均寿命や健康寿命には、都道府県によって差があります。国も、日常生活に制限のない期間(健康寿命)の都道府県の差を縮めることを、目標の一つにしてきました(健康日本21(第二次))。
- その差の理由としては、食生活(塩分や野菜の量など)、仕事(農林漁業などの体を使う仕事か、座って過ごす仕事か)、運動の習慣、喫煙・飲酒、気候や雪、地域のつながり、医療を受けるまでの距離など、いくつもの理由が重なっているのだろうと思います。地域ごとの気質や、健康についての考え方のちがいも、関わっているかもしれません。どれがどれくらい効いているのかは、このデータでは分けられません。
- 介護が必要になる病気の内訳も、地域によってちがうかもしれません。介護が必要になった主な原因は、認知症、脳血管疾患(脳卒中)、骨折・転倒などで、要支援の段階では、関節疾患や高齢による衰弱も上位に挙がっています(国民生活基礎調査)。たとえば、脳卒中の多い地域は重度の割合が高くなる、骨折・転倒や関節疾患の多い地域は要支援の割合が高くなる、といったことも考えられます。ただ、保険者ごとの疾患別の認定者の割合や有病率は公表されておらず、確かめられていません。
暮らしや、まわりの条件のちがい
- 一人暮らしや高齢の夫婦だけの世帯の割合、家族が介護できる力
- 病院・病床数、在宅医療や訪問看護の体制
- 住まいの条件(坂や階段、雪、冬の寒さ)と、公共交通の便
- 所得や、地域の仕事の種類
介護保険のしくみ側のちがい
- 認定の調査・判定のしかた、ケアマネジメントのしかた
- サービスの事業所の数や種類(使えるサービスの供給)
- 総合事業の設計(どんなサービスを、だれに、どれくらいの期間)
- 他の市区町村から入所する人の扱い(住所地特例)。施設の多い市区町村の数字は、この影響を受けます
あると、もっと見えてくるデータ
- 保険者ごとの、疾患別の認定者の割合と、各疾患の有病率
- 特定健診の結果(血圧・糖尿病など)や、生活習慣の調査
- 世帯の構成(国勢調査)、病床数・医療従事者の数
- 認定の審査会での判定の結果(一次判定からの変更など)
それぞれの数字は、国や都道府県が別々に公表していて、保険者ごとにそろっているものは多くありません。今回の分析は、介護保険の数字だけで、地域差についてどこまで言えるかを見たものです。地域の姿をより正確につかむには、こうした視点も重ねていく必要がありそうです。
8. 運営者の考え
運営者の考えこの章は、データの結果ではなく、サイト運営者(理学療法士)としての考えです。
保険料の高い・低いだけで、地域の良し悪しは決めにくい
保険料が高いのは、介護が必要な人や重い人が多く、必要なサービスがきちんと使われている結果でもあります。地域を見るときは、保険料だけでなく、年齢をそろえた認定率や重度の割合もあわせて見るのがよいのではないでしょうか。
軽い段階で相談につながると、重くなる前に手を打ちやすい
要支援の段階や、基本チェックリストの段階で、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談がつながると、困りごとが小さいうちに手を打ちやすくなります。たとえば、次のような手立てです。
- 家の段差や浴室で転びそうになっているなら、手すりや福祉用具、住宅改修で、転ぶ前に環境を整える
- 歩くことや買い物が大変になってきたなら、短い期間に、リハビリ職などの専門職が集中して関わるサービス(短期集中予防サービス)や、通所のサービスで、動ける体を保つ
- 出かける機会が減ってきたなら、通いの場や地域の役割につなげて、家の外に出る理由を作る
認定率や要支援の割合は、この「相談のつながりやすさ」も映している可能性があります。数字の高い・低いだけで判断するのではなく、自分の地域では、困りごとが小さいうちに、どこで・だれにつながっているのかを確かめていくことが大切だと思います。
地域を、複合的な視点で見たい
認定率や保険料の差は、介護保険の中の理由(認定のしかた、サービスの量)だけでなく、その地域の人の体と病気(健康寿命、疾患の割合、有病率)や、暮らしの条件(世帯、仕事、住まい、医療)とも重なっているはずです。たとえば、脳卒中や骨折・転倒、関節疾患は、リハビリや環境の工夫が関わりやすい領域で、自分の地域でこれらがどれくらい介護につながっているかがわかると、予防の手を考えやすくなります。1つの数字だけで地域を評価せず、いくつもの視点を重ねながら、その地域に合った手を考えていけたらと思います。
介護予防の効果は、地域の数字だけでは見えにくい
通いの場の数や参加率を地域どうしで並べるだけでは、効果を確かめることはできませんでした。効果を知るには、参加した一人ひとりの体の状態や暮らしの変化を、続けて見ていくことが必要だと感じています。
通いの場は、数や参加率より、続けられているかが大切
参加率の高さだけでなく、無理なく続けられているか、その人の体の状態や役割に合っているかを大切にしたいところです。リハビリ職が関わる意味も、そこにあるのではないかと思います。
9. 用語の説明
- 第1号被保険者
- 65歳以上で、その市区町村(保険者)の介護保険に入っている人です。
- 基準額
- 65歳以上の人が払う介護保険料のうち、所得の段階のまん中(国の標準では第5段階)の月額です。実際の保険料は、所得の段階ごとに、基準額に倍率をかけて決まります。
- 給付費・1人あたり給付費
- 給付費は、介護保険から事業所に支払われたお金です(利用者が払う1〜3割を除く)。1人あたり給付費は、第1号被保険者分の給付費(2024年度)を、65歳以上の人数で割って1か月あたりにした額で、サービスを使っていない人も含めた平均です。
- 認定率・年齢調整認定率
- 認定率は、65歳以上の人のうち、要支援・要介護の認定を受けている人の割合です。年齢調整認定率は、どの地域も全国と同じ年齢の割合(65〜74歳・75〜84歳・85歳以上)だったとして計算し直した認定率で、年齢のちがいを除いて地域を比べるために使います。このサイトで計算しました(国の「調整済み認定率」は性別もそろえるため、少しずれます)。
- 重度の割合・要支援の割合
- 認定を受けている65歳以上の人のうち、要介護3以上の人の割合と、要支援1・2の人の割合です。
- 施設サービス・居住系サービス
- 施設サービスは、特別養護老人ホーム(地域密着型を含む)・介護老人保健施設・介護医療院です。居住系サービスは、認知症グループホームと、有料老人ホームなどの特定施設入居者生活介護です。「施設サービスの割合」は、給付費のうち施設サービスに支払われたお金の割合で、入居している人の数の割合ではありません。
- 調整交付金
- 国が市町村に配る交付金の一つで、75歳以上の人の割合や、所得の低い人の割合が全国と比べて高い市町村ほど、多く配られます。保険料の差のうち、市町村の努力では変えにくい条件による差を、ならすためのものとされています。
- 地域区分・1単位の単価
- 介護サービスの値段は「単位」で決まっていて、1単位の円の額は、人件費の地域差に合わせて、地域ごとに10円〜11.40円の範囲で決まっています(地域区分)。このページでは、実際の費用額を単位数で割って、保険者ごとの平均単価を出しました。
- 総合事業・基本チェックリスト・事業対象者
- 介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村が行う介護予防の事業です。要支援の人のほか、25項目の基本チェックリスト(判定ツール)で生活機能の低下が見られた人(事業対象者)も、認定を受けずに、訪問型・通所型のサービスを使えます。
- 通いの場
- 住民が主体となって、体操や趣味活動などのために定期的に集まる場です。参加率は、参加者の実人数を、65歳以上の人数で割った値です。
- 順位相関
- 2つの数字の並び順が、どれくらいそろっているかを、−1から1で表した値です(スピアマンの順位相関)。1に近いほど「片方が高い保険者ほど、もう片方も高い」関係が強いことを表します。原因と結果を示すものではありません。
- 平均への回帰
- ある年にとくに高かった(低かった)数字は、次に測ったときに、平均に近づきやすいという、データ一般に見られる動きです。
10. データと計算方法・限界
このページの数字は、すべて国の公表データから計算しています。元の数字と計算した値は、次のCSVで確かめられます。
- 計算用CSV①:全1,573保険者の2024年度の元の数字と計算した値(基準額、第1号被保険者数、年齢別・要介護度別の認定者数、給付費の内訳、単位数・費用額、保険料収入・調整交付金・基金繰入金、所得段階別の人数、基本チェックリスト実施者、通いの場の参加者、1人あたり給付費、年齢調整認定率、型 など)
- 計算用CSV②:令和1・3・4・5・6年度の年齢別の第1号被保険者数・認定者数と年齢調整認定率、事業対象者数、通いの場の参加者数(1,198保険者)
| データ | 年度 | 使った表・項目 |
|---|---|---|
| 第1号保険料の基準額 | 第8期・第9期 | 厚生労働省「第9期…第1号保険料…について」各保険者保険料基準額一覧・各都道府県平均 |
| 介護保険事業状況報告(年報) | 令和6年度 | 第2表(第1号被保険者数)、第4-1-1表(認定者数:その2 第1号計、その3〜8 年齢別)、第8-2-2〜4表(第1号分の単位数・費用額・給付費)、第15表(特別会計 歳入:保険料・調整交付金・基金繰入金)、第17表(所得段階別第1号被保険者数) |
| 介護保険事業状況報告(年報) | 令和1・3・4・5年度 | 第2表、第4-1-1表(年齢調整認定率の推移) |
| 総合事業の実施状況の調査(市町村別) | 令和3〜6年度 | 令和3〜5年度:Ⅰ 事業対象者数、Ⅱ 通いの場の参加者実人数/令和6年度:Ⅰ 通いの場の参加者実人数、Ⅲ 基本チェックリストを実施した者。市町村の値を保険者ごとに合計 |
表は、横にずらして見られます。
計算のしかた
- 1人あたり給付費=給付費(第1号分・年間)÷第1号被保険者数(年度末)÷12
- 年齢調整認定率=(65〜74歳の認定率×0.421)+(75〜84歳の認定率×0.393)+(85歳以上の認定率×0.186)。0.421などは、2024年度末の全国の第1号被保険者の年齢の割合。過去の年度も同じ割合で計算
- 重度の割合=要介護3〜5の人数÷認定者数/要支援の割合=要支援1・2の人数÷認定者数
- 施設サービスの割合=(介護保険施設+地域密着型特養の給付費)÷給付費/居住系の割合=(認知症グループホーム+特定施設+地域密着型特定施設の給付費)÷給付費
- 1単位の平均単価=費用額÷単位数/低所得の割合=第1〜3段階の人数÷所得段階の合計/調整交付金の割合=調整交付金÷(保険料収入+調整交付金)
- 型=第1号被保険者3,000人以上の保険者の、年齢調整認定率の中央値(18.4%)と重度の割合の中央値(34.9%)で4つに分ける
- 関係の強さ=順位相関(スピアマン)。保険料の差の「約6割(約7割)を説明」は、基準額を、1人あたり給付費・低所得の割合・調整交付金の割合・基金繰入金(1人あたり)で説明する重回帰の決定係数(全1,572保険者で0.56、第1号被保険者3,000人以上で0.70)
- 認定率の変化と取り組み=令和3年度から6年度の年齢調整認定率の変化と、通いの場の参加率などとの順位相関。令和3年度の認定率の影響を除いた偏相関も計算
限界
- 対象:図・型・時系列は、第1号被保険者3,000人以上の保険者(1,201)。小さな保険者は、数字が年ごとに大きくぶれるため除きました。名前の表記のちがい(梼原町など)で、年報と突き合わせられなかった保険者が1つあります。
- 時点:基準額は2024年4月に決まった額(期の途中の改定は含みません)、給付費・認定率・重度の割合は2024年度の実績です。
- 関係と原因:どれも、地域を並べたときに見えた「関係」で、原因を示すものではありません。
- 定義のちがい:総合事業の「基本チェックリストを実施した者」(令和6年度)と「事業対象者数」(令和3〜5年度)は、報告の項目がちがうため、混ぜて比べていません。
- 広域連合:広域連合・組合は、構成市町村をまとめた1つの値です。福岡県介護保険広域連合は、構成市町村をA・B・Cの3グループに分けて基準額を決めていますが、この分析では広域連合全体の値を使っています。
よくある質問
介護保険料が高い市区町村は、介護サービスが充実している地域ですか
このデータからは、そうとは言い切れません。保険料(基準額)と強い関係が見られたのは、65歳以上1人あたりの給付費(順位相関0.68)です。給付費のうち施設・居住系・在宅のどれに多く使われているかと、保険料の高さのあいだには、ほとんど関係が見られませんでした(順位相関−0.10〜0.06)。給付費の多さは、認定を受けている人の多さや、重度の人の割合と関係していました。
年齢調整認定率とは何ですか
認定を受けている第1号被保険者の割合を、全国と同じ年齢構成(65〜74歳・75〜84歳・85歳以上)にそろえて計算した値です。高齢者の中でも年齢の高い人が多い地域は、認定率が高くなりやすいため、その影響を除いて地域を比べるために使います。このサイトで計算しました。国が公表している調整済み認定率(性別も調整)とは、少しずれます。
通いの場が多い地域は、認定率が低いのですか
2024年度の通いの場の参加率と年齢調整認定率には、関係が見られませんでした(順位相関−0.10)。令和3年度から6年度の認定率の変化と、通いの場の参加率の多さにも、関係は見られませんでした。ただし、通いの場に効果がないということではありません。効果が出るまでの期間、取り組みの質、介護が必要な人の多い地域ほど力を入れるという逆向きの関係を、このデータでは分けて見られないためです。
出典・参考にした資料
出典を見る(5件)
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」(2024年5月14日):各保険者保険料基準額一覧、各都道府県平均保険料基準額一覧。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40211.html
- 厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」令和1年度・3年度・4年度・5年度・6年度(政府統計の総合窓口 e-Stat):保険者別の第1号被保険者数(第2表)、要介護(要支援)認定者数(第4-1-1表、年齢別・要介護度別)、保険給付 第1号被保険者分の単位数・費用額・給付費(第8-2-2〜4表)、介護保険特別会計経理状況(第15表)、所得段階別第1号被保険者数(第17表)。2026年10月確認 e-Stat(令和6年度)
- 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況に関する調査」令和3年度〜令和6年度(市町村別):通いの場の参加者実人数、介護予防・生活支援サービス事業対象者数、基本チェックリストを実施した者の数。2026年10月確認 令和6年度・令和5年度
- 厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」令和1・3・4・5年度の保険者別の表(e-Stat、同じ統計の年度別の一覧)。2026年10月確認 e-Stat(年度の一覧)
- 厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」令和4年(2022年):介護が必要となった主な原因(認知症、脳血管疾患、骨折・転倒、関節疾患、高齢による衰弱など)。2026年10月確認(原典のPDFは文字を取り出せず、自治体の資料に載っている順位で確かめた。数字そのものはこのページでは使っていません) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
- 厚生労働省「健康日本21(第二次)最終評価」関連資料:健康寿命の都道府県格差の縮小を目標としていること。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000869485.pdf
- 厚生労働省 社会保障審議会(介護保険部会)の資料(2003〜2004年):普通調整交付金の考え方(後期高齢者加入割合と所得段階別被保険者割合による調整)。資料が古いため、現在の算定の詳細は国の最新の資料で確かめるのがおすすめです。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/07/s0728-5e5.html
- 福岡県介護保険広域連合 介護保険条例 第6条:A・B・Cの3グループ別の保険料率(このページの分析では、広域連合全体の値を使っています)。2026年10月確認 https://www1.g-reiki.net/fukuoka-kaigo/reiki_honbun/s900RG00000077.html
このページの表と図は、上の資料を加工して作成したもので、国が作成したものではありません。数字は、保険者ごとの案内(決定通知書など)で確かめるのがおすすめです。