やまねこのリハビリ・介護手帖理学療法士がひもとく、家族の安心と現場の実践ツール

杖と歩行器、
どちらが合う?

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)

ご本人の歩き方や体の状態、使う場所について、6つほどの質問に答えると、候補になる杖や歩行器と、高さの目安、介護保険での扱いを整理できます。帰省したときにご家族が代わりに入力したり、結果を印刷して相談の場に持っていったりする使い方を想定しています。

このナビは、相談の前に考えを整理するためのものです。杖や歩行器が合うかどうかは、病気やけがの状態、体の動き、家の環境など、たくさんのことで決まります。実際に選ぶときは、リハビリの専門職や福祉用具専門相談員に、歩く様子を見てもらって決めるのがおすすめです。担当のリハビリ職から指導を受けている場合は、その指導を何よりも優先します。急に歩きにくくなった、ふらつきや痛みが強くなったという場合は、用具を考える前に、まず医療機関を受診することが大切です。

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杖と歩行器、支えられる量が違います

杖と歩行器は、どちらも歩くことを助ける道具ですが、体重をどれだけ預けられるかと、どれだけ場所をとるかが違います。支えが大きいものほど安定しますが、そのぶん幅をとり、狭い家の中では取り回しにくくなります。この兼ね合いで選ぶことになります。

種類支えの大きさ向いている場面介護保険
T字杖(1本杖)小さい少しふらつく程度で、自分でバランスをとれる。外出にも持ち出しやすい対象外(自費)
多点杖(4点杖)やや大きい1本杖では支えが足りない。立ち止まったときに杖が倒れないほうがよいレンタル可
ロフストランド・クラッチやや大きい握力が弱い、手首に力が入りにくい。前腕でも支えたいレンタル可
固定型歩行器大きい持ち上げて進める。両手で支えたい。立ち上がり直後が不安定レンタル可
交互型歩行器大きい持ち上げる力が弱い。左右交互に動かして進むレンタル可
歩行車(四輪)大きいある程度の距離を歩く。押して進めるので持ち上げる力がいらないレンタル可
シルバーカーほとんどなし荷物を運ぶ、途中で座って休む。体重を預ける道具ではない対象外(自費)

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介護保険でレンタルできるものは、要支援1から使えて、自己負担は1〜3割です。T字杖とシルバーカーは対象外で、自費での購入になります。2024年4月からは、多点杖や歩行器の一部で、レンタルと購入を選べるようになりました。

選ぶときに見る5つのこと

1. どこで使うか

家の中と外とで、合うものが変わることがよくあります。家の中は廊下や入口の幅に限りがあり、歩行車が通れないことがあります。反対に、外では距離を歩くので、家の中で十分だった杖では足りないことがあります。両方で同じものを使うとは限らず、場所によって使い分けることもあります。

2. 両手が使えるか

歩行器と歩行車は、両手で支える道具です。片麻痺などで片方の手が使いにくい場合は、歩行器より杖のほうが合うことが多くなります。厚生労働省の判断基準でも、歩行器を使うには両手が使えることと、立った姿勢で操作できるバランスがあることを確かめるよう示されています。

3. 握力と手首の状態

握力が弱い、手首や手指に痛みや変形があるという場合、握って支える杖では力が伝わりません。前腕で支えるロフストランド・クラッチや、前腕を台に乗せるプラットホームクラッチ、手のひら全体で支えられる歩行器が候補になります。握力が弱い原因が何かによって選ぶものが変わるため、ここは専門職に見てもらう価値の大きいところです。

4. 止まるときに安定するか

歩いているときだけでなく、立ち止まるとき、振り向くとき、ドアを開けるときが不安定になりやすい場面です。四輪の歩行車は進むのは楽ですが、速さが上がると歩行車だけが先に進んでしまうことがあります。すくみ足がある方や、下り坂を通る方では、歩く速さに合わせてブレーキがかかる歩行車(抑速ブレーキ付き)が候補になります。

5. 本人が使い続けられるか

もっとも安定する道具が、その人にとって最適とは限りません。見た目が気になって使わなくなる、重くて持ち出さなくなる、ということが実際にはよくあります。使う場面を具体的に思い浮かべて、本人が納得したものを選ぶほうが、結果として安全につながります。

この5つは、相談の前に考えを整理するための視点です。実際に決めるときは、リハビリの専門職や福祉用具専門相談員に歩く様子を見てもらい、何種類か試したうえで選ぶのがおすすめです。

よくある質問

一般的なT字杖(1本杖)は、介護保険でレンタルできますか?

できません。一般的なT字杖は介護保険の対象ではないため、自費で購入します。介護保険の対象になるのは、多点杖、ロフストランド・クラッチ、カナディアン・クラッチ、プラットホームクラッチ、松葉杖です。要支援1から利用でき、自己負担は1〜3割です。

シルバーカーと歩行車は、何が違いますか?

シルバーカーは、主に荷物を運んだり、途中で座って休んだりするためのもので、体重を預けて歩く道具ではありません。歩行車は、体の前と左右を囲む枠があり、体重を支えながら歩けるように作られています。シルバーカーは介護保険の対象外で、歩行車は介護保険でレンタルできます(自己負担は1〜3割)。

杖の長さは、身長から計算できますか?

「身長÷2+2〜3cm」という計算の方法もあります。ただし、腰や背中が曲がっている方は、この計算では長すぎることがよくあります。ふだんの靴を履いて、ふだんの姿勢で立ち、腕を自然に下ろしたときの手首の骨の出っ張りの高さに合わせる方法がおすすめです。

握力が弱くても使える杖や歩行器はありますか?

握力が弱い理由によって、合うものが変わります。年齢や寝ていた期間が長かったことによる筋力の低下であれば、手のひら全体や前腕で支えられる歩行器・歩行車が候補になります。麻痺などが原因の場合はロフストランド・クラッチ(前腕でも支える杖)、手首や手指に変形や痛みがある場合はプラットホームクラッチ(前腕を台に乗せて支える杖)が使われることがあります。どれが合うかは、リハビリの専門職に相談するのがおすすめです。

すくみ足があっても、歩行器は使えますか?

使えることがあります。ブレーキのない四輪の歩行車は、歩く速さが上がったときに歩行車だけが先に進み、支えを失うことがあります。歩く速さに合わせてブレーキがかかる歩行車(抑速ブレーキ付き)や、固定型の歩行器が候補になりますが、症状の程度によって合うものが大きく変わります。実際に歩いてみて、専門職と一緒に確かめるのがおすすめです。

松葉杖は、高齢の方にも向いていますか?

松葉杖は、腕の力やバランスが必要で、使いこなすのがむずかしい杖です。高齢の方には、歩行器などほかの用具が選ばれることが多いです。骨折のあとなどで病院から松葉杖の指導を受けている場合は、その指導に合わせて使います。

くわしく知りたいとき

出典・参考にした資料

このナビは一般的な考え方をもとに、候補を整理するものです。実際に合う用具は、ご本人の体の状態や家の環境によって変わります。最終確認:2026年9月