令和8年度の診療報酬改定で、疾患別リハビリテーション料に「離床を伴わないリハビリテーション」ができました。入院中の患者に、ベッド上から移動せず、ポジショニングや拘縮の予防などの他動的な訓練だけを行った日は、所定点数の100分の90で、1日2単位までの算定になります。
病院で疾患別リハを担当するリハビリ職と管理者に向けて、その日の患者が「特定の患者」に当たるかを判断するための決まりと、疑義解釈で示された事例を、原文の場所をそえて分けて整理します。
- 決まり告示(点数表)・留意事項通知・記載要領に書いてあること
- 国の解釈厚生労働省の疑義解釈資料で答えが示されていること
- 確かめ先疑義解釈で答えが出ていないこと。地方厚生(支)局に確かめるのがおすすめです
令和8年度診療報酬改定の医科点数表(H000〜H003)と、留意事項通知。
1. まず結論
- 決まりその日に「ベッド上から移動していない」かつ「ポジショニング・拘縮の予防等を主たる目的とした他動的な訓練のみ」の入院患者が、特定の患者です。
- 決まり特定の患者に、離床を伴わずに20分以上の個別療法を行ったときは、所定点数の100分の90で、1日2単位までです。
- 決まり集中治療の病床の入院料や、早期・初期・急性期リハビリテーション加算を算定中の患者、移動が困難な15歳未満、医師が3単位以上を必要と特に認めた患者は、特定の患者に当たりません。
- 国の解釈車いすに移ったり、自動運動・座位の練習・言語療法などを行ったりした日は、ベッド上だけでも当たりません。当たらないときは、通常の個別療法として算定します。
2. 点数表の決まり(5つの疾患別リハ)
決まり5つの疾患別リハビリテーション料のそれぞれに、同じ趣旨の「注」が加わりました。文言は「特定の患者に離床を伴わずに20分以上個別療法であるリハビリテーションを行った場合は、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する。この場合、通則第4号にかかわらず、患者1人につき1日2単位まで算定する」です。
| 疾患別リハ | 点数表の注 | 対象の点数 |
|---|---|---|
| H000 心大血管疾患リハビリテーション料 | 注8 | (Ⅰ)(Ⅱ)のイ〜ニ(個別療法。集団療法のホは含まない) |
| H001 脳血管疾患等リハビリテーション料 | 注9 | (Ⅰ)〜(Ⅲ)と、標準的算定日数を超えた入院中の要介護被保険者等の点数(注7) |
| H001-2 廃用症候群リハビリテーション料 | 注9 | (Ⅰ)〜(Ⅲ)と注7の点数 |
| H002 運動器リハビリテーション料 | 注9 | (Ⅰ)〜(Ⅲ)と注7の点数 |
| H003 呼吸器リハビリテーション料 | 注8 | (Ⅰ)(Ⅱ) |
表は、横にずらして見られます。
ふだんの上限は、疾患別リハの通則で1日6単位(別に定める患者は9単位)です(疾患別リハの単位数の上限)。特定の患者に当たる日は、この上限にかかわらず2単位までになります。
医科点数表 第2章第7部 通則4、H000 注8、H001 注9、H001-2 注9、H002 注9、H003 注8
3. 「特定の患者」の2つの条件
決まり留意事項通知では、特定の患者を「個別療法を実施する日に、ベッド上から移動せずにポジショニング又は拘縮の予防等を主たる目的とした他動的な訓練のみを行う入院中の患者」のうち、次の章のア〜ウのどれにも当たらないもの、としています。
- ベッド上から移動していない:車いすへの移乗や、訓練室への移動をしていない
- 他動的な訓練のみ:ポジショニングや拘縮の予防等を主たる目的とした、他動的な訓練だけを行っている
2つの条件の両方に当てはまるときだけ、特定の患者になります。どちらか1つでも外れれば、当たりません。判断は「個別療法を実施する日」ごとです。入院中の患者が対象で、外来の患者は当たりません。
留意事項通知 別添1 H000(17)(18)。H001・H001-2・H002・H003は「H000と同様」
4. 当たらない患者(ア・イ・ウ)
決まり2つの条件に当てはまっても、次のどれかに当たる患者は、特定の患者ではありません。通常の点数と単位数で算定します。
| 当たらない患者 | |
|---|---|
| ア | 救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児の集中治療の管理料などを算定している患者。または、疾患別リハの早期リハビリテーション加算・初期加算・急性期リハビリテーション加算のいずれかを算定している患者 |
| イ | 疾患と状態により、ベッド上からの移動が困難な15歳未満の小児 |
| ウ | 疾患と状態により、ベッド上からの移動が困難な患者で、その個別療法を3単位以上行うことが医学的に必要と、医師が特に認めたもの。移動が困難な医学的理由、長時間のリハが必要な理由、訓練内容を、診療録とレセプトの摘要欄に書く |
アの3つの加算は、どれも14日を限度とする加算です(起算日は、加算と疾患別リハの種類ごとに点数表で決まっています)。これらの加算を算定している時期は、ベッド上の他動的な訓練だけの日でも、特定の患者に当たりません。
ウに当たるかどうかは、医師が判断します(「医師が特に認めたもの」)。
留意事項通知 別添1 H000(17)ア〜ウ
5. 迷いやすい場面:疑義解釈の事例
国の解釈疑義解釈資料(その2)では、次の事例が示されました。当たるのは、ベッド上で拘縮予防などの他動的な訓練「のみ」を行った場面だけです。
| 場面 | 特定の患者か | 理由 |
|---|---|---|
| 1単位の中に、ベッド上の他動的な訓練が一部含まれるが、それ以外の訓練も適切に行う | 当たらない | 他動的な訓練「のみ」ではない(問67) |
| 最初の1単位はベッド上で他動的な訓練、2単位目の途中から車いすに移乗し、計6単位 | 当たらない | 車いすに移乗しており「ベッド上のみ」ではない。内容も他動的な訓練のみではない(問69①) |
| 肺炎のため訓練室に移動せず、ベッド上で本人が膝の曲げ伸ばしなどの運動をし、排痰を促す訓練も行う | 当たらない | ベッド上のみだが、他動的な訓練以外を行っている(問69②) |
| ベッド上でギャッジアップし、高次脳機能障害や構音障害などの言語療法を行う | 当たらない | ベッド上のみだが、他動的な訓練以外を行っている(問69③) |
| 起立性低血圧の患者に、離床を目指して臥位から座位への移行と座位保持の訓練を進めたが、端座位に至らず終了 | 当たらない | ベッド上のみだが、他動的な訓練以外を行っている(問69④) |
| 車いすに移乗して訓練室へ移動し、訓練室のベッド上で他動的な関節可動域訓練のみ | 当たらない | 車いすに移乗しており「ベッド上のみ」ではない(問69⑤) |
| ベッド上で、主に拘縮予防や褥瘡予防を目的とした他動的な関節可動域訓練やポジショニングのみ | 当たる | 「ベッド上のみ」で「他動的な訓練のみ」。100分の90で、2単位までの算定の対象(問69⑥) |
表は、横にずらして見られます。
国の解釈特定の患者に当たらないときは、離床を伴わないリハビリテーションではなく、それぞれの個別療法の例により算定します。
④の事例では、端座位に至らなかった日も、座位を目指した訓練を行っていれば当たらない、と示されています。結果ではなく、その日に行った訓練の内容で判断する形です。
疑義解釈資料の送付について(その2)(令和8年4月1日)別添1 問67・問69
6. レセプトと診療録の書き方
100分の90で算定するとき
決まりレセプトの摘要欄に「離床減」と表示して、合計点数を書きます。
診療報酬請求書等の記載要領(リハビリテーションの摘要欄の記載)
ウ(医師が3単位以上を必要と認めた患者)のとき
決まりベッド上からの移動が困難な医学的理由、長時間のリハビリテーションが必要な理由、訓練内容の3つを、診療録とレセプトの摘要欄に書きます。
国の解釈毎日書く必要はありません。
- レセプト:毎月書く
- 診療録:状態が変わったときに随時書く。変わらないときも、少なくとも月1回は書く
留意事項通知 別添1 H000(17)ウ、疑義解釈資料の送付について(その12)(令和8年9月2日)別添1 問13
7. 答えが出ていない場面と、確かめ先
2026年10月24日の時点で、疑義解釈資料(その1〜その13)のうち、離床を伴わないリハビリテーションに答えている問は、上の問67・問69・その12の問13です。
たとえば、ベッド上で自動介助運動が中心だった日や、ベッド上で寝返りの練習を行った日は、事例そのものは示されていません。問69②〜④では「他動的な訓練以外を行っている」ことを理由に当たらないとされていますが、似た場面でも、自分たちの解釈で言い切らないのがおすすめです。
病院の所在地を受け持つ地方厚生(支)局の医療課(指導監査課)に確かめるのがおすすめです。問い合わせた日・相手・答えを記録しておくと、病院の中で運用をそろえるときや、あとで説明するときに役立ちます。
新しい疑義解釈が出たら、このページの表に書き足します。毎月はじめに、厚生労働省と地方厚生局の資料を確かめて直します。
よくある質問
1単位の中に、ベッド上の他動的な訓練が一部入るときも、特定の患者になりますか
それ以外の訓練が適切に行われる場合は、当たりません(令和8年度 疑義解釈その2 問67)。
訓練室に移動して、訓練室のベッドで他動的な関節可動域訓練だけを行ったときは
車いすに移乗しているので「ベッド上のみ」ではなく、当たりません(疑義解釈その2 問69⑤)。
座位を目指したが、端座位まで至らなかった日は
座位への移行と座位保持の訓練は、他動的な訓練以外にあたるため、当たりません(疑義解釈その2 問69④)。
医師が3単位以上を必要と認めた患者の記載は、毎日必要ですか
レセプトは毎月、診療録は状態が変わったときに随時、変わらないときも少なくとも月1回書きます(疑義解釈その12 問13)。
出典・参考にした資料
出典を見る(7件)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」:告示・通知・疑義解釈資料の一覧。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第一 医科診療報酬点数表:第2章第7部 通則4、H000 注8、H001 注9、H001-2 注9、H002 注9、H003 注8。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1(10月7日の訂正後):H000(17)(18)(特定の患者の定義、ア〜ウ、100分の90と2単位)。H001〜H003は「H000と同様」。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- 「「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第2号)別添1(10月7日の訂正後):リハビリテーションの摘要欄(「離床減」の表示)。2026年10月確認 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757375.pdf
- 「疑義解釈資料の送付について(その2)」(令和8年4月1日事務連絡)別添1:問67・問69(特定の患者に当たるかの事例)。2026年10月確認 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/000480755.pdf
- 「疑義解釈資料の送付について(その12)」(令和8年9月2日事務連絡)別添1:問13(ウの患者の診療録とレセプトの記載の頻度)。2026年10月確認 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/000501557.pdf
- 中国四国厚生局「令和8年度診療報酬改定関係」:疑義解釈資料(その2〜その13)と訂正の一覧。2026年10月確認 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/chugokushikoku/newpage_00855.html
個別の算定の判断は、告示・通知の原文と、地方厚生(支)局の案内で確かめることをおすすめします。