毎日のお世話、本当にお疲れさまです。「疲れた」「少しだけ介護から離れて、ゆっくり眠りたい」「誰かに手助けしてほしい」と思うこともあるのではないでしょうか。そんなときの選択肢の一つが、レスパイト入院です。あまり知られていない制度ですが、介護する家族を支えるために用意されています。
レスパイト入院は、自宅で介護を受けている方が短い期間だけ病院に入院して、介護するご家族が休息をとるための仕組みです。介護保険のショートステイとは別の、医療保険の入院として受け入れている病院があります。
この記事では、どんな人が使えるのか、期間や費用はどうなるのか、申し込みの流れ、入院中の過ごし方を順に見ていきます。なお、ルールは病院によって違います。数字はあくまで「多くの病院で見られる例」として読んでください。
- レスパイト入院は、介護するご家族が休むための短期入院。「休みたい」と相談してよい
- 介護保険ではなく医療保険の入院で、自己負担は1〜3割。食事代や個室代などは別にかかる
- 医療管理が必要で、ショートステイでは受け入れが難しい方が、対象になりやすい(条件は病院で違う)
- 1回は14日以内、通算60日を超えたら3か月あける、という運用の病院が多い(病院で違う)
- 入院中は、新しい治療や検査をしない病院が多い。リハビリは病院によって違う
- まずは、ケアマネジャーや主治医、訪問看護師に相談するのがおすすめ
1. レスパイト入院とは
家族が休むための入院です
「レスパイト」には、「休息」「息抜き」という意味があります。レスパイト入院は、病気を治すための入院ではなく、ご家族に休んでもらうことを主な目的にした、短い期間の入院です。
自宅での介護は、毎日のことだけに、心と体の疲れがたまります。数日から2週間ほど、病院のスタッフにお任せして、ぐっすり眠る、自分の用事や通院をすませる、冠婚葬祭に出る。そんな時間をつくるために使われています。ご家族が体調をくずして、一時的に介護が難しくなったときに使えるように案内している病院もあります。

介護保険ではなく、医療保険の入院です
介護を休むサービスというと、介護保険のショートステイを思い浮かべる方が多いかもしれません。レスパイト入院は、介護保険のサービスではなく、医療保険を使う入院です。
たんの吸引や胃ろうなど、医療的なケアがあると、ショートステイでは受け入れが難しい場合があるとされています。そうした方の受け皿として、レスパイト入院を案内している病院があります。
「休みたい」と相談してよいのです
「自分が疲れたからといって、親を入院させてもよいのだろうか」と、ためらう方は少なくありません。けれど、介護は長く続く暮らしの一部です。ご家族が休むことは、ご本人が自宅での生活を続けるためにも大切なことです。
レスパイト入院は、そのために用意されている仕組みです。ご家族が限界を迎える前に、「少し休みたい」と声に出して相談してみることがおすすめです。
2. どんな人が使えるか
病状が安定していて、医療管理や介護が必要な方
多くの病院では、次のような方が対象として案内されています。
- たんの吸引、胃ろうなどの経管栄養、点滴、在宅酸素、床ずれの処置など、医療的なケアが必要な方(この条件を中心にしている病院が多いです)
- 「常時、医療管理や介護が必要な方」のように、医療的なケアに限らず書いている病院もあります
- 介護保険のショートステイの利用が難しい方
- 症状が安定していて、急な治療を必要としない方
医療的なケアが必ず必要とは限らず、条件の書き方は病院によって違います。治療のための入院ではないので、病状が安定していることは、どの病院でも前提になります。
ご本人に医療的なケアがない場合も、受け入れられるかどうかは病院で違います。あきらめずに、まず相談してみるのがおすすめです。
退院先が自宅の方
「入院が終わったら、必ず自宅に帰る方」を条件にしている病院が多くあります。ご家族が休んだあとに、また自宅での生活に戻ることが前提です。これから施設への入所を考えている場合は、退院先の介護施設の種類もあわせてご覧ください。
認知症などがある場合は、まず相談を
受け入れの条件は、病院によって違います。精神疾患のある方や、認知症で対応が難しい行動のある方は、対象とならない場合があると案内する病院もあります。
ただ、受け入れられるかどうかは、病院の体制やそのときの状況で変わります。「うちの親は無理だろう」とあきらめずに、まず相談してみるのがおすすめです。受けられるかどうかは病院が判断しますが、相談すること自体は、どなたにもできます。
3. 入院できる期間と回数
1回は14日以内が多い
多くの病院で、1回の入院は原則14日以内と決められています。病院によっては、1泊2日から使えたり、「7日〜14日」と日数の幅があったりします。平日に入院して平日に退院する、という運用の病院もあります。
次に使えるまでのルール
一度退院したあと、次に使えるまでの決まりがある病院が多くあります。
- 利用は月に1回まで、または次の入院まで1か月あける
- 通算の利用日数が60日を超える場合は、次の利用まで3か月あける
いつでも何度でも続けて使えるわけではない、と知っておくと、予定が立てやすくなります。
入院日数は、病院の体制で決まります
ここで紹介した14日や60日は、多くの病院で見られる運用の例です。すべての病院が同じではありません。入院できる日数や回数は、病院のベッドの状況やスタッフの体制によって決まります。また、ご本人の状態によっては、予定より短くなることもあります。
実際にどのくらい使えるかは、申し込むときに病院へ確認するのがおすすめです。
4. 費用について
医療保険が使えます
費用には、ふつうの入院と同じように医療保険が使われます。自己負担は、年齢や所得に応じて、医療費の1〜3割です。介護保険のショートステイとは、費用の考え方が違います。
食事代や個室代などは、別にかかります
| かかるもの | 内容 |
|---|---|
| 医療費 | 医療保険の自己負担(1〜3割) |
| 食事代 | 一般の方は1食550円(2026年6月1日から)。住民税非課税世帯などは金額が別 |
| 個室代(差額室料) | 個室を使うときにかかる。1日4,400円〜12,500円という病院の例があり、金額は病院で大きく違う |
| おむつ代・病衣代など | 病院によって、実費になる |
食事代は、1日3食で1,650円にあたります。個室代は病院によって差が大きいので、申し込むときに確認しておくと安心です。
医療費が高くなったときの制度
医療費が高額になったときは、高額療養費制度があります。1か月に支払う医療費に上限があり、マイナ保険証を使うか、あらかじめ「限度額適用認定証」を用意して提示すると、窓口での支払いを上限額までに抑えられます。上限額は年齢や所得によって違い、2026年8月にも見直されています。くわしい金額は、加入している健康保険の窓口で確認するのがおすすめです。
ただし、入院中の食事代や差額室料は、高額療養費の対象に含まれません。別に支払いが必要です。
5. 申し込みの流れと準備
まずは身近な専門職に相談します
ご家族が直接病院に申し込むのではなく、担当のケアマネジャー、主治医、訪問看護ステーションなどを通して申し込むのが一般的です。どこに相談すればよいか迷うときは、地域包括支援センターと居宅介護支援の違いも参考になります。

申し込みの流れ(例)
- 相談するケアマネジャー、主治医、訪問看護師などに、レスパイト入院を使いたいことを伝えます。
- 書類を用意する主治医の診療情報提供書など、病院が求める書類を、専門職と一緒にそろえます。
- 病院が受け入れを判断する書類をもとに、病院が受け入れられるかどうかを判断します。
- 入院の日を決めるベッドの状況を見ながら、日にちを調整します。持ち物もこのときに確認します。
- 入院する予定の期間を過ごして、自宅へ戻ります。
必要な書類と、申し込みの時期
申し込みには、主治医が書く紹介の書類(診療情報提供書)や、日ごろの生活の様子がわかる書類が必要になります。これらは、主治医やケアマネジャーが一緒に用意してくれます。ご家族がすべてを自分で準備する必要はありません。
書類を出したあと、病院で受け入れができるかどうかが判断されます。申し込みの期限は、希望日の1週間前、2週間前、1か月前など、病院によって違います。希望どおりの日に入院できるとは限らないため、余裕をもって相談を始めるのがおすすめです。初めて使う病院では、提出する書類が多くなることもあります。
持ち物の例
- マイナ保険証(または資格確認書)。限度額適用認定証がある方は、それも
- 飲んでいる薬とお薬手帳(入院日数分)
- 胃ろうの栄養剤や、ストーマなどの医療材料(入院日数分)
- パジャマ、おむつなど(病院で用意がある場合もあります)
持ち物は病院によって違うので、申し込みのときに確認します。ご家族は、荷物の準備と、ご本人が安心できる声かけを大切にしていただければと思います。
6. 入院中はどう過ごすか
病状が安定している方が、安心して過ごす場所です
レスパイト入院は、治療や検査を目的とした入院ではありません。そのため、多くの病院では、入院中に新しい治療や検査、ほかの診療科の受診は行わないとされています。日ごろの薬や、体温・血圧の確認などは続けられます。
「何かをしてもらうための入院」というより、「病状が落ち着いているご本人が、いまの状態のまま安心して過ごす場所」と考えていただくと、イメージしやすいと思います。

リハビリは、病院によって違います
「入院のあいだに、リハビリもしてもらえたら」と思う方もいるかもしれません。リハビリの扱いは、病院で大きく違います。
- 治療やリハビリを目的とする入院ではないため、原則として行わない病院
- 原則は行わないが、必要性が高いときは、主治医と相談して決める病院
- 入院中にリハビリを行うと案内している病院や、リハビリを中心にした別の入院メニューを用意している病院
リハビリを希望する場合は、申し込むときに、ケアマネジャーを通して病院に確認するのがおすすめです。ふだんのリハビリについては、訪問リハビリと通所リハビリの違いと選び方もご覧ください。
体調が変わったときは
入院中に熱が出る、病状が急に変わるなど、治療が必要になることがあります。そのときは、治療を行う病棟へ移る(転棟)、専門の医師がいる別の病院へ移る(転院)、といった対応がとられるとされています。状態によっては、予定よりも早く入院が終わる場合もあります。
こうした場合の連絡先や流れは、入院前の説明で確認しておくと安心です。
7. 注意点と使うときの工夫、ショートステイとの違い
ショートステイとの違い
ショートステイは、介護保険を使って、介護施設などに短期間泊まるサービスです。レスパイト入院は、医療保険を使う、病院への入院です。
| レスパイト入院 | ショートステイ | |
|---|---|---|
| 使う保険 | 医療保険 | 介護保険 |
| 泊まる場所 | 病院 | 特養や老健などの介護施設 |
| 向いている方 | 医療的なケアがあり、ショートステイが難しい方 | 介護が中心の方。老健など、ある程度の医療的なケアに対応できる施設もある |
どちらが合うかは、ご本人の医療的なケアの状況や、ご家族の事情によって変わります。迷うときは、担当のケアマネジャーに相談してみるのがおすすめです。
泊まりでなくても、日中の数時間だけでも休めると楽になる、という方もいます。デイサービスやデイケアも、ご家族が休む時間をつくる方法の一つです。どちらが合うかは、デイケアとデイサービス、どちらが合う?で確かめられます。
知っておきたい注意点
- 希望の日に入院できるとは限りません。ベッドの状況や受け入れの判断によって、日程の調整が必要になります。
- 新しい治療や検査は、原則として行わない病院が多いです。リハビリの扱いも病院によって違います。
- いつもと違う環境で、落ち着かなくなったり、夜眠りにくくなったりする方もいます。入院のときに病院から日ごろの様子を聞かれるので、気になることがあれば伝えておくと安心です。
- 入院中は、家にいるときより体を動かす機会が減りやすいです。帰ってきてから動きにくさを感じたときは、ケアマネジャーやリハビリ職に相談するのがおすすめです。
疲れ切る前に、早めに相談する
レスパイト入院は、希望の日にいつでも入院できるとは限りません。ベッドの状況や、受け入れの判断に時間がかかることがあります。ご家族が「もう限界」となる前に、「来月、数日だけでも休めないか」と、早めに相談しておくのがおすすめです。
入院は、専門職に相談できる機会にもなります
レスパイト入院では、ケアマネジャー、看護師、リハビリ職、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、いろいろな専門職と関わる機会があります。そのため、医療面の困りごと、体の動かし方、介護サービスの専門的な話を、それぞれの専門職に聞きやすいのがよいところです。入院をきっかけに聞いておくと、退院してからの生活の組み立てがしやすくなるかもしれません。関われる職種は病院によって違うので、聞きたいことをメモしておくと安心です。
使ったあとの様子を、専門職に伝える
退院して落ち着いたら、「使ってみてどうだったか」「気になったことはあったか」を、ケアマネジャーや主治医に伝えておくと、次に使うときの調整がしやすくなります。ご本人の様子が入院の前後で変わったと感じたときも、あわせて伝えておくと安心です。
8. よくある質問
レスパイト入院とショートステイは、何が違いますか
レスパイト入院は医療保険を使う「病院への入院」、ショートステイは介護保険を使う「介護施設への短期入所」です。
医療的なケアがあり、ショートステイでは受け入れが難しい方が、レスパイト入院の対象になりやすいとされています。どちらが合うかは、ケアマネジャーに相談するのがおすすめです。
費用は、どのくらいかかりますか
医療保険の入院なので、医療費の自己負担は、年齢や所得に応じて1〜3割です。これとは別に、食事代(一般の方は1食550円)、個室を使う場合の個室代、病院によってはおむつ代などがかかります。
医療費には高額療養費制度の上限があり、マイナ保険証を使うか限度額適用認定証を提示すると、窓口での支払いを上限額までに抑えられます。くわしい金額は、入院する病院や加入している健康保険の窓口で確認するのがおすすめです。
入院中に、リハビリは受けられますか
病院によって違います。原則としてリハビリは行わない病院もあれば、必要性が高いときに主治医と相談して決める病院、リハビリを行うと案内している病院もあります。
希望があるときは、申し込みのときに、ケアマネジャーを通して病院に確認するのがおすすめです。
入院中に状態が悪くなったら、どうなりますか
治療が必要になったときは、治療を行う病棟へ移ったり、専門の医師がいる病院へ転院したりする場合があるとされています。
病院によって流れが違うので、入院前の説明で、連絡先や対応を確認しておくと安心です。
希望の日に、必ず入院できますか
必ずできるとは限りません。病院のベッドの状況や受け入れの判断によって、日程の調整が必要になることがあります。曜日や申し込みの期限を決めている病院もあります。
希望の日が決まったら、できるだけ早めにケアマネジャーや主治医に相談するのがおすすめです。
認知症があっても、相談してよいですか
はい、まずは相談してみることがおすすめです。認知症の方を受け入れられるかどうかは、病院の体制やご本人の状態によって違います。対象とならない場合があると案内する病院もありますが、判断は病院が行います。
ご家族だけで「無理だろう」と決めずに、ケアマネジャーや主治医に声をかけてみてください。
出典・参考にした資料
- 国立長寿医療研究センター「レスパイト入院のご案内」:対象(常時医療管理や介護が必要な方、ショートステイの利用が困難な方など)、原則14日以内、治療(リハビリ等を含む)を目的とする入院ではないこと、差額室料(1日4,400円〜12,500円)、申し込みの流れ、入院中は基本的に治療や検査ができないこと、状態によっては転棟・転院となること。2026年9月確認 リンク
- セコメディック病院「介護に疲れたときは─レスパイト入院」:対象の書き方(在宅で医療機器を利用している方、または常時、医療管理・介護が必要な方)。2026年9月確認 リンク
- JCHO 星ヶ丘医療センター「レスパイト入院」:対象、7日〜14日以内、通算60日を超える場合は3か月あけること、申し込みの時期、持ち物、入院中は原則として検査や治療行為ができないこと。2026年9月確認 リンク
- 公立岩瀬病院「レスパイト入院のご案内」:退院先が自宅であること、原則14日以内で平日に入院・退院すること、通算60日、申し込みと必要書類、入院中は基本的に治療や検査ができないこと。2026年9月確認 リンク
- 栗原市立栗原中央病院「地域包括ケア病棟 レスパイト入院について」:対象、1回14日まで、申し込みと判定会議、限度額認定証の持参、状態によって予定より短くなる場合があること。2026年9月確認 リンク
- 吉田病院「レスパイト入院」:対象、原則14日以内、次の利用まで1か月、利用日数が60日を超える場合は3か月あけること、病衣と紙おむつは実費、状態が急に変わったときの対応。2026年9月確認 リンク
- 市立敦賀病院「レスパイト入院について」:原則14日以内・月1回、通算60日、リハビリは原則受けられないが必要性が高い場合は主治医等と検討すること、対象とならない場合があること。2026年9月確認 リンク
- JA愛知厚生連 稲沢厚生病院「レスパイト入院のご案内」:1泊2日〜最大14日間・月1回、医療保険対応、個室料金・食事代は自己負担、リハビリパッケージ入院(7日〜最大14日間)を別に案内していること。2026年9月確認 リンク
- 厚生労働省「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」の改正(令和8年6月1日適用)、および健康保険組合の案内:2026年6月1日から、入院時の食事代(標準負担額)は一般の方で1食550円になること PDF 健保組合の案内
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」:マイナ保険証を使うか、限度額適用認定証を入手すると、窓口での支払いが上限額までになること、2026年8月から月額の上限額が見直されたこと リンク
- 厚生労働省のリーフレット「高額療養費制度を利用される皆さまへ」:入院時の食事代や差額ベッド代は、高額療養費の対象に含まれないこと PDF
この記事は一般的な内容です。受け入れの条件や期間、費用は病院によって違い、変わることもあります。最新の情報は、利用を考えている病院や、お住まいの市区町村、加入している健康保険の窓口でご確認ください。