やまねこのリハビリ・介護手帖理学療法士がひもとく、家族の安心と現場の実践ツール

杖の長さの合わせ方と選び方持つ手・歩き方・階段・種類

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年9月14日/最終確認日:2026年10月8日

杖は手軽に使える福祉用具ですが、長さが合っていなかったり、持つ手や使い方が違っていたりすると、かえって転びやすくなることがあります。

この記事では、ご家族でもできる杖の長さの測り方、どちらの手で持つか、平地・段差・階段での使い方、杖の種類の選び方をまとめました。

この記事のポイント
  • ふらつきや脚の痛みが気になり始めたら、念のためでも杖を。とくに外出のときは持って歩くと安心
  • 杖の長さは、ふだんの靴を履いて立ち、腕を下ろしたときの手首の高さが目安
  • 杖は、痛みや麻痺のある脚と反対側の手で持つ(利き手とは限らない)
  • 階段は「上りは良い脚から、下りは悪い脚から」。杖はいつも先に出す
  • 一般的な1本の杖(T字杖)は自費で購入。多点杖などは、介護保険でレンタルか購入を選べる

1. 杖の長さの合わせ方

測り方

  1. ふだん外で履いている靴を履いて、まっすぐ立ちます。腰や背中が曲がっている方は、無理に伸ばさず、ふだん歩くときの姿勢で大丈夫です。
  2. 腕の力を抜いて、自然に下ろします。
  3. 杖を体の横にまっすぐ立て、握りが手首の骨の出っ張りの高さにくる長さが目安です。

この長さで杖をついて歩くと、肘が軽く曲がった(約150度)状態になり、杖に体重をかけやすくなります。脚の付け根の外側にある骨の出っ張り(大転子)の高さも、ほぼ同じ長さになります。

身長から計算する方法(身長÷2+2〜3cm)もありますが、腰や背中が曲がっている方は、この計算では長すぎることがよくあります。今の姿勢で実際に測るのがおすすめです。

長さが合っていないときのサイン

杖の長さが合っていないときのサイン 杖を持って立つ女性を3人並べた図。左は杖が長すぎて、杖を持つ側の肩が上がり、肘が曲がりすぎている。真ん中は長さがちょうどよく、肘が軽く曲がり、両肩の高さがそろっている。右は杖が短すぎて、前かがみになり、杖の側に体が傾いている。 長すぎる 肩が上がる 肘が曲がりすぎる ちょうどよい 肘が軽く曲がる 両肩の高さがそろう 短すぎる 前かがみになる 杖の側に体が傾く
杖の長さが合っていないときのサイン。杖をついて立ったときの肩や体の傾きで確かめられます

家の手すりの高さも、同じ「腕を下ろしたときの手首の高さ」が目安です。手すりの高さの決め方は、記事「手すりの高さの決め方」でまとめています。

2. どちらの手で持つか

杖は、痛みや麻痺のある脚と反対側の手で持つのが基本です。たとえば左脚が痛い方は、右手で杖を持ちます。

杖を使う目的は、痛い脚にかかる体重の一部を杖に受け持ってもらうことです。反対側の手で持つと、痛い脚を出すときに杖が同時に体を支えられます。利き手の方が持ちやすいからと、痛い脚と同じ側の手で持っている方も多いのですが、それでは痛い脚の負担を減らせません。

脳卒中などで片側に麻痺がある方は、麻痺のない側の手で持ちます。

3. 歩き方(平地・段差)

平地

  1. 杖を一歩前につきます。
  2. 杖に体重をかけながら、痛みや麻痺のある脚(悪い脚)を出します。
  3. 良い脚を出して、そろえます。

慣れて安定してきたら、杖と悪い脚を同時に出す歩き方に進むこともあります。どちらの歩き方がよいかは、リハビリの専門職と相談して決めるのがおすすめです。

段差や敷居をまたぐとき

  1. 段差のできるだけ近くに立ち、両足をそろえます。
  2. 杖を段差の向こう側につきます。
  3. 杖に体重をかけながら、悪い脚からまたぎます。
  4. 良い脚をそろえます。

4. 階段での使い方

体重を支えるのは、いつも良い脚です。そのため、上りと下りで脚を出す順番が変わります。

杖を使って階段を上る順番 奥の脚(ひざにサポーターを巻いた脚)が痛い脚。杖は痛い脚と反対の手で持ち、①杖を上の段につき、②良い脚を上の段に上げ、③痛い脚を上げてそろえる順番を、番号と矢印で示した図。 1 2 3 痛い脚 上り:良い脚から ① 杖を上の段につく ② 良い脚を上げる ③ 痛い脚をそろえる
杖を使って階段を上る順番。杖は痛い脚と反対の手で持ちます(図では、奥の脚が痛い脚)
杖を使って階段を下りる順番 ひざにサポーターを巻いた脚が痛い脚。①杖を下の段につき、②痛い脚を下の段に下ろし、③上の段に残した良い脚を下ろしてそろえる順番を、番号と矢印で示した図。 痛い脚 1 2 3 下り:痛い脚から ① 杖を下の段につく ② 痛い脚を下ろす ③ 良い脚をそろえる
杖を使って階段を下りる順番。良い脚を上の段に残して体を支えたまま、痛い脚から下ろします
上り(良い脚から)杖を上の段につく → 良い脚を上げる → 悪い脚をそろえる
下り(悪い脚から)杖を下の段につく → 悪い脚を下ろす → 良い脚をそろえる

上るときは、先に良い脚を上の段にのせて、その脚の力で体を持ち上げます。下りるときは、良い脚を上の段に残して体を支えたまま、悪い脚からゆっくり下ろします。

階段に手すりがある場合は、手すりを使う方が安定します。手すりと杖の使い分けは、階段の形や体の状態によって変わるため、専門職と一緒に確かめておくと安心です。

5. 杖の種類と、向いている方

杖の種類 左から、T字杖、先が4本に分かれた多点杖、前腕のカフが付いたロフストランド・クラッチ、脇当てのある松葉杖、2本1組のウォーキングポールを並べた図。 T字杖 多点杖 ロフストランド クラッチ 松葉杖 ウォーキング ポール
杖の種類。体の状態や使う場所に合わせて選びます

杖では支えが足りない場合は、両手で使う歩行器を検討します(記事「歩行器の種類と選び方」)。

T字杖(1本杖)

いちばん広く使われている杖です。握りと柄の角度で手首の力が伝わりやすく、長さを調節できるものや、折りたためるものもあります。折りたたみ式は、伸ばしたり縮めたりするのに両手が必要です。

向いている方:体を支える力がある程度あり、補助として杖を使いたい方

多点杖(四点杖など)

杖の先が3〜4本に分かれていて、床に着く面が広く、1本杖より安定します。体重をかけても倒れにくく、手を離しても自立します。

ただし、床の状態や場所によっては向かないことが多い杖です。すべての脚が同時に地面に着いていないと安定しないため、屋外のでこぼこした道や坂道、砂利道、段差のある場所などでは、かえってぐらつくことがあります。家の中でも、床の段差や、畳・じゅうたんなどの床では使いにくい場合があります。使う場所の床の状態も含めて、専門職と相談して選ぶのがおすすめです。

向いている方:立った姿勢のバランスが不安定な方、脳卒中後の片麻痺の方、変形性股関節症や関節リウマチの方など

ロフストランド・クラッチ

握りの上に前腕を通すカフが付いていて、握りと前腕の2か所で支えます。握る力が弱くても体重をかけやすい杖です。

向いている方:握力が弱い方、脚の骨折などで脚に十分体重をかけられない方

松葉杖

主に2本1組で使い、最も大きな体重を支えられる杖です。脇当ては脇の下に当てず、脇の下から少し(卵1個分ほど)空けて使います。

向いている方:骨折などで、片脚に体重をかけられない方

ウォーキングポール(2本で使う杖)

登山用のトレッキングポールに似た、左右の手に1本ずつ持って歩く杖です。2本で体を支えるので左右のバランスがとりやすく、背筋を伸ばした姿勢で歩きやすくなります。散歩や外出、歩く運動に使われています。

転倒を防ぐ目的で使うなら、体の前に突いて使う転倒予防向けのものがおすすめです。杖と同じように平らな先のゴムが付いたものや、使っている途中で縮まないボタン式で長さを調節するものがあります。登山やスポーツ向けのものは、先の形や突き方(体の後ろに突く)が違います。

向いている方:外を歩くときのふらつきが気になる方、姿勢よく散歩や運動を続けたい方(介護保険の対象ではなく、自費で購入します)

理学療法士の視点から 杖が役に立つ状態なのに、「見た目が気になる」「まだ大丈夫」と、持たずに無理をして歩いている方は少なくありません。杖はまさに「転ばぬ先の杖」です。ふらつきや脚の痛みが気になり始めたら、念のためでも使ってみるのがおすすめです。
とくに外は、段差や坂道、人混み、歩き疲れなど、家の中よりも転びやすい条件がそろっています。家の中では伝い歩きで過ごせる方も、外出のときは杖を持って歩くと安心です。折りたためる杖なら、使わない場面ではかばんにしまっておけます。
関連ツール 杖と歩行器、どちらが合う?選び方ナビ 杖と歩行器のどちらが合いそうか、体の状態や使う場所から候補を整理できます。身長を入れると、杖の長さの計算の目安も出ます。

6. 使う前の点検

7. 介護保険でレンタル・購入できる杖

まずは担当のケアマネジャー(要支援の方や、まだ担当がいない方は地域包括支援センター)に相談するところから始めるのがおすすめです。それぞれの役割は、記事「地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い」でまとめています。

関連ツール 住宅改修と福祉用具の費用 家の中で困っている場面から、手すりや福祉用具の自己負担の目安がわかります。

8. よくある質問

杖は、いつから使い始めればよいですか?

「転んでからでは遅い」と言われますが、まだ必要ないと感じているうちに勧められると、かえって使わなくなることがあります。歩くときに壁や家具に手をつくようになった、外出のときだけ不安を感じる、といった変化が出てきたら、考えてよい時期です。
ご本人が「まだ早い」と感じている場合は、家の中ではなく外出のときだけ、というように場面を限って始めるほうが受け入れやすくなります。合うかどうかは、リハビリの専門職に歩く様子を見てもらうと確かめられます。

杖の長さは、靴を履いて測りますか?

ふだん外で履いている靴を履いた状態で測るのがおすすめです。靴底の厚みは1〜3cmほど違うことがあり、裸足で合わせた長さだと、外では短く感じます。家の中でも使う場合は、室内履きの分も考えて、少し短めに感じないかを確かめておくと安心です。
長さを変えられる杖なら、家の中と外で1段階変える方もいます。

ゴムの先(杖先ゴム)は、いつ交換しますか?

すり減って溝が浅くなったら交換の目安です。溝がなくなると、濡れた床やタイルで滑りやすくなります。毎日使っていると半年から1年ほどで減ってくることが多いので、季節の変わり目などに見る習慣をつけておくと安心です。
ホームセンターや介護用品店で、杖の太さに合うものを購入できます。ぐらつきが出てきたときは、ゴムだけでなく、杖本体のつなぎ目のゆるみも確かめます。

握力が弱く、杖を握っていられません。

握って支える杖ではなく、前腕で支えられるロフストランド・クラッチや、前腕を台に乗せるプラットホームクラッチが候補になります。手のひら全体で支えられる歩行器に切り替える方法もあります。
ただし、握力が弱い理由によって合うものが変わります。年齢や安静にしていた期間による筋力の低下か、麻痺によるものか、手首や手指の変形や痛みによるものかで、選ぶ用具が違います。ここはリハビリの専門職に見てもらう価値が大きいところです。

杖を使うと、かえって歩くのが下手になりませんか?

合っていない杖を使うと、体が杖のほうへ傾いたり、脚に体重をかけなくなったりすることはあります。一方で、合った杖を使うと、不安が減って歩く距離が伸び、結果として脚を使う機会が増えることのほうが多いと感じます。
心配なときは、杖を使い始めたあとで、家の中では手すりを使って杖なしで歩く、外では杖を使う、というように場面で分ける方法もあります。どこまで使うかを、リハビリの専門職と決めておくと迷いません。

介護保険で借りられる杖と、借りられない杖の違いは何ですか?

一般的なT字杖(1本杖)は介護保険の対象外で、自費での購入になります。対象になるのは、多点杖、ロフストランド・クラッチ、カナディアン・クラッチ、プラットホームクラッチ、松葉杖です。これらは要支援1から利用でき、自己負担は1〜3割です。
2024年4月からは、一部の杖でレンタルと購入を選べるようになりました。長く使う見込みがあるか、体の状態が変わりそうかによって、どちらがよいかが変わるため、福祉用具専門相談員に相談するのがおすすめです。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な考え方をまとめたものです。実際の杖の種類や長さ、使い方は、ご本人の体の状態によって変わります。