背骨の圧迫骨折と診断されてから、ベッドから起きるたびに痛そうにしている。寝返りをするだけで声が出る。手伝ってあげたいけれど、どこを持てば痛くないのか分からない。そんなときに読んでいただきたい記事です。
圧迫骨折で痛みがある時期は、体をねじらずに起きるのがこつです。寝返りの記事で紹介した、体のねじれを使って起きる方法とは、動き方が違います。
この記事では、痛みの少ない起き上がり方と横になり方、手伝い方、起き上がりを楽にする環境を、なぜそうするのかとあわせてまとめました。痛みがあるあいだに避けたい姿勢と、すぐに受診したほうがよい症状にも触れています。
- 起き上がりや寝返りで痛むのは、背骨をねじる・丸める動きが折れたところに負担をかけるため
- 基本は、肩と骨盤を一緒に回して横向きになり、脚を下ろしながら起きる方法
- 起き上がるときは、体を横に曲げない。脚の付け根も深く曲げない
- 寝返りの記事で紹介している、膝を倒して腰から先に回る方法とは違う。痛みがある時期はこちらに切り替える
- 横向きからでも痛むときは、うつぶせを通って起きる方法もある。ただし合う方を選ぶので、リハビリ職と相談を
- 動き方は、主治医とリハビリ職の指示が最優先
1. なぜ起き上がりで痛むのか
背骨の骨の前側がつぶれている
背骨は、首から腰まで、小さな骨が積み木のように重なってできています。胸のあたりの骨を胸椎(きょうつい)、腰のあたりの骨を腰椎(ようつい)と呼びます。圧迫骨折は、その一つひとつの骨の前側がつぶれるように折れる骨折です。
骨がもろくなる骨粗しょう症が背景にあることが多く、尻もちやくしゃみといった軽い力で起こることがあるとされています。起こりやすいのは、胸椎と腰椎の境目です。背中側で、あばら骨のいちばん下あたりの高さにあたります。
ねじる・丸めると、折れたところに負担がかかる
ふだん私たちがベッドから起きるときは、体をねじったり、背中を丸めたりすることがよくあります。圧迫骨折があると、この2つが痛みの原因になります。
- ねじる:背骨をねじると、折れたところに負担がかかって痛みが出るとされています
- 丸める:骨の前側がつぶれているので、背中を丸めるとその前側に体の重さがかかり、つぶれが進みやすくなるとされています
つまり、痛みを減らすにはねじらず、丸めずに起きる方法が必要です。
起きるときは痛いのに、立つと楽
圧迫骨折では、寝返りや起き上がりでは痛いのに、立ってしまうと楽になる、という痛み方がよくみられます。動き始めがいちばんつらいので、起き上がり方を変えるだけで、一日の過ごしやすさが変わってきます。
2. ねじらない起き上がり方
寝返りの記事の方法とは違います
このサイトの寝返りと起き上がりの介助では、膝を立てて倒し、腰から先に回って、上半身があとからついてくる方法を紹介しています。体のねじれを使うので、ふだんは楽に起きられる方法です。
ただ、圧迫骨折で痛みがある時期は、このねじれが痛みの原因になります。痛みがある時期は、ここで紹介する「ねじらない」方法に切り替えます。痛みが落ち着いてきたら、どちらの方法にするかは、主治医やリハビリ職と相談して決めます。
3つのこつ
- 肩と骨盤を同時に回す。丸太が転がるように、上半身と下半身を一緒に動かして、途中でねじれを作らない
- 起き上がるときに、体を横に曲げない。横向きのまま、体をまっすぐに保って起こす
- 脚の付け根(股関節)を深く曲げない。膝を胸に引き寄せるような動きをしない
基本の手順:横向きを通って起きる
- 向く側と反対の膝を立てる:たとえば右を向くなら、左の膝を立てて、足の裏をベッドにつけます。起き上がったときに腰かける側(ベッドの端に近い側)へ向きます。

あおむけで、向く側と反対の膝を立てます - 肩と骨盤を一緒に回して、横向きになる:立てた足で軽くベッドを押しながら、肩と骨盤が同時に回るように横向きになります。膝だけが先に倒れて、腰から先に回らないようにします。

肩と骨盤が一緒に回って、横向きになります - 横向きのまま、両脚をベッドの外へ下ろす:体をまっすぐに保ったまま、両脚を膝から下だけベッドの端から下ろします。

体をまっすぐに保ったまま、膝から下を下ろします - 脚を下ろすのに合わせて、腕で上半身を起こす:下になった側の肘と、上の手でベッドを押しながら、上半身を起こします。体を横に曲げないように、脚が下りていく重さを使って、体全体をまっすぐのまま起こします。

体を横に曲げず、腕で支えて起こします - ベッドの端に腰かける:足の裏がかかとまで床につくようにします。

かかとまで床につく高さにそろえます
腰の手術のあとの起き上がりの練習でも、この順番で行われています。
横向きからでも痛むときは:うつぶせを通って起きる方法
横向きから起きても痛みが強い場合に、うつぶせを通って起きる方法で痛みが少なくなる方もいるとされています。
- 肩と骨盤を一緒に回して、丸太のようにうつぶせになる
- うつぶせのまま、ベッドの端から両脚を片方ずつ床へ下ろす
- 両手でベッドを押して、上半身を起こし、そのまま立つ
この方法は、合う方を選びます。うつぶせになると胸やおなかが苦しくなる方、息がしにくくなる方、体の硬さでうつぶせになること自体が難しい方もいます。また、最後はベッドの端に座るのではなく、ベッドに手をついて立つ形になります。試すかどうかは、担当のリハビリ職に実際の動きを見てもらってからにするのがおすすめです。
3. 横になるとき・寝返りをするとき
横になるときは、手順を逆にたどる
ベッドに横になるときも、起き上がりと同じ考え方です。起き上がりの手順を逆にたどります。
- ベッドの端に腰かける:横になったときに頭がくる側に、少し寄って座ります。
- 腕で支えながら、横向きに体を倒す:肘と手でベッドを支えにして、体をまっすぐに保ったまま、上半身を横向きに倒していきます。
- 脚をベッドに上げる:上半身が倒れていくのに合わせて、両脚をベッドに上げます。脚の付け根を深く曲げないようにします。
- 肩と骨盤を一緒に回して、あおむけになる:丸太が転がるように、横向きからあおむけへ戻ります。
寝返りも、肩と骨盤を一緒に
夜中の寝返りも、同じ考え方です。肩と骨盤を一緒に回して、ねじらずに向きを変えます。膝を先に倒して腰から回る寝返りは、痛みがある時期は避けます。
寝返りのたびに痛くて眠れない、という場合は、寝る姿勢や枕・クッションの使い方で楽になることがあります。どんな姿勢がよいかは骨折の場所や状態で変わるので、主治医やリハビリ職に相談するのがおすすめです。
4. 手伝うときのこつ
肩と骨盤を同時に支える
手伝うときは、腕を引っぱって起こさないようにします。腕を引くと、背中が丸まったりねじれたりしやすくなります。
横向きになるのを手伝うときは、片手を肩に、もう片手を骨盤のあたりに当てて、同時に支えます。どちらか一方だけを押すと、そこから先に回ってねじれが生まれます。ご本人には、立てた足でベッドを押してもらい、その動きに合わせて一緒に回ります。

脚を下ろすのに合わせて、上半身を起こす
横向きから起き上がるところでは、ご本人が脚を下ろしていくのに合わせて、肩を支えて上半身が起きるのを手伝います。脚が下りる重さと、上半身が起きる動きが同時に進むと、少ない力で起きられます。このときも、体が横に曲がらないように、まっすぐのまま起こします。
声をかけて、ご本人の動きに合わせる
「いっせーの、で一緒に向きましょう」と声をかけて、ご本人が動き出すタイミングに合わせます。手伝う人が先に動かすのではなく、ご本人が自分で動こうとするところに手を添える形です。
痛みで途中で止まったときは、急かさずに待ちます。止まった姿勢のまま落ち着くのを待ってから続けます。ゆっくり動くほうが、結果として痛みは少なくすみます。
痛がる姿を見ていると、「治るまで、寝ていてもらったほうがいいのでは」と心配になることもあるかもしれません。動いて悪くなったらと不安になるのは、当然のことだと思います。
ただ、寝ている時間が長くなるほど、足腰や背中の力は落ちていきます。痛みが落ち着いたころには、今度は起きることや歩くことが大変になっている、ということが起こりえます。背中の力が落ちると、姿勢を支えにくくなり、背中が丸くなりやすくなる面もあります。
ですから、主治医の許可が出たら、痛みの少ない起き上がり方を一緒に覚えて、起きている時間を少しずつ増やしていくのがおすすめです。起き方が分かると、「起きるのが怖い」という気持ちが和らいで、ご本人から動こうとされることが増えます。起きていられる時間ができたら、座ってできる家事、お茶を入れるなど、その方が続けてきたことを、背中を丸めない形で生活に戻していきます。どこまでしてよいかは、担当のリハビリ職と一緒に決めていけます。
5. 起き上がりを楽にする環境
布団よりベッド
床に敷いた布団から起きるには、脚の付け根を深く曲げて、背中を丸める動きがどうしても入ります。痛みがある時期は、ベッドのほうが、ねじらない起き方をしやすくなります。布団からベッドへの切り替えについては、布団のままか、ベッドにするかもあわせてご覧ください。
ベッドの高さ
ねじらない起き方では、横向きのまま脚をベッドの外へ下ろし、その重さを使って起きます。ベッドの高さによって、脚を下ろしたときの足の着き方や、起き上がりやすさが変わります。座ったときに足の裏がかかとまで床につく高さが基本です。そこから、立ち上がりが少し大変なときは、ベッドを少し高くして、立ちやすい高さにそろえるのがおすすめです。高くしすぎると足が床につかず、座っている姿勢が不安定になるので、上げるのは少しにとどめます。
手をつける場所
起き上がるときに押せる場所がしっかりしていると楽になります。ベッドの柵や介助バー(ベッド用の手すり)があると、そこを押して体を起こせます。付ける側は、起き上がって降りる側に合わせるのが基本です(介護ベッドの置き場所と介助バーを付ける側)。
介護保険では、介護ベッドと介助バー、置くだけの手すりなどがレンタルの対象になります。自己負担は1〜3割で、使える種目は要介護度によって変わります。担当のケアマネジャーに、困っている場面を具体的に伝えるところから始めると話が進みやすくなります。
6. 痛みがあるあいだ、避けたい姿勢
背中を丸める場面を洗い出す
起き上がり以外にも、暮らしの中には背中を丸める場面がたくさんあります。床に落ちた物を拾う、低いソファに深く座る、足の爪を切る、靴下をはく。痛みがあるあいだは、こうした場面をご本人と一緒に洗い出して、やり方を変えておくのがおすすめです。
- よく使う物は、腰から胸の高さに置く
- 低いソファより、背もたれのあるいすに座る
- 床の物は、腰をかがめずに拾える道具を使うか、声をかけてもらう
向きを変えるときは、足から
後ろから呼ばれて上半身だけで振り返る、手の届きにくい物を体をひねって取る、といった動きも、ねじりになります。向きを変えるときは、足から体ごと向きを変える。これだけで、ねじる動きはかなり減らせます。
固定の期間は、主治医の指示で
圧迫骨折の治療は、手術をせずにコルセットなどで固定する方法(保存療法)が選ばれることが多いとされています。一般的な流れとしては、約4週間の体幹ギプスのあと約8週間の硬いコルセット、と紹介されていますが、実際の方法や期間は、骨折の状態や病院の方針によって違います。いつまで、どんな場面で着けるかは、主治医の指示に従うのが基本です。
心配だからと、指示よりも長く、コルセットを着けっぱなしにしている方もいます。コルセットは背中を支えてくれる一方で、長く着け続けると、体幹の筋力が落ちやすくなるとされています。背中の筋力が落ちると、背中が丸くなるきっかけにもなります。ほかにも、締めつけが強いと肌が赤くなったり、かぶれたりすること、着けていないと不安になることもあります。外してよい時期は、骨折の状態を見て主治医が決めます。自分の判断で長く着けることも、早く外すことも避けて、指示どおりにするのがおすすめです。
また、痛みが軽くなったことと、骨がしっかりついたことは、同じとは限りません。痛みが落ち着いてきても、前かがみやねじる動きをいつから戻してよいかは、主治医やリハビリ職に確かめてからにするのがおすすめです。
7. すぐに受診したほうがよい症状
圧迫骨折は背骨の前側の骨折なので、背骨の中を通る太い神経(脊髄)に影響が出ることはまれとされています。まれであっても、いつもと明らかに違う様子があれば、受診を優先します。
8. よくある質問
寝返りのたびに痛がって、夜眠れないようです
寝返りも、肩と骨盤を一緒に回して、ねじらずに向きを変えると痛みが出にくくなります。膝を先に倒して腰から回る寝返りは、痛みがある時期は避けます。
それでも痛みで眠れない状態が続くなら、寝る姿勢やクッションの使い方、痛みへの対処について、主治医やリハビリ職に相談するのがおすすめです。
横向きから起きても痛がります
体が横に曲がっていないか、脚の付け根を深く曲げていないかを、まず見てみます。脚を下ろす動きと上半身を起こす動きを同時に進めると、痛みが少なくなることがあります。
それでも痛みが強いときは、うつぶせを通って起きる方法が合う方もいますが、うつぶせになれる方を選びます。担当のリハビリ職に実際の動きを見てもらい、その方に合う起き方を一緒に探すのがおすすめです。
痛いときは、ずっと寝ていたほうがよいですか
痛みが強い時期は無理をしないことが基本ですが、寝ている時間が長くなるほど、足腰や背中の力は落ちていきます。
主治医の許可があれば、コルセットを着けたうえで、痛みの少ない起き上がり方を使って、起きている時間を少しずつつくるのがおすすめです。どこまで動いてよいかは、主治医とリハビリ職に確かめます。
コルセットは、寝るときも着けますか
骨折の状態や病院の方針によって違うので、主治医の指示に従うのが基本です。着ける時間や場面は、病院ごとに説明が異なります。
苦しくて着けていられないときは、自分の判断で外す前に、主治医や装具の担当者に相談するのがおすすめです。締め具合や形の調整で楽になることがあります。
出典・参考にした資料
- 富士武史(監修)、河村廣幸・小柳磨毅・淵岡聡(共著)『ここがポイント!整形外科疾患の理学療法 改訂第2版』金原出版、p.88:腰部手術後のベッドからの起き上がり(介助あり)。患者に寝返る反対側の膝を立ててもらい、介助者は肩甲帯と骨盤を持つこと。膝を立てたほうの下肢をけらせて寝返り、その際肩甲帯と骨盤が一緒に回るように介助すること。側臥位となったら両下肢をベッドより降ろし、体幹を側屈させないように下肢を降ろしながら上半身を起こすこと。ベッドに寝る場合はまったく逆の動作となること
- 同書 p.89:腰部手術後のベッドからの起き上がり(介助なし)。寝返る反対側の膝を立て、膝を立てたほうの下肢をけり、肩甲帯と骨盤が一緒に回るように寝返ること。側臥位となり、両下肢をベッドより降ろし、体幹を側屈させないように下肢を降ろして起き上がること。端座位からベッドに寝る場合は逆動作で行えばよいこと
- 赤羽根良和『腰椎の機能障害と運動療法ガイドブック』運動と医学の出版社、p.84:ベッドからの起き上がりは、まず腹臥位になり、両下肢をベッドから下ろし、上肢を用いて上半身を起こす方法で、疼痛を伴うことなくスムーズに行える症例が多いこと。脊柱を回旋させると骨折部に負荷がかかり痛みが発生するため、肩甲帯と骨盤を同時に回旋し、丸太様にしてねじれを作らないようにベッドから出入りすると痛みが出にくく、股関節の屈曲を少なくすると痛みが出にくいこと
- 同書 p.81:腰が痛くなり、寝返りをすると痛いといった症状がある場合には圧迫骨折の可能性があり、起居動作に痛みがあり立位になると楽になること。新鮮圧迫骨折後に外固定をしないと著しい圧潰変形が進行し、脊椎後弯変形を呈することもあること
- 同書 p.82:背中の筋力が弱くなると重心が前方化し、圧潰変形も著しく進行し、後弯変形を助長するきっかけとなるため、体幹の筋力を低下させないようにすることが大切であること
- 工藤慎太郎(編著)『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』医学書院、p.84:脊椎圧迫骨折は椎体の前方支柱部分が骨折する外傷性疾患であり、骨粗鬆症を合併していることが多いため高齢の女性に多く、尻もちやくしゃみなどの軽微な外的ストレスで起こることがあること。好発部位は胸腰椎移行部(第11胸椎〜第2腰椎)であること
- 同書 p.89:高齢者の脊椎圧迫骨折は骨粗鬆症を基盤に軽微な外傷で発症することが多いこと
- 同書 p.90:脊椎圧迫骨折は椎体前方支柱部分の骨折なので脊髄障害を生じることは稀であること
- 同書 p.92:脊椎圧迫骨折後の治療は、骨癒合と脊柱後弯変形予防を目的に保存療法が選択されることが多く、一般的に約4週間の体幹ギプス固定の後、約8週間の硬性コルセット装着を要すること。外固定期間中は脊柱運動を極力生じない肢位や方法を選択し、椎体の前方が圧潰した症例が脊柱後弯位をとると椎体の前方に重力による圧縮が加わり圧潰のリスクが高くなるので注意すること
- 医療法人社団 玲瓏会 金町中央病院「コルセットの長所と短所」:コルセットを着けっぱなしにすると、腹筋と背筋で支えられている体幹の筋力が低下すること、症状が改善したら段階的に外す時間を設けることが推奨されていること リンク
- 厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準について」(介護保険最新情報Vol.1296、2024年8月2日):手すり・特殊寝台・特殊寝台付属品の目的と、要支援・要介護1の方が原則対象外となる種目と例外 PDF
この記事は一般的な考え方をまとめたものです。動いてよい範囲や固定の方法は骨折の状態によって違うため、主治医と担当のリハビリの専門職の指示を優先するのがおすすめです。