この記事は、親御さんが骨粗しょう症と言われた、または骨折したことがあるご家族に向けて書きました。「背中が丸くなってきた」「腰が曲がってきた」「身長が縮んだ気がする」「軽く転んだだけで骨折した」といった変化が気になっている方にも、役立つ内容です。
- 骨粗しょう症は、自覚症状がないまま進むことが多く、「沈黙の疾患」と呼ばれます。骨折して初めて気づく方も少なくありません
- 背中が丸くなった・腰が曲がってきた・身長が縮んだは、「年のせい」と思われがちです。受診を考える目安になります
- 治療や薬のことは、主治医や薬剤師に。動き方や家の環境は、リハビリ専門職やケアマネジャーに相談するのがおすすめです
- 大腿骨(足のつけ根)の骨折は、8割以上が転倒によるとされています。救急車で運ばれる事故の半数は自宅で起きています
- いすや便座に座るときは、一気に力を抜かず、ゆっくり腰を下ろす座り方もおすすめです
- 体を動かすことは、散歩や家事、趣味など、本人の好きなことや役割の中で続けるのがおすすめです
1. 骨粗しょう症とは
骨がもろくなり、骨折しやすくなる状態
骨粗しょう症とは、骨の量(骨密度)が減ったり、骨の質が落ちたりして、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気とされています。いま骨折していなくても、腰や背中に痛みがなくても、骨が弱っていれば、骨粗しょう症と診断されることがあります。
なりやすい要因として、加齢のほか、喫煙、多量の飲酒、やせていること(低体重)、女性の閉経、ステロイドの服薬歴、家族に骨粗しょう症の方がいること、過去の骨折、カルシウム不足、運動不足があげられています。
「沈黙の疾患」と呼ばれる理由
自覚症状がないまま、年を重ねるとともに進むことが多く、骨折して初めて気づく方が多いため、「沈黙の疾患」と呼ばれています。骨が弱くなっていることは、外見からはわかりにくいとされています。
「痛がっていないから大丈夫」とは言い切れません。また、女性に多い病気ですが、75歳以上の後期高齢者になると、男性でも骨密度が下がり、骨折のリスクが高まるとされています。
痛みがなくても、背骨がつぶれていることがある(背中が丸い・腰が曲がる)
骨がもろくなると、自分の体重に背骨が耐えきれなくなり、気づかないうちに背骨がつぶれて骨折していることがあります。このとき、特別な痛みを感じないこともあるとされています。
そのため、「背中や腰が痛い」だけでなく、「背中が丸くなってきた」「腰が曲がってきた」「身長が目立って低くなってきた」という変化も、見逃せません。老化と思いがちですが、骨の状態を調べるきっかけになることがあります。
2. 骨折しやすい場所と、骨折で暮らしが変わる理由
日常の動作でも、骨折しやすくなる
骨が弱っていると、荷物を持ち上げる、手をつくといった日常の動作でも、骨折しやすくなるとされています。重くなると、転んだだけで骨折することがあります。
骨折しやすい場所は、背骨(椎体)、足のつけ根(大腿骨近位部)、手首(橈骨遠位端)です。
赤い点線の輪が、骨折しやすい場所です
転倒による骨折が、暮らしに与える影響
寝たきりの原因になりやすい大腿骨の骨折は、8割以上が転倒によるものとされています。骨が弱い方が転ぶと、骨折が重くなる恐れがあります。
骨折して動きにくくなると、外に出なくなり、活動が減ることがあります。すると筋肉や筋力が落ち、バランスをとる力も弱くなって、さらに転びやすくなる悪循環に入ることがあるとされています。すでに骨折したことのある方は、再び骨折する危険が高くなるともされています。
活動を保つ工夫が、予防につながる
だからこそ、骨折の予防は「転ばないようにする」だけでなく、日々の活動を落とさないことも大切です。出かける機会が減ったり、横になる時間が増えたりしたときの見方は、記事「親が出かけなくなった・横になる時間が増えたら」にまとめています。
3. 気づくきっかけと、相談する先
「年のせい」と思いがちな変化を、受診の目安に
「背中が丸くなってきた」「腰が曲がってきた」「身長が縮んだ気がする」「立ち上がるときに背中や腰が痛む」といった変化は、受診を考える目安になります。軽く転んだだけ、手をついただけで、背中・足のつけ根・手首を痛がるときも、早めに医療機関に相談するのがおすすめです。

やせている方(BMIが低い方)は、骨折のリスクが高いとされています。60代以降は、定期的に骨量を測るのがよいとされ、腰や背中にすでに痛みがある方は、受診がすすめられています。
まずは、かかりつけ医か、骨粗しょう症を診る医療機関へ
気になる変化があれば、まず日ごろ診てもらっているかかりつけ医に相談するのがおすすめです。かかりつけ医がいないときや、くわしく調べたいときは、骨粗しょう症の診療をしている医療機関を探します。骨粗鬆症財団のサイトには、病医院のリストがあります。
医療機関では、痛みがなく数分で測れる骨量の測定のほか、背骨のレントゲン、血液や尿の検査などが行われるとされています。骨粗しょう症かどうかの診断と、薬による治療を始めるかどうかは、医師が決めます。検査や治療にかかる費用は、医療保険の自己負担の割合によって変わります。
自治体の骨粗しょう症検診
国の決まり(健康増進法)では、骨粗しょう症検診は40〜70歳の女性に、5歳刻みで行われています。自治体によっては、男性や、ほかの年齢に広げているところもあり、健康保険組合などが行う検診もあります。
決まりとしての対象と、お住まいの地域で実際に受けられる検診は、違うことがあります。対象や申し込み方は、市区町村の窓口で確かめるのがおすすめです。
4. 家族ができること
受診は、本人の気持ちに寄りそって
受診をすすめるとき、家族が無理に連れていく形になると、ご本人が嫌がることがあります。「検診の案内が来ているから、一緒に聞いてみない?」「痛くない、短い検査があるみたいだよ」など、ご本人の気持ちに寄りそった声かけがおすすめです。
ご本人から「年のせいだから」と言われても、気になることを伝えること自体は、してよいことです。受診するかどうかは、ご本人と主治医が決めます。
治療や薬のことは、主治医と薬剤師へ
骨粗しょう症と診断されたときの治療は、薬が中心になるとされています。薬は、年齢、骨折した場所、通院できる回数などの暮らし方をみて選ばれ、治療方針は主治医とよく相談して決めます。詳しくは、主治医と薬剤師に聞くのがおすすめです。
通院が負担、飲む時間が合わない、といった困りごとがあるときは、家族だけで抱えずに、医師や薬剤師に伝えてみるのがおすすめです。暮らし方に合わせて、相談に乗ってもらえます。
見守りは、家族の負担にならない範囲で
通院や服薬の見守りで、「また飲み忘れている」と注意が重なると、お互いにストレスになることがあります。家族が1人で背負わず、薬剤師や、介護保険のサービスを使っている方はケアマネジャーにも相談して、分担する形がおすすめです。
5. 家の中で転ばない工夫と、座り方
転びやすい場所を見直す
救急車で運ばれる事故の半数は、自宅で起きているとされています。転びやすい要因として、電気コードにつまずく、濡れた所で滑る、畳とマットの段差、1〜2センチの室内の段差、つまずきやすい敷物、滑りやすい床、暗い照明があげられています。
夜にトイレへ行くときの暗さや、寒さでバランスを崩すことも、要因です。場所ごとの見直しは、記事「家の中の転倒を防ぐ工夫」にまとめています。
衣服と履物も見直す
安定の悪い靴や服装も、転びやすさにつながります。足に合った履物を選ぶ工夫は、記事「高齢の方の靴の選び方」で紹介しています。室内で履くものも、かかとが固定され、滑りにくいものがおすすめです。
本人の力を引き出す、見守り方
転ばないようにと、家族が動作を全部手伝うと、ご本人が体を使う機会を減らしてしまいます。手すりにつかまって自分で立てる方なら、手を出さずに見守るほうが、力を保つことにつながります。
動作の仕方は、一般的な基本を示したものです。リハビリ専門職の指導がある場合は、そちらを優先するのがおすすめです。万一転んだときの対応は、記事「親が家で転んだら」にまとめています。
ゆっくり座る、3つの手順
いすに座るときの、一般的な基本の動きです。肘かけのあるいすで、示しています。
- いすに背を向けて立つ:ふくらはぎの後ろが、座面の前のふちに軽く触れる位置まで、下がります。座面が見えなくても、触れた感覚で位置がわかります。

- 膝と股関節を曲げ始める:背筋は伸ばしたまま、おじぎをするように、上半身を少し前に傾けます。目線は、足元の少し先です。両手は、体の横の肘かけに、そっと降ろします。

- 腕で支えながら、ゆっくり下ろす:肘かけを軽く押して、体を支えます。膝と股関節をさらに曲げながら、お尻を、座面へゆっくり下ろします。力を一気に抜かないのがコツです。

手すりや肘かけがないいすのときは、太ももに手を添えるなど、安定する支え方があります。ご本人に合う方法は、リハビリ専門職に、実際の動作を見てもらうのがおすすめです。
ベッドの端に座るときも、同じです
ベッドで過ごす時間が長い方も、ベッドの端に座る動作は、毎日あります。ベッドの柵や手すりを握り、反対の手をマットレスに添えて、体を支えながら、ゆっくり腰を下ろします。足の裏が、かかとまで床につく高さが基本です。介護ベッドなら、高さを調整できます。

ゆっくり座れない背景と、家族が支援できること
ゆっくり座るには、太ももやお尻の筋肉で体を支えながら、少しずつ腰を下ろす力が要ります。脚の筋力は、いすの立ち座りなどの日常の動作で使われ、動く機会が減ると落ちやすく、落ちると転倒の危険が高まるとされています。
「どすん」と座ってしまう背景には、次のようなことがあります。
- 脚の力が落ちている:体を支えきれず、途中で力が抜けてしまいます。
- 膝や股関節が痛い:痛みで体重をかけられず、最後は力を抜いて座ります。
- 座面が低い・やわらかい:低いいすや深く沈むソファは、ゆっくり下ろすのが難しくなります。
- 急いでいる・疲れている:トイレに急ぐときや、立っているのがつらいときに起こりやすくなります。
このうち、ご家族が支援しやすいのは、座面と、つかまる場所です。座面は、座ったときにかかとまで床につく高さが基本です。立ち上がるのが少し大変なときは、少し高めにすると座りやすくなります。肘かけのあるいすや、立ち座りのときにつかめる手すりがあると、腕の力も使って、ゆっくり下ろしやすくなります。
脚の力や痛みの影響は、人によって違います。座り方で気になることは、リハビリ専門職に、実際の動作を見てもらうのがおすすめです。
もう1つ、よく見かけるのが、いすや便座に座るとき、一気に力を抜いて「どすん」と座る方です。座る瞬間の衝撃が、背骨にも加わります。肘かけや手すりにつかまり、ゆっくり腰を下ろす座り方がおすすめです。座り方は、毎日何度もある動作なので、積み重ねが違ってきます。「前から、座り方が気になる」と感じたら、リハビリの担当者に相談するのがおすすめです。脚の力か、痛みか、いすの高さか、原因を一緒に探せます。
6. 日々の食事と、体を動かすこと
食事は、無理のない範囲で
骨に必要な栄養素として、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどがあげられています。ただ、食事だけで骨粗しょう症が治るとは限らないとされています。薬との関係など、食事の細かい点は、医師や薬剤師、管理栄養士に聞きながら、ご本人の好みに合わせた無理のない工夫がおすすめです。
体を動かすのは、好きなことや役割の中で
体を動かす習慣は、高齢の方の転倒予防につながるとされています。散歩の習慣のある高齢の方は、背中がよく伸び、骨が強く、脚力もあって、転びにくいとされています。
だからといって、運動を課題として課す必要はありません。散歩、ゲートボール、こまめな家事など、活動的な習慣を暮らしの中に入れることが大切とされています。買い物でバスを1〜2つ手前で降りて歩く、史跡めぐりや踊りなどの趣味も、立派な運動です。仲間とおしゃべりしながらだと、続きやすくなります。散歩なら、1日30分・2キロメートルほどが目安とされていますが、体調や痛みに合わせて、続けられる範囲で十分です。
転ぶのが心配でも、家事の役割や趣味を取り上げてしまうのでなく、安全に続けられる工夫を、一緒に考えるのがおすすめです。足や腰が痛いときに家の中でできる体操もありますが、痛みが強いときは、医師に相談してから行うのがおすすめです。筋力の落ちが気になる方は、リハビリの計算ツール「サルコペニアの判定とカットオフ値」「フレイルの判定とカットオフ値」も参考になります。
7. 骨折してしまったとき
治療は医師に、暮らしの工夫は専門職に
気をつけていても、骨折してしまうことはあります。転んだあとに強い痛みがあって立てない、動かせないといったときは、無理に動かさず、医療機関に連絡します(くわしい目安は「親が家で転んだら」)。
「あのとき、もっと気をつけていれば」と、ご自分を責める必要はありません。骨折のあとの家での過ごし方や動き方は、ケアマネジャーやリハビリ専門職に相談できます。家の環境を、家族が完璧に整えておく必要はなく、専門職が現場を見ながら、一緒に考えてくれます。
骨折の場所ごとの、リハビリと暮らしの工夫
足のつけ根の骨折のあとは、記事「足の付け根(股関節)の骨折のあとのリハビリ」に、入院から退院後までの流れをまとめています。背骨の骨折で起き上がると痛いときは、記事「圧迫骨折で、起き上がると痛いとき」に、背中をねじらない起き上がり方があります。自己流で動いて痛みを強めないよう、リハビリ専門職の指導を受けながら、負担の少ない動き方を身につけるのがおすすめです。
よくある質問
痛みがなくても、骨折していることはありますか
あります。骨がもろくなると、自分の体重に背骨が耐えきれず、気づかないうちに背骨がつぶれていることがあり、特別な痛みを感じない場合もあるとされています。背中が丸くなってきた、腰が曲がってきた、身長が縮んだと感じたときは、痛みがなくても、かかりつけ医に相談するのがおすすめです。
骨粗しょう症は、男性もなりますか
なります。女性は閉経のあとに骨量が減りやすく、女性に多い病気ですが、75歳以上の後期高齢者になると、男性でも骨密度が下がり、骨折のリスクが高まるとされています。
骨密度の検査は、どこで受けられますか
医療機関と、自治体などの検診で受けられます。国の決まり(健康増進法)では、検診は40〜70歳の女性に5歳刻みで行われ、自治体によっては対象を広げています。実際に受けられるかどうかは地域によって違うため、市区町村の窓口で確かめるのがおすすめです。
薬のことは、誰に相談すればよいですか
主治医と薬剤師に相談するのがおすすめです。薬は、年齢、骨折した場所、通院できる回数などの暮らし方をみて選ばれます。飲む時間が合わない、通院が負担といった困りごとは、家族だけで抱えず、そのまま伝えて大丈夫です。
痛みがあるときは、体を動かしてもよいですか
痛みが強いときは、医師に相談してから行うのがおすすめです。足や腰が痛いときに、家の中でできる体操もあるとされています。どの動きが合うかは、痛みの場所や強さによって違うため、医師やリハビリ専門職に確かめると確実です。
出典・参考にした資料
- 公益財団法人 骨粗鬆症財団「骨粗鬆症とは」(どんな病気/どんな人がなりやすい/なったらどうなる/ロコモとサルコペニア):骨粗鬆症の定義、自覚症状がなく進み骨折して気づくこと、背骨が気づかないうちにつぶれること、骨折しやすい部位、なりやすい要因、背中が曲がる・身長が縮む。2026年10月確認 https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/
- 骨粗鬆症財団「予防」(骨粗鬆症の予防とは/転倒予防/年代別予防のポイント):骨折予防が目的であること、大腿骨骨折の8割以上は転倒、救急搬送される事故の半数は自宅、転倒の要因、60代以降の骨量測定、BMIが低い方の骨折リスク。2026年10月確認 https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/case/fall.html
- 骨粗鬆症財団「検査と治療」(骨粗鬆症の検査/骨粗鬆症検診/治療の基本方針):検査の種類、診断と治療の開始は医師が決めること、検診の対象(健康増進法、40〜70歳の女性)と自治体による広がり、受診率(2017年 5.4%)、薬は主治医・薬剤師に相談。2026年10月確認 https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/inspection_treatment/tabid252.html
- 骨粗鬆症財団「栄養と運動」(運動/栄養):散歩などの活動的な習慣、日常生活の中で続ける工夫、痛みが強いときは医師に相談、栄養素(カルシウム・ビタミンD・ビタミンK)、食事だけで治るとは限らないこと。2026年10月確認 https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/motion/training.html
- 公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」折茂肇「骨粗鬆症 -転倒などによる骨折が寝たきり・要介護につながる-」:骨折して初めて骨粗鬆症だったと診断されることがあること、後期高齢者では男性でも骨密度が下がり骨折リスクが高まること。2026年10月確認 https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/Aging-and-Gender/kotsusoshoushou-kossetsu.html
- 公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」脚筋力の測定方法・イス座り立ちテスト:脚筋力は歩行や椅子の立ち座り、階段の昇り降りなどで使われること、活動性が下がると脚筋力が落ち、脚筋力が落ちると転倒や病気の危険が高くなること。2026年10月確認 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tairyoku-kiki/kyaku-kinryoku-sokutei.html
この記事は、医療機関で診断や治療を受けている方の代わりになるものではありません。診断、検査、薬については、主治医・薬剤師に相談するのがおすすめです。検診の対象や費用は、市区町村や加入している健康保険によって違います。最新の情報は、市区町村やケアマネジャー、各窓口で確かめるのがおすすめです。