この記事は、住宅改修の申請書類をそろえるケアマネジャーに向けて書きました。見取り図を頼まれたリハビリ職や、ご家族にも役立つ内容です。
住宅改修の事前申請では、工事の内容がわかる図(見取り図・平面図)を出します。上手な図面である必要はありません。市区町村の担当者が、家に行かなくても「なぜ、どこに、何を工事するのか」が分かれば十分です。この記事では、そのために何を書き込めばよいかと、差し戻されやすい点を、順に見ていきます。申請の流れ全体は「住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方」、家屋調査のための間取り図は「家屋調査の間取り図の書き方」にまとめています。
- 国の通知では、写真や簡単な図でよい。設計図のような図面は求められていない
- 描く範囲は、改修する場所だけでなく、寝室からトイレ・浴室・玄関までの動線がわかる範囲
- 改修する場所に通し番号を付け、理由書・見積書・写真の番号とそろえる
- 手すりは形と長さ、段差は今の高さと、なくしたあとの高さ、扉は替えたあとの形を書く
- 手すりの高さは、平面の図では伝わらない。横から見た図(立面図)を求める市区町村もある
- 書式や求められる図は、市区町村で違う。迷ったら、出す前に窓口に確認する
1. 見取り図は、何のための図か
国の通知では、事前申請に出す書類の一つを「完成予定の状態がわかるもの」としています。トイレ、浴室、廊下などの箇所ごとに、改修前と改修後の予定の状態を、写真や簡単な図で示したもの、とされています。国の概要の資料にも、「日付入り写真又は住宅の間取り図など」と書かれています。
自治体の手引きでは、たとえば、さいたま市は次のように案内しています。
- 日常生活の動線と、住宅の状況がわかるように、生活の障害になっている箇所を、簡単な見取り図で書き込む
- 市が示す参考の様式(住宅改修箇所計画図)でなくても、同じ内容が説明できる、ほかの平面図で替えられる
呼び名は、「見取り図」「平面図」「住宅改修箇所計画図」など、市区町村によってさまざまですが、役割は同じです。見取り図は、理由書と見積書を、家の中の場所に結びつける図です。審査する人は、理由書で「なぜ」を、見積書で「何を、いくらで」を、見取り図と写真で「どこに」を確かめます。
2. 書き込むものと、記入例
見取り図に書き込むのは、次のものです。
- 描く範囲:改修する場所だけでなく、寝室からトイレ、浴室、玄関までの、ふだんの動線がわかる範囲。相模原市のQ&Aでは、玄関だけ、トイレだけといった部分の図面が多いことにふれ、手すりや段差の解消が必要な理由が読み解ける範囲で作るよう求めています。
- 動線:ご本人が、ふだんどこからどこへ動くか。夜のトイレなど、改修の理由になる動きを、矢印で示します。
- 通し番号:改修する場所ごとに、①、②…と番号を付けます(3章)。
- 手すり:取り付ける壁と、形(I型・L型など)と長さ。
- 段差:段差の場所と、今の高さと、なくしたあとの高さ。
- 扉:替える場合は、替えたあとの形(引き戸など)。
- 床材:変える場合は、変える範囲と、材料。
久留米市が示している記入例でも、手すりの形と寸法、段差を解消する高さの数値、扉を替えたあとの形を、図に書き込むよう案内されています。
番号ごとの内容は、図の中に書き込むか、図の横や下に、次のような一覧で添えます。
| 番号 | 場所と、工事の内容(記入の例) |
|---|---|
| ① | トイレ、便器の横の壁。手すりの取付け。L型手すり(横60cm・縦70cm) |
| ② | 廊下、寝室の前からトイレの前までの壁。手すりの取付け。I型手すり(長さ180cm) |
| ③ | 玄関、上がり框の横の壁。手すりの取付け。縦のI型手すり(長さ80cm) |
| ④ | 浴室の入口。段差の解消。段差10cm → 2cm |
| ⑤ | トイレの戸。扉の取替え。開き戸 → 引き戸 |
数字は、説明のための例です。手すりの位置や高さは、ご本人の体と動作によって変わります。考え方は、手すりの高さの決め方と、トイレの手すりの高さと位置にまとめています。
部屋の大きさは、正確でなくてかまいません。ただし、相模原市のQ&Aでは、縦と横の縮尺が違う図面が見られるとして、見積もりを確かめるためにも、同じ縮尺で描くよう求めています。廊下の長さと手すりの長さの関係が、図から読み取れることが大切です。
3. 番号を、ほかの書類とそろえる
見取り図の番号は、理由書、見積書、写真の番号とそろえます。さいたま市の手引きでは、改修する場所に通し番号を振り、理由書・見積書・各図面・写真などとそろえるよう案内しています(例:①便器横の壁面、②玄関の上がり框)。
国が示している見積書の様式にも、改修前の写真や図面の番号を書く「写真等番号」の欄があります。番号がそろっていると、審査する人が、書類を行き来しながら確かめやすくなります。見積書の様式は、住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方の3章で紹介しています。
| 書類 | 番号をそろえるところ(例:①トイレの手すり) |
|---|---|
| 理由書 | 改修の内容と、その理由の欄に、①トイレの手すり |
| 見積書 | 「写真等番号」の欄に、① |
| 見取り図 | トイレの手すりの位置に、① |
| 写真 | 改修前の、トイレの手すりを付ける壁の写真に、① |
4. 手すりの高さは、横から見た図で
上から見た見取り図では、手すりの高さは伝わりません。相模原市のQ&Aでは、手すりの取付けの図面は、平面図だけでなく、立面図(展開図や取付け図など)が必要な場合があるとしています。各部材の取付け位置や、支柱(ブラケット)の間の寸法、手すりの棒の長さが記されている必要がある場合もある、とされています。
久留米市の記入例でも、玄関の手すりや洗面所の手すりを横から見た図に、床からの高さや長さを書き込んでいます。
立面図がどこまで必要かは、市区町村によって違います。手すりの高さや位置は、ご本人の立ち上がり方や歩き方で変わるので、リハビリ職の評価や家屋調査の結果があれば、それをもとに決めるのがおすすめです。細かい取付けの寸法は、施工事業者が現地で測って、図にすることもあります。誰がどの図を用意するかは、施工事業者と早めに相談しておくと、手戻りが少なくなります。
5. 差し戻されやすい点と、出す前の確認
自治体の手引きやチェックリストには、次のような点が、よくある不足として挙げられています。
- 部分だけの図面:トイレだけ、玄関だけの図で、動線が分からない(相模原市)
- 縦と横の縮尺が違う:見積もりの長さと、図が合わない(相模原市)
- 改修内容が確認できない:改修の内容や使う部材が分かる図面・カタログが付いていない(川崎市)
- 写真に日付がない:写真の枠内に、撮影日が入っていない(川崎市)。段差を解消する場合は、今の段差の寸法が分かるよう、ものさしなどを当てた写真が必要です(相模原市)
- 住所が違う:被保険者証の住所以外の住宅の改修は、支給の対象外です(川崎市)
出す前に、次の点を確かめておくと安心です。
- 寝室から、トイレ・浴室・玄関までの動線が、図から分かる
- 改修する場所すべてに、番号が付いている
- 番号が、理由書・見積書・写真とそろっている
- 手すりの形と長さ、段差の今の高さと解消後の高さ、扉の替えたあとの形が書いてある
- 手すりの高さを、横から見た図などで示している(市区町村が求める場合)
- 縦と横の縮尺が、極端に違っていない
- 被保険者の名前、作成日、作成した人が書いてある(市区町村の様式に欄がある場合)
求められる図や書式は、市区町村によって違います。この記事の自治体の例は、あくまで一例です。お住まいの市区町村の手引きや様式を、先に確認するのがおすすめです。
6. 間取り図メーカーで作る手順
見取り図は、手書きでも作れます。当サイトの無料ツール「かんたん間取り図メーカー」でも、次の順で作れます。登録は要らず、描いた図はどこにも送信されません。
- 形を描く:「部屋」と「廊下」で、家の形を描きます。「見本:平屋」「見本:2階建て」を開いて、形を直していくこともできます。
- 戸を置く:開き戸、引き戸、出入口などを置きます。
- 手すりと段差を置く:「手すり」で壁に沿って手すりを描き、段差やスロープの印を置きます。
- 動線を描く:「動線」で、寝室からトイレなどへの動きを、矢印で示します。
- 番号と寸法を書く:「番号」の部品で、①、②…の番号を置けます(置くたびに、番号が1つずつ進みます)。「ものさし」で、手すりの長さや廊下の幅を書き込めます。
- 保存する:「A4で印刷」で、タイトルと作成日を付けて印刷やPDF保存ができます。画像(PNG)でも保存できます。
手すりの高さは、平面の図では表せないので、横から見た図は、手書きや施工事業者の図で添えます。
手すりを付ける位置は、工事前の写真に直接書き込む方法もあります。
関連ツール 住宅改修の写真書き込みシート 工事前の写真に、手すりの位置、段差の寸法、番号を書き込んで、A4の写真貼付シートで印刷・PDF保存できます。 関連ツール かんたん間取り図メーカー 部屋、手すり、段差の印、動線、①②…の番号を置いて、見取り図を作り、A4で印刷・PDF保存できます。よくある質問
住宅改修の見取り図は、手書きでもよいですか
国の通知では、写真や簡単な図で示すこととされていて、設計図のような図面は求められていません。手書きでよいかどうかや、様式・書き方の決まりは、市区町村によって違うので、出す前に窓口で確認すると安心です。
寸法は、どこまで書けばよいですか
改修に関わる寸法(手すりの長さ、段差の今の高さと解消後の高さ、扉の幅など)を書きます。家全体を正確に測る必要はありませんが、縦と横の縮尺が極端に違うと、見積もりの長さと図が合わなくなります。手すりの高さは、横から見た図(立面図)を求められる場合があります。
見取り図は、どの範囲まで描けばよいですか
改修する場所だけでなく、寝室からトイレ、浴室、玄関までの、ふだんの動線がわかる範囲で描きます。トイレだけ、玄関だけの部分の図では、手すりや段差の解消が必要な理由が伝わりにくくなります。
見取り図の番号は、何とそろえればよいですか
理由書、見積書、写真の番号とそろえます。国が示している見積書の様式には、写真や図面の番号を書く「写真等番号」の欄があります。番号がそろっていると、審査する人が、書類を行き来しながら確かめやすくなります。
見取り図は、誰が描きますか
決まりはありません。ケアマネジャー、施工事業者、リハビリ職などが描くことがあります。手すりの細かい取付けの寸法は、施工事業者が現地で測って図にすることもあるので、誰がどの図を用意するかを、早めに相談しておくと安心です。
出典・参考にした資料
- 厚生労働省の通知「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年老企第42号):完成予定の状態がわかるものは、便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前と改修後の予定の状態を、写真や簡単な図で示したもの。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第3回 参考資料2、令和8年3月):事前申請の書類、住宅改修後の完成予定の状態が分かるもの(日付入り写真又は住宅の間取り図など)。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省老健局「「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」の一部改正について」(老高発0713第1号、平成30年7月13日、介護保険最新情報Vol.664):見積書の標準様式(写真等番号の欄)。2026年10月確認 リンク
- さいたま市「介護保険 住宅改修の手引き」(令和7年12月):平面図等は、日常生活の動線と住宅の状況がわかるよう、生活の障害になっている箇所を簡単な見取り図で記入すること、参考様式と同じ内容が説明できる他の平面図で替えられること、改修箇所の通し番号を理由書・見積書・各図面・写真とそろえること。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 相模原市「介護保険 住宅改修のQ&A」(令和6年4月改定版):手すりの図面は平面図だけでなく立面図(展開図・取付け図等)が必要な場合があること、図面は生活動線がわかる範囲で作ること(部分図面が多いこと)、縦横の縮尺をそろえること、段差の寸法がわかる写真。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 川崎市「住宅改修 必要書類チェックリスト(事前申請用)」:写真の枠内の日付、改修内容・使用部材が確認できる図面・カタログ、被保険者証の住所との一致。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 久留米市「ケア豆事典 付録 様式記載例19 住宅改修箇所見取図」:手すりの形状と寸法、段差解消の高さの数値、扉を取り替えたあとの形状の記入、横から見た図への高さ・長さの記入例。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 越谷市「住宅改修前に提出が必要な書類(事前申請)」:図面(平面図)と作成例。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
この記事は一般的な内容です。見取り図の様式や、求められる図、書き方の決まりは、市区町村によって違います。申請の前に、お住まいの市区町村の手引きや窓口で、最新の内容をご確認ください。