退院前の家屋調査や、住宅改修・福祉用具の相談では、家の間取り図(見取り図)を描く場面があります。ところが「どこまで正確に描けばよいのか」「何を書き込めば伝わるのか」は、教わる機会が少ないところです。
この記事では、間取り図に何を測り、何を書き込み、どの順番で描くかをまとめました。手書きでも描けますし、当サイトの無料ツールでも作れます。
対象:理学療法士・作業療法士などのリハビリ職、ケアマネジャー、福祉用具・住宅改修の担当の方、実習や課題に取り組む養成校の学生。ご家族が、相談のために家の様子を伝えたいときにも使えます。
- 目的は「工事の図面」ではなく、動線と、危ない場所が伝わること
- まず測るのは、出入口の幅・廊下の幅・段差の高さ・トイレと浴室の内寸・ベッド周り
- 描く順番は、外形 → 部屋 → 出入口 → 段差と手すり → 家具と福祉用具 → 動線
- 縮尺を合わせることより、測った数字を図に書き込むほうが役に立つ
- 写真と組み合わせると、伝わり方が大きく変わる
1. 何のために描く図か
家屋調査で描く間取り図は、工事のための図面ではありません。次の3つが伝わればじゅうぶんです。
- 動線:寝る場所からトイレ、玄関、浴室まで、どこをどう通るか
- 危ない場所:段差、つかまるものがない区間、狭くて回れない場所
- 物の位置:ベッド、いす、福祉用具を、どこに置くか
読む人は、本人・家族・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・工事の担当者などです。その場にいなかった人が見て、家の中を歩けるかを基準にすると、描く内容が決まります。家屋調査そのものの流れは、記事「退院前の家屋調査とは?」でまとめています。
2. まず測る5か所と、測り方
すべてを測る必要はありません。動作や福祉用具に直結する、次の5か所を優先します。
- 出入口の幅:戸を開けた状態の、実際に通れる幅(有効幅)を測ります。引き戸は、開いたときに戸が残る分を引きます。車いすや歩行器が通るかの判断に使います。
- 廊下の幅:手すりを付けると、その分だけ狭くなります。曲がり角では、回れるかどうかも見ます。
- 段差の高さ:玄関の上がり框、敷居、浴室の出入口、勝手口。上の面から下の面までを測ります。
- トイレ・浴室の内寸:便器の前と横の空きが、介助する人の立つ場所になります。浴槽は、縁の高さと深さも測ります。
- ベッド周り:ベッドの長い辺の空き、車いすを置く側の空き、介助バーを付ける側。記事「介護ベッドの置き場所と介助バーを付ける側」の内容と合わせて決めます。
数字はcmでそろえ、測った場所に直接書き込みます。「78」とだけ書くより「出入口78cm」と書くほうが、あとで見返したときに迷いません。
3. 描く順番
- 外形:家全体の四角を、おおまかに描きます。方眼紙なら、1マスを45cm(半間)や91cm(1間)と決めておくと早いです。
- 部屋:居間、寝室、台所、トイレ、浴室、玄関、廊下を区切ります。部屋名を先に書きます。
- 出入口:開き戸、引き戸、戸のない出入口を描き分けます。開き戸は、どちら側に開くかまで描くと、介助の立ち位置が決まります。
- 段差と手すり:段差は高さの数字つきで、手すりは付いている位置に線を引きます。「これから付けたい手すり」は、色や点線を変えて描くと分かりやすくなります。
- 家具と福祉用具:ベッド、いす、テーブル、車いす、ポータブルトイレ、歩行器。実物に近い大きさで置くと、通れるかどうかが見えてきます。
- 動線:寝る場所からトイレ、玄関までを矢印でつなぎます。夜のトイレなど、場面ごとに分けて描くと伝わります。
2階建てで、階段を使う予定があるときは、1階と2階を並べて描き、階段の位置を上下でそろえます。
4. 書き込むと伝わるもの
- 数字:出入口の幅、廊下の幅、段差の高さ、ベッド周りの空き。
- 手すりの有無:付いている場所と、つかまるものがない区間。区間が分かると、提案の理由が伝わります。
- 動線の矢印:日中の動線と、夜の動線を分けて描きます。
- ひとことメモ:「ここで方向転換」「夜は暗い」「敷居でつまずいた」など、その場で聞いた言葉を短く。
- 日付と作成者:あとで見直すときに必要です。記録として残す図には必ず入れます。
手すりを付ける高さなど、数字の目安は記事「手すりの高さの決め方」にまとめています。
5. よくある失敗
- きれいに描こうとして時間がかかる:縮尺より、数字とメモのほうが役に立ちます。
- 戸の開く向きを描いていない:開き戸は、開く側に人が立てるかどうかが変わります。
- 家具を省いてしまう:実際は家具があるので、図の上では通れても、現実には通れないことがあります。
- 単位が混ざる:cmとmm、寸法と畳数が混ざると読み違えます。cmでそろえます。
- 個人情報を書き込む:氏名・住所・電話番号は、図そのものには書かないほうが安全です。共有する範囲を考えて分けます。
住宅改修の申請に添える見取り図は、求められる書き込み(通し番号、手すりの形と長さ、段差の高さなど)が少し違います。「住宅改修の見取り図の書き方」にまとめています。
6. 手書きか、ツールか
その場で聞き取りながら描くなら、方眼紙と鉛筆がいちばん速いです。一方、報告書に貼るあとで直す複数人で共有する場合は、パソコンで作るほうが手間が減ります。
当サイトの「かんたん間取り図メーカー」は、この用途のために作った無料のツールです。登録は不要で、描いた図はどこにも送信されません。
- 方眼(1マス45.5cm)の上に、部屋と廊下をドラッグで描けます
- 介護ベッド・車いす・ポータブルトイレ・歩行器・手すりなどを、実物に近い大きさで置けます
- 段差の高さや、動線の矢印、ものさし(2点間の長さ)を書き込めます
- 1階と2階を切り替えて描き、並べて1枚の画像にできます
- PNG画像で保存して報告書に貼るか、A4で印刷できます
学会・研修会の発表資料、配布資料、書籍、Webサイト・SNSなどで使うときは、次のように出典を書いてください。
出典:やまねこのリハビリ・介護手帖「かんたん間取り図メーカー」(https://yamaneko-family.com/madori)
ただし、養成校の課題や臨床実習のレポート、病院からご家族へお渡しする報告書などに使うときは、出典を書く必要はありません。
関連ツール かんたん間取り図メーカー マウスで部屋を描いて、福祉用具・手すり・段差・動線を置くだけ。無料・登録不要で、図は送信されません。7. よくある質問
手書きの間取り図でも大丈夫ですか?
大丈夫です。伝えたいのは、部屋のつながり・段差・動線です。手書きでも、数字とメモが入っていれば十分に役に立ちます。報告書に残す、あとから直すといった場面では、パソコンで作るほうが手間が減ります。
寸法はどこまで正確に測ればよいですか?
1cm単位で十分です。判断に直結するのは、出入口の幅、廊下の幅、段差の高さ、トイレと浴室の内寸です。ミリ単位の精度が必要になるのは、工事の見積もりの段階で、そこは工事の担当者が測り直します。
写真だけではだめですか?
写真は、その場所の様子を伝えるのが得意です。一方、部屋のつながりや動線は、写真だけでは伝わりにくくなります。間取り図に番号を振り、その番号の写真を並べると、両方の良さが生きます。
家族が、家屋調査の前に間取り図を用意する必要はありますか?
基本的には必要ありません。当日、病院の職員が実際に見て判断します。事前に相談したいときや、家屋調査を希望しないときは、間取り図や写真があると話が進めやすくなります。
図に個人情報を書いてもよいですか?
氏名や住所は、図そのものには書かないほうが安全です。共有する相手が増えるほど、持ち出される場面も増えます。記録として必要な場合は、別の用紙や、報告書の表紙側に書く方法があります。
出典・参考にした資料
- 国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」:住宅内の段差(玄関の上がり框など)・手すり・通路の寸法の考え方 PDF
- 厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準について」(介護保険最新情報Vol.1296、2024年8月2日):車いす・歩行器・手すりなどの福祉用具を選ぶときに、住まいの環境を確認する必要があること PDF
この記事は一般的な進め方をまとめたものです。書式や必要な項目は、病院や事業所によって決まりがある場合があります。