この記事は、手すりや段差の工事、トイレの洋式化などを考えているご家族と、その相談を受けるケアマネジャーに向けて書きました。「この工事は、介護保険の住宅改修の対象になりますか」という疑問に、国の通知をもとに答えます。
住宅改修は、工事費の一部が、20万円までを上限に支給される制度です。ただし、対象になるのは決まった6種類の工事だけで、似た工事でも、対象にならないものがあります。工事の前に市区町村へ申請する流れは「住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方」、申請に添える図は「住宅改修の見取り図の書き方」にまとめています。
- 対象は、手すりの取付け、段差の解消、床や通路の材料の変更、扉の取替え、便器の取替え、それらに付帯する工事の6種類だけ
- 和式から洋式のトイレへの取替えは対象。和式の上に置くタイプの洋式化は、住宅改修ではなく、福祉用具の購入の対象
- 階段の手すりは、日常生活で必要かどうかが見られる。たまにしか使わない2階への階段は、理由と頻度を理由書に書いて、市区町村が判断する
- 置くだけのスロープやすのこ、動力で動く機器、新築や増築、老朽化の工事などは対象外
- 支給の上限は1人20万円(保険給付は通常18万円まで。自己負担は1〜3割)。何回かに分けて使える
- 要介護度が変わっただけでは、上限は増えない。3段階以上重くなったとき(1回だけ)と、転居したときに、もう一度20万円
1. 対象になるのは、6種類の工事
介護保険の住宅改修は、国が決めた、次の6種類が対象です。「手すりの取付け、床の段差の解消などの、比較的小規模なもの」として決められています。
この6種類に入らない工事は、同じ家の工事でも、介護保険の対象になりません。逆に、6種類の工事に付帯して必要になる工事(手すりの壁の下地補強など)は、一緒に対象になります。
2. 種類ごとの、対象になる工事と、ならない工事
国の通知(老企第34号)と、国のQ&A(事務連絡)に書かれている内容を、種類ごとにまとめました。
| 種類 | 対象になる工事 / ならない工事 |
|---|---|
| 手すりの 取付け | 対象:廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒の予防、移動、乗り移りのために付ける手すり。形は、二段式、縦付け、横付けなど、適切なもの ならない:置くだけ、突っ張るだけなど、工事をしない手すり(レンタルの対象。福祉用具のレンタル) |
| 段差の 解消 | 対象:部屋と部屋のあいだ、玄関から道路までの段差や傾斜をなくす工事。敷居を低くする、スロープを設置する、浴室の床をかさ上げする、など ならない:置くだけのスロープ(レンタル)や浴室のすのこ(購入)。昇降機、リフト、段差解消機など、動力で段差をなくす機器の設置 |
| 床・通路面の 材料の変更 | 対象:居室の畳から板張りやビニル系の床材へ。浴室の床を滑りにくいものへ。通路を滑りにくい舗装へ。転倒したときの衝撃をやわらげる材料への変更も、対象として差し支えないとされています ならない:滑り止めマットなど、置くだけのもの |
| 引き戸等への 扉の取替え | 対象:開き戸を、引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに替える工事。扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含まれます。扉の位置を変えるより安くすむ場合は、引き戸などの新設も対象 ならない:自動ドアにしたときの、自動ドアの動力の部分 |
| 洋式便器等への 便器の取替え | 対象:和式便器を洋式便器に替える工事。便器の位置や向きを変える工事も。和式から、暖房便座や洗浄機能のついた洋式便器へ替える場合も含まれます ならない:和式の上に置く腰掛便座(購入の対象)。すでに洋式の便器に、暖房や洗浄の機能をあとから付ける工事。非水洗から水洗にする工事のうち、水洗化の部分 |
| 付帯して 必要な工事 | 対象:手すりを付けるための壁の下地の補強。スロープに付ける転落や脱輪を防ぐ柵や立ち上がり。床材を変えるための下地の補修や根太の補強、通路の路盤の整備。扉の取替えに伴う壁や柱の改修。便器の取替えに伴う給排水設備工事や床材の変更(水洗化の部分を除く) |
ここに書いたのは、国の通知とQ&Aにある内容です。細かい扱いは、市区町村によって違うことがあります(たとえば、浴槽の取替えや、床を柔らかい材質にする工事は、市区町村によって扱いが分かれる例があります)。申請の前に、担当のケアマネジャーか、市区町村の窓口に確認するのがおすすめです。
3. よく相談される4つの工事
現場で、特に相談が多い4つの工事について、対象になるかどうかと、確かめておくことをまとめました。
① 和式から洋式のトイレに替える
住宅改修の対象になります。「洋式便器等への便器の取替え」にあたり、和式便器を洋式便器に替える工事のほか、便器の位置や向きを変える工事も含まれます。和式から、暖房便座や洗浄機能のついた洋式便器へ替える場合も、含まれます。
- 便器の取替えに伴う給排水設備の工事や、床材の変更は、付帯する工事として、一緒に対象になります。
- 水洗化(非水洗の便器から、水洗や簡易水洗の便器にする工事)の部分は、対象になりません。
- すでに洋式の便器に、暖房や洗浄の機能をあとから付ける工事は、対象になりません。
- トイレに手すりも付けたいときは、同じ申請に入れられます。手すりの位置はトイレの手すりの高さと位置が参考になります。
② 手すりを付ける
住宅改修の対象になります。廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒の予防や、移動、乗り移りのために付ける手すりです。手すりの形は、二段式、縦付け、横付けなど、その人に合った形を選びます。
- 壁に取り付けるための下地の補強も、一緒に対象になります。
- 工事をしないで使う手すり(床に置くもの、突っ張るものなど)は、住宅改修ではなく、レンタルの対象です。退院までに工事が間に合わないときなど、まず借りて様子を見る方法もあります(福祉用具のレンタル)。
- 手すりの高さと位置は、手すりの高さの決め方と、申請に添える図は住宅改修の見取り図の書き方にまとめています。
③ 和式の便器に、かぶせるタイプの洋式トイレにする
和式便器の上に置いて、腰掛け式に変える腰掛便座は、住宅改修ではなく、福祉用具の「購入」の対象です(特定福祉用具販売)。国の通知でも、住宅改修の「便器の取替え」からは、腰掛便座の設置が除かれています。
| 方法 | どちらの制度か |
|---|---|
| 和式の便器を、 洋式の便器に替える | 住宅改修(工事費20万円までが対象)。工事の前に、市区町村へ申請する |
| 和式の上に置く、 腰掛便座を使う | 福祉用具の購入(年間10万円までが対象)。指定を受けた事業所から買う。工事は要らない |
どちらにするかは、家の状況(賃貸かどうか、配管など)、費用、使う方の立ち座りの様子を見て、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、施工事業者と相談して決めます。購入の払い方などは、ポータブルトイレの置き場所と選び方にもまとめています。
④ 2階へ行く階段に、手すりを付ける
寝室が1階で、2階にはたまにしか上がらない場合の階段の手すりは、日常生活で必要かどうかが見られます。住宅改修は、「日常生活上、必要なもの」を対象にしているためです。
- 自治体の手引きには、階段の手すりも対象として扱う例があります(根室市は、階段の手すりを、安全性などを考えて真に必要と認められる場合に対象としています)。
- 泉佐野市のQ&Aでは、1階に居住するスペースがある場合、2階への階段の手すりは対象外としています。ただし、2階に上がる理由と頻度によっては、対象になる場合があるとされ、理由書に詳しく書くよう案内されています。
- 理由書では、「何のために2階に上がるのか(洗濯物を干す、仏壇の世話をする、など)」と、「どのくらいの頻度か」、「階段で、どこが危ないか(ふらつく、手をつく場所がない、など)」を、具体的に書きます。
国の通知は、手すりを付ける場所を「廊下、便所、浴室、玄関、玄関からの道路までの通路等」としています。階段が対象になるかどうかの細かい扱いは、市区町村によって違うので、先に、ケアマネジャーか市区町村の窓口に、相談しておくのがおすすめです。
4. 対象にならない工事
国の通知と、自治体の手引きに書かれている、対象にならない工事の例です。
- 新築:住宅の新築は、住宅改修と認められません。増築のうち、新しく居室を設けるものも対象外です。ただし、廊下を広げるのにあわせて手すりを付ける、トイレを広げるのにあわせて和式から洋式にする、といった工事は、手すりの取付け、便器の取替えの費用についてだけ、対象になり得ます。
- 動力で動く機器:昇降機、リフト、段差解消機の設置工事。自動ドアの動力部分。
- 置くだけのもの:固定しないスロープや踏み台、滑り止めマット。(スロープはレンタル、浴室のすのこは購入の対象です。)
- 老朽化による工事(さいたま市の手引き):古くなった床や設備を、新しくする工事。
- 家具への工事(さいたま市、泉佐野市):下駄箱やタンスなどに、手すりを付ける工事。
- 日常生活に必要とはいえない工事:泉佐野市のQ&Aでは、庭の手入れのための手すりを、日常生活上必要なものにあたらないとして、対象外としています。どこまでが日常生活に必要かは、市区町村が判断します。
- 機能の追加:すでに洋式の便器に、暖房や洗浄機能を付ける工事。棚やトイレットペーパーホルダーなど、介護保険の対象にならない機能のついた手すり(さいたま市)。
- 設計や積算だけ:工事をしない、設計や積算だけの費用。
対象の工事と、対象にならない工事を一緒に行う場合は、対象の部分を取り出したり、割り振ったりして、対象になる費用を計算します。見積書では、対象の工事と対象外の工事を分けて書くのが基本です(住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方の3章)。
家族などが、自分で工事をした場合は、材料の購入費が対象になります。この場合も、必要な書類は、変わりません。
5. 20万円の考え方
支給の上限と、自己負担
住宅改修の支給の上限(支給限度基準額)は、1人あたり20万円です。要支援・要介護の区分にかかわらず、同じ額です。20万円分の工事をしたとき、保険給付は、通常18万円になります。
- 20万円は上限で、使い切る前提のものではありません。工事費が20万円より少なければ、その分だけです。
- 20万円までなら、何回かに分けて申請できます。
- 20万円を超えた分は、全額自己負担です。
上限が、もう一度20万円になるとき
要介護度が変わっても、上限が増えるわけではありません。これまでに支給された額を、20万円から引いた残りが、使える額です。要支援から要介護になったときなども、同じです。
上限が、改めて20万円になるのは、次の2つの場合です。
- 介護の必要の程度が、3段階以上重くなったとき:最初に住宅改修費の支給を受けた工事の着工のときと比べて、3段階以上重い認定を受けたときに、改めて20万円までの支給を受けられます。この扱いは、1回に限られます。
- 転居したとき:今住んでいる住宅の分だけが、上限の管理の対象です。別の住宅で支給された額は、数えられないため、転居すると、もう一度20万円までの支給を受けられます。
| 段階 | 要介護度 |
|---|---|
| 第1段階 | 要支援1 |
| 第2段階 | 要支援2、要介護1 |
| 第3段階 | 要介護2 |
| 第4段階 | 要介護3 |
| 第5段階 | 要介護4 |
| 第6段階 | 要介護5 |
たとえば、最初の工事のとき要介護1(第2段階)だった方が、要介護4(第5段階)になると、3段階上がったことになります。要介護3(第4段階)では、2段階なので、対象になりません。
同じ家に、介護保険の被保険者が複数いる場合は、上限の管理は、1人ずつです。ただし、同時に工事をするときは、それぞれの人に関係する範囲を分けて申請します。たとえば、それぞれの専用の居室の床材を替えるときは、それぞれが申請できますが、共用の居室の床材を替えるときは、どちらか一方だけが申請します。
6. 工事を決める前に
- まず、相談する:担当のケアマネジャー(要支援の方は、地域包括支援センター)に、困っている場面と、希望を伝えます。希望を伝えること自体は、いつでもできます。
- 借りる方法も考える:手すりやスロープは、工事をしないものなら、レンタルできます。退院までに工事が間に合わないとき、暮らしてみてから位置を決めたいときに向いています(福祉用具のレンタル、福祉用具の早見表)。
- 工事の前に、申請する:着工の前に、市区町村へ申請して、確認を受けます。やむを得ない事情がある場合を除き、工事のあとの申請では、支給されないことがあります。
- 書類と図:住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方、住宅改修の見取り図の書き方にまとめています。
- 費用の目安:住宅改修と福祉用具の費用で、場面ごとの目安を確かめられます。
よくある質問
介護保険の住宅改修の対象になる工事は、どんなものですか
国が決めた6種類です。手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止や移動の円滑化のための床や通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、そして、これらに付帯して必要になる工事です。支給の上限は1人20万円で、保険給付は通常18万円までです。
和式トイレを洋式トイレに替える工事は、対象になりますか
対象になります。和式便器を洋式便器に替える工事や、便器の位置や向きを変える工事が含まれます。暖房便座や洗浄機能のついた洋式便器への取替えも含まれます。ただし、水洗化の部分や、すでに洋式の便器に機能をあとから付ける工事は、対象になりません。
和式の便器の上に置く、洋式にするタイプのトイレは、住宅改修の対象ですか
住宅改修ではなく、福祉用具の購入(特定福祉用具販売)の対象です。和式便器の上に置いて腰掛け式にする腰掛便座は、住宅改修の「便器の取替え」からは除かれています。購入費は、原則として1年間(4月から翌年3月)で10万円までが対象です。
寝室は1階で、2階にはたまにしか上がりません。階段に手すりを付けられますか
住宅改修は、日常生活で必要なものが対象です。自治体のQ&Aでは、1階に居住するスペースがある場合、2階への階段の手すりは対象外としつつ、2階に上がる理由と頻度によっては対象になる場合があるとして、理由書に詳しく書くよう案内している例があります。階段の手すりの扱いは市区町村によって違うので、先にケアマネジャーか市区町村の窓口に相談すると安心です。
要介護度が上がったら、また20万円使えますか
要介護度が変わっただけでは、上限は増えません。これまでに支給された額を20万円から引いた残りが、使える額です。最初に住宅改修費の支給を受けた工事の着工のときと比べて、介護の必要の程度が3段階以上重くなったときは、改めて20万円までの支給を受けられます(1回に限る)。転居したときも、改めて20万円までの支給を受けられます。
家族が自分で手すりを付けた場合、費用は出ますか
被保険者が自分で材料を購入し、本人や家族などで工事をする場合は、材料の購入費が住宅改修費の対象になります。この場合も、事前の申請など、必要な書類は変わりません。工事の前に、市区町村に確認しておくと安心です。
出典・参考にした資料
- 厚生労働省の通知「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年老企第34号)第二:住宅改修の6種類それぞれの定義と、含まれるもの・除かれるもの(置くだけのスロープ、動力で段差を解消する機器、自動ドアの動力部分、腰掛便座、水洗化の部分、すでに洋式の便器への機能の付加)、付帯して必要となる工事。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省の通知「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年老企第42号):支給限度基準額20万円、保険給付は通常18万円、要介護状態区分が変わっても上限は変わらないこと、3段階以上重くなったときの再度の20万円(1回に限る)、転居、新築や増築、対象外の工事を併せて行う場合、自ら工事を行う場合、複数の被保険者がいる場合、やむを得ない事情がある場合。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第3回 参考資料2、令和8年3月):住宅改修の種類、支給限度基準額20万円、保険給付の割合(原則9割、所得に応じて8割・7割)、段階の表。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1296」の参考情報に収められた、事務連絡(令和4年3月31日)「介護保険制度の福祉用具・住宅改修に係るQ&Aの送付について」(転倒時の衝撃を緩和する床材への変更は対象として差し支えない)と、老振発第0410001号(平成21年4月10日)(引き戸等の新設が、扉位置の変更等より費用が低廉な場合は、扉の取替えに含まれる)。2026年10月確認 リンク
- さいたま市「介護保険 住宅改修の手引き」(令和7年12月):介護保険の対象にならない工事の例(新築・増改築、老朽化、家具への工事、機能が追加された手すりなど)。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 泉佐野市「介護保険住宅改修 Q&A」:1階に居住するスペースがある場合の2階への階段の手すり、家具への手すり、庭の手入れのための手すり。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
- 根室市「介護保険による住宅改修の手引き」(令和2年10月):支給対象になる工事の例(階段の手すり、敷地内の手すり、付帯工事)と、対象外の例。自治体の例として。2026年10月確認 リンク
この記事は一般的な内容です。対象になるかどうかは、工事の内容と、ご本人の状況をもとに、市区町村が判断します。細かい扱いは、市区町村によって違います。工事の前に、担当のケアマネジャーや、お住まいの市区町村の窓口で、最新の内容をご確認ください。