「少し歩くと、足がしびれる」「休むと楽になって、また歩ける」。このような様子に気づいたご本人と、ご家族に向けて書きました。腰の神経の通り道がせまくなる腰部脊柱管狭窄症で、よく見られる症状です。まず受診する先、治療の流れ、安静にしすぎず、症状が出にくい姿勢で暮らす工夫、運動の考え方を、順にまとめます。
- 歩くと足にしびれや痛みが出て、休むと楽になる症状を間欠跛行といい、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状です。足の血管の病気でも似た症状が出るため、まず整形外科を受診するのがおすすめです
- 神経の障害は、ひどくなると回復しにくくなるとされています。早めに診断を受け、悪化を防ぐことが大切です
- 腰を反らす姿勢で症状が出やすく、前かがみだと出にくくなります。杖や押し車、自転車、踏み台などで、症状が出にくい姿勢を作る工夫があります
- 診療ガイドラインでは、運動療法が提案されています。専門家の指導のもとで行う運動は、自分だけのトレーニングより有効とされています。痛みを我慢して長く歩くのは、逆効果とされています
- 歩ける距離は、「電柱2本分」のようないつもの道のりの言葉で伝えれば十分です。道のりに休める場所を決めておくと、外出を続けやすくなります
- 足に力が入りにくい、尿が出にくい・漏れやすいなどが出たときは、早めに受診するのがおすすめです
1. まず受診:整形外科へ
歩くと足がしびれる、休むと楽になる、という症状があるときは、整形外科を受診するのがおすすめです。同じような症状は、足の血管の病気(血管性の間欠跛行)でも出るため、診断では区別が大切とされています。
神経への障害は、ひどくなると回復しにくくなるとされています。症状が悪化しないうちに治療を始め、悪化を防ぐことが大切とされています。「年のせい」と我慢せず、早めに診てもらうのがおすすめです。
2. 腰部脊柱管狭窄症とは
背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が、さまざまな原因でせまくなり、お尻から足にかけて、痛みやしびれが出る状態です。代表的な症状は、次のとおりです。
| 症状 | どんな様子か |
|---|---|
| 間欠跛行(かんけつはこう) | 最も代表的な症状です。安静にしているときは症状がない、または軽い方が、ある程度の距離を歩くと、足に痛みやしびれが出て、歩くのが難しくなります。しばらく休むと、また歩けるようになります。進むと、歩ける距離や時間が短くなります。 |
| 足の痛み・しびれ | お尻から足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)、冷えるような感じ、焼けるような感じが出ることもあります。 |
| 力が入りにくい | 歩くときに体重を支えにくい、足が上がりにくい、スリッパが脱げやすい、などが出ることがあります。 |
| 腰の痛み | 腰の痛みや、重い・張る感じが出ることもあれば、足の症状だけで、腰痛がまったくないこともあります。 |
| 排尿・排便の症状 | 進行すると、肛門のまわりのほてり、尿が漏れやすい・出にくい、などが出ることがあります。 |
神経の圧迫のされ方で、両足に症状が出るタイプ(馬尾型)、片方の足に出るタイプ(神経根型)、両方が混ざるタイプがあります。画像の検査と症状が合わないときは、追加の検査で原因を調べます。
3. 治療の流れ
手術をしない治療(保存療法)には、薬による治療、リハビリ(運動療法など)、生活の工夫があります。診療ガイドラインでは、運動療法を行うことが提案されています。
運動療法は、手術(神経の圧迫をとる手術)よりは効果が劣るとされていますが、副作用などのリスクが低く、費用の負担も少ないため、重症の場合を除いて、おすすめできる治療とされています。保存療法で改善しないときや、症状が重いときは、手術が検討されることがあります。どの治療が合うかは、症状や画像の検査をみて、医師が決めます。
4. 暮らしの工夫:症状が出にくい姿勢
腰を反らす姿勢では、神経が圧迫されて、症状が出やすくなります。前かがみの姿勢は、症状が出にくい姿勢です。症状が出にくい姿勢をとることで、神経のダメージが悪化するのを防ぐ、という考え方です。

- 杖や手押し車を使う:外出のときに使うと、症状が出にくい前かがみの姿勢で歩きやすくなります(記事「杖の選び方と使い方」「歩行器の種類と選び方」)。
- 自転車を使う:こぐ姿勢は腰が曲がり、症状が出にくい姿勢です。遠くへ行くときや買い物に使うと、よいとされています。ふらつきがある方は、安全を優先して、医師やリハビリ職に相談します。
- 踏み台を使う:立ち仕事のときは、片足を踏み台のようなものに乗せると楽です。高いところの物をとるときも、踏み台を使うと、背をそらさずに取れます。
- 重い荷物は、体の近くで持つ:体をそらさずに持てます。
- 体重と禁煙:体重が多い方は、減らすことで、腰への負担が減ります。喫煙は、血の流れを悪くして、症状を悪くするとされています。
靴は、足元がぶれにくいものを選ぶと、歩くときの安心が増えます(記事「高齢の方の靴の選び方」)。
「どこまで歩けるか」は、いつもの道のりで伝える
受診のときに、「歩くと足がしびれます」だけでなく、どこまで歩くと休みたくなるかが伝わると、症状の様子がわかりやすくなります。「何メートル」と測らなくても、ふだんの道のりで十分です。
- 「家の前の電柱2本分で、休みたくなる」
- 「スーパーの入口から、魚売り場まで行くとしびれてくる」
- 「家の中では、寝室からトイレまでは大丈夫」
記録の表のようなものを作る必要はありません。「前より短くなった気がする」と気づいたときに、ノートやスマホのメモにひとこと残しておくと、受診のときに、いつごろからかを思い出しやすくなります。歩ける距離が急に短くなったときは、早めの受診を考える症状にあたります。

いつもの道のりに、休める場所を決めておく
「休むと楽になる」という特徴は、休める場所があれば、外出や買い物を続けやすくなるということでもあります。無理をして一気に歩くよりも、途中で座れる場所をあらかじめ決めておくのがおすすめです。
- 外の道のり:公園のベンチ、店先のいす、スーパーや駅の休憩コーナーなど。1つ見つけておくと、そこまでを目安に歩けます。
- 家の中の道のり:寝室からトイレまでが遠いとき、廊下の途中にいすを1脚置くと、休みながら行けます。ベッドの端に腰かけて、少し休んでから立つのもよい方法です。
休む場所は、ご本人の「ここなら座りやすい」という感覚が大切です。ご家族は、一緒に歩きながら探してみるのがおすすめです。


5. 運動は、専門家の指導のもとで
筋力の低下を防ぐために、ある程度の運動は有効とされています。診療ガイドラインでは、専門家の指導のもとで行う運動療法は、自分で行うトレーニングよりも、痛みの軽減や、体の機能、日常生活動作、生活の質の改善に有効とされています。最適な運動の種類は、まだ明らかになっていません。
- 症状が出ない範囲で、適度に行います。
- 痛みを我慢して、長時間歩くのは、神経にダメージが加わるため、逆効果とされています。
- どんな運動が合うかは、人によって違います。リハビリ職に、実際の様子を見てもらって決めるのがおすすめです。
「安静にしていれば治る」と思って、動かない時間が増えると、筋力が落ちて、かえって歩きにくくなることがあります。休むことと、動くことの、ちょうどよい配分を、医師やリハビリ職と一緒に探していくのがおすすめです。
6. 早めの受診を考える症状
- 足に力が入りにくくなった、足が上がらず、つまずきやすくなったとき
- 尿が出にくい・漏れやすい、肛門のまわりのほてり、など、排尿・排便の症状が出たとき
- 歩ける距離が、急に短くなったとき、安静にしていても症状が出るようになったとき
7. 家族ができる関わり
- 「年のせい」で済ませず、受診をすすめる:歩くとしびれる、休むと楽になる、という様子に気づいたら、整形外科への受診を、声をかけておすすめします。
- 外出は、休める場所を決める:歩く途中で座れる場所や、休憩のできる店を、一緒に見つけておきます(休める場所の決め方)。
- 買い物の荷物を、減らす:重い荷物は、家族が持つ、宅配を使う、などで負担を減らします。
- 役割を取り上げない:できる家事や外出は、続けられる形(杖、押し車、休憩)で続けるのがおすすめです。
よくある質問
歩くと足がしびれて、休むと楽になります。何科に行けばよいですか
整形外科を受診するのがおすすめです。このような症状は、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状(間欠跛行)ですが、足の血管の病気でも似た症状が出るため、診断では区別が重要とされています。
腰を反らすと、痛いのはなぜですか
腰部脊柱管狭窄症では、腰を反らす姿勢で、神経の通り道がさらにせまくなり、神経が圧迫されて、症状が出やすくなるとされています。反対に、前かがみになると、症状が出にくくなります。
運動は、したほうがよいですか
診療ガイドラインでは、運動療法を行うことが提案されています。専門家の指導のもとで行う運動は、自分で行うトレーニングよりも、痛みの軽減や、体の機能、日常生活動作の改善に有効とされています。一方で、最適な運動の種類は、まだ明らかになっていません。症状が出ない範囲で行い、痛みを我慢して長く歩くなどの無理は、神経に負担がかかるため、避けたほうがよいとされています。
杖や押し車を使うと、よいのですか
外出のときに、杖や押し車(シルバーカー)を使うと、症状が出にくい前かがみの姿勢で歩きやすくなるとされています。選び方は、杖と歩行器の記事で紹介しています。
自転車なら、楽に乗れるのはなぜですか
自転車をこぐ姿勢は、腰が曲がり、症状が出にくい姿勢とされています。遠くへ行くときや、買い物には、自転車を使うとよいとされています。ただし、ふらつきがある方や、交通の状況によっては、安全を優先して、医師やリハビリ職に相談するのがおすすめです。
重い荷物は、どう持てばよいですか
重い荷物は、体の近くで持つと、体をそらさずに持てるとされています。買い物は、少量ずつにしたり、宅配を使ったりするのも1つの方法です。
出典・参考にした資料
- 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 監修「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)」(Mindsガイドラインライブラリ 要約PDF):運動療法を行うことを提案する(推奨度2、エビデンスの強さB)、専門家の指導下の運動療法はセルフトレーニングより有効、最適な運動の種類は明らかでない、運動療法は除圧術より効果は劣るが有害事象のリスクが低く低コストで重症例以外では推奨できる、間欠跛行は特徴的だが血管性間欠跛行との鑑別が重要 PDF https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00646.pdf(2026年10月確認)
- 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「腰部脊柱管狭窄症の症状」:間欠跛行、足の痛み・しびれ、筋力低下、腰痛、膀胱直腸障害、馬尾型・神経根型・混合型 Web https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sekityukankyousakushou/shoujou.html(2026年10月確認)
- 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「腰部脊柱管狭窄症のケア」:早期診断が大切、症状が出にくい姿勢(腰を反らさない)、杖や手押し車、自転車、踏み台、重い荷物は体の近くで持つ、体重、禁煙、運動(症状が出ない範囲、痛みを我慢して長く歩くのは逆効果) Web https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sekityukankyousakushou/care.html(2026年10月確認)
- 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる:腰部脊柱管狭窄症」(患者向けパンフレット「整形外科シリーズ8」の案内) Web https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbar_spinal_stenosis.html(2026年10月確認)
この記事は一般的な内容です。診断や治療は、医師が、症状や検査の結果をみて決めます。運動や歩き方は、ご本人の状態によって合うものが違います。迷うときは、かかりつけの医師や、担当のリハビリ職に相談するのがおすすめです。