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歩くときの付き添い方:立つ位置と、手の添え方、ふらついたときの支え方杖や歩行器で歩く親に付き添うとき。立つ位置、手の添え方、場所ごとのこつ、ふらついたときの支え方

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月11日/最終確認日:2026年10月11日

この記事は、杖や歩行器で歩く親に付き添うときに、「どこに立てばいいの?」「転びそうになったら、引っぱっていいの?」と迷うご家族に向けて書きました。片麻痺の方、骨折や膝・股関節の痛みのある方、ふらつきの出てきた方に付き添うときの、立つ位置と手の添え方、ふらついたときの考え方をお伝えします。

この記事のポイント
  • 付き添う人の役割は、転ばせないことを前提に、バランスを崩しそうなときに支えることが基本です
  • 見守りなら、弱い側のやや斜め後ろ。支えが必要な方は、真横(足がぶつからない程度に少し後ろ寄り)がおすすめです
  • ふだんは手を添えずに見守り、手を添えるなら、腕や腰など、体を支えやすいところです
  • ふらついたときに、腕や手を引っぱると、かえって倒れやすくなることがあります
  • 立ち上がった直後は、足踏みや膝の屈伸をしてから歩き出すと安心です
  • 大きく崩れたときは、ひとりで抱えて止めようとせず、座れる場所や手すりのある道を選んでおくのも工夫です

1. 付き添いの基本:手を出す場面と、見守る場面

崩れそうなときに、支える

親が歩くところに付き添うとき、ご家族はつい「絶対に転ばせない」と気を張ってしまいます。転ばせないことは、もちろん前提です。ただ、歩いている人のバランスは、一歩ごとに少しずつ揺れながら保たれています。ご家族の仕事は、その揺れをすべて止めることではなく、バランスを崩しそうなときに、支えることです。

ご本人が自分の力で立て直せる揺れは、そのまま見守り、崩れそうなときに支える。崩れてしまってからでは、転びやすくなるためです。家族の付き添いは、これくらいの構えがおすすめです。ご本人の動作の状態によって、必要な支え方は変わります。

手を出しすぎない理由

必要以上に手を貸し続けると、ご本人は自分でバランスをとる機会が減り、足元への注意も少なくなりやすくなります。ご本人ができる部分は、ご本人に任せるほうが、歩く力を保つことにつながるとされています。

反対に、手を出したほうがよい場面もあります。たとえば、次のような場面です。

どこまで手を出すかは、ご本人の状態で変わります。迷うときは、リハビリ専門職に、その方の歩き方を見てもらうのがおすすめです。

歩き出す前に:立ち上がった直後は、少し待つ

寝ていたあとや、座っていたあとに立ち上がった直後は、膝に力が入りにくかったり、立ったときのバランスがとりにくかったりすることがあります。立ち上がってすぐに歩き出さず、足踏みや、膝の軽い屈伸をしてから歩くようにするのがおすすめです。立ち上がってすぐに向きを変えたり、歩き出したりして、ふらつくことがあるためです。

ベッドの横に立ち、ベッドに付けた介助バーの握りを片手でつかんで立ち上がった高齢の女性と、そばで見守る娘
立ち上がったあとは、すぐ歩き出さず、足踏みで整えてから

立ち上がりの手伝い方は、いす・ベッドからの立ち上がりの介助で詳しく書いています。

2. どこに立つか

見守りでよい方は、やや斜め後ろ

自分で歩けて、ふらつくことがときどきある、という方の見守りは、ご本人のやや斜め後ろに立つのが基本とされています。ご本人との距離は、近すぎず、遠すぎない程度にします。近すぎると、ご本人の足や杖の動きを邪魔してしまい、遠すぎると、ふらついたときに手が届きません。

斜め後ろに立つと、ご本人の視界の邪魔にならず、前に出て手を引っぱってしまうこともありません。

支えが必要な方、安定しない方は、真横

歩くときに支えが必要な方や、バランスが安定しない方は、真横に立つのがおすすめです。足がぶつからない程度に、少しだけ後ろ寄りに立つと、歩幅を邪魔せずに、すぐ体を支えられます。

どちらの立ち方が合うかは、ご本人の歩き方で変わります。

片麻痺の方の場合

脳卒中のあとなどで体の片側に麻痺がある方(片麻痺の方)は、麻痺のある側にふらつきやすいとされています。そのため、ご本人が杖を持ったり、壁や家具を伝い歩きしたりできるときは、立つのは麻痺のある側(弱い側)です。見守りなら、その側のやや斜め後ろ、支えが必要なら、その側の真横が目安です。

杖も使えず、伝い歩きもできない方は、付き添う人が杖の代わりになります。このときは、動かしやすい側(強い側)に立って、体を支える形もよい方法です。どちらの側がよいかは、ご本人の状態で変わります。

骨折や膝・股関節の痛みがある方の場合

骨折のあとや、膝・股関節に痛みのある方も、考え方は同じです。痛みのある側、体重をかけにくい側に立つのがおすすめです。見守りならやや斜め後ろ、支えが必要なら真横です。痛みのある足でふんばれず、そちら側に崩れやすくなるためです。杖も伝い歩きもできない方では、付き添う人が杖の代わりになるため、反対側に立つこともあります。

立つ側が迷うときは、退院のときに、リハビリ専門職に「どちら側に立てばよいか」を確かめておくと安心です。

3. どこに手を添えるか

ふだんは、手を添えずに見守る

歩く力がある程度ある方には、ふだんは手を添えず、すぐ後ろで見守るのがおすすめです。手を添えるのは、ふらつきやすい場面や、疲れが出たときなどに絞ります。

手を添えるなら、腕や腰など、体を支えやすいところ

手を添えるのは、腕や腰など、体を支えやすいところです。ご本人の動作によって、合う場所は変わります。いずれも、強くつかんだり、引っぱったりせず、軽く添えて、崩れそうなときに支えるのが基本です。腕を強くつかんで引くと、ご本人が自分で立て直す動きを妨げてしまいます。

転びやすい方では、ズボンの上端(ウエストのあたり)に手を添える方法もあります。体の中心に近く、ふらついたときに支えやすい位置です。

支えが必要な方では、歩行ベルト(腰に巻く介助用のベルト)を使うことがあります。使うかどうか、どう使うかは、ご本人の状態で変わるため、リハビリ専門職やケアマネジャーに相談してから決めるのがおすすめです。

麻痺のある腕や肩は、引っぱらない

片麻痺の方の麻痺側の肩は、関節を支える力が弱くなっていることがあり、腕を強く引くと痛めるおそれがあるとされています。つかんで引き上げることは避け、動作の手伝いが必要なときは、リハビリ専門職に手の添え方を確かめておくのがおすすめです。

理学療法士の視点から 現場でよく見るのは、ご家族が、転ばせまいとして、親の腕や手を引っぱってしまう場面です。気持ちはとてもよくわかります。ただ、引っぱられると、ご本人は立て直す動きがしにくくなり、かえってバランスを崩しやすくなります。 ご本人の動作のレベルにもよりますが、ご家族の介助は、「バランスを崩しそうなときに支える」くらいがちょうどよいと考えています。ふだんは見守りを基本にして、崩れそうなときに、そばにいて支える。崩れてしまってからでは、転びやすくなるためです。それだけでも、立派な付き添いです。 ご自宅でどこまで手を出すか、どちら側に立つかは、ご本人の歩き方を見ないと決められません。迷うときは、リハビリの時間に、ご家族の付き添いを見てもらうのがおすすめです。
家の廊下を、杖で歩く高齢の男性の、やや斜め後ろを同じ速さで歩き、腰のあたりに手を軽く添える息子
見守りのときは、やや斜め後ろから、腰のあたりに軽く手を添える

4. 杖・歩行器を使うとき

杖で歩く方に付き添うとき

杖は、歩くたびに前に出し入れします。付き添う人が杖のすぐそばに立つと、杖にぶつかったり、杖の動きを邪魔したりすることがあります。見守りのときは、杖の動きに余裕を残して、少し離れた斜め後ろに立つのがおすすめです。杖を持てる方では、杖と反対の側(弱い側)に立つのが目安です。迷うときは、リハビリ専門職に確かめておくと安心です。

杖の長さや持つ手の考え方は、杖の長さの合わせ方と選び方をご覧ください。

歩行器で歩く方に付き添うとき

車輪の付いた歩行器(歩行車)は、押すと軽く前に進みます。そのぶん、強く寄りかかると、歩行器だけが前に進んで、ご本人が前に倒れそうになることがあります。ご本人の立ち方や、体重のかけ方に注意して、見守ります。

脚の力が落ちてきたり、立ったときのバランスが悪くなってきたりしたときは、より安定感のある歩行器への変更を検討する、とされています。使っている歩行器が合っているかどうかは、リハビリ専門職やケアマネジャーに相談できます(歩行器の種類と選び方)。

何も使わずに歩く方に付き添うとき

杖や歩行器を使っていなくても、ふらつきが増えてきた方には、基本の考え方は同じです。やや斜め後ろに立って、見守ります。杖や歩行器が必要かどうかは、ご家族だけで決めず、リハビリ専門職に歩き方を見てもらうのがおすすめです(杖と歩行器、どちらが合う?)。

5. 場所ごとのこつ:曲がり角・ドア・段差・外

曲がり角と、向きを変えるとき

向きを変える動きは、足がもつれて、ふらつきやすい場面です。曲がり角では、ご本人が足を踏みかえる時間をとるため、ゆっくり、大きく回るのがおすすめです。付き添う人は、急がせずに、ご本人の動きに合わせて、斜め後ろで見守ります。

ドアや、せまい場所

ドアの開け閉めは、手を離して、片足に体重がかかりやすい場面です。付き添う人が、先にドアを開けて押さえておくと、ご本人は歩くことに集中できます。

段差や階段

段差や階段は、ご本人にとって、いちばん転びやすい場所のひとつです。立つ位置や進み方は、家の中の段差の種類で違います。玄関の段差は玄関の上がり框の段差をどうする?、階段は階段の上り下りが不安になったらで、くわしく書いています。

外を歩くとき

外には、家の中にない、気をつけたい点があります。

外では、ご本人のペースを最優先にします。ご家族が先に歩いて、ご本人を待たせる形にならないよう、同じ速さで歩いて、疲れが見えたらこまめに休むのがおすすめです。靴の選び方は高齢の方の靴の選び方に書いています。

6. ふらついたとき・転びそうなときの対応

引っぱらずに、体の中心を支える

ふらついたときは、引っぱらずに、腕や腰に手を当てて、体の中心を支えるのがおすすめです。ご本人が自分の足で立て直すのを、そばで手伝うイメージです。

ご本人の動作のレベルにもよりますが、家族の付き添いでは、バランスを崩しそうなときに支えることが基本です。大きく崩れたときの備えとして、付き添う人も、自分の足をひらき、膝を軽く曲げて立つと、動きやすく、腰への負担も減らせるとされています(介護する人の腰痛予防)。

居間で少しふらついた高齢の女性に、すぐそばに寄り添って、腕と腰に手を添えて支える娘
ふらつきそうなときは、体を寄せて、腕や腰を支える

支えきれないときがある、と知っておく

ご本人が大きく崩れたときは、ご家族ひとりでは、支えきれないことがあります。そのとき、無理に抱えて止めようとすると、ご家族が腰や足を痛めたり、一緒に転んだりしてしまうおそれがあります。

支えきれないと感じたときは、無理をせず、ご本人をゆっくり座る、またはゆっくり低い姿勢になる方向へ導くほうが、安全な場合があります。実際にどの方法が合うかは、ご本人の体格や動作で変わるため、リハビリ専門職に、ご家族の付き添い方を見てもらっておくのがおすすめです。

備えとして、すぐ座れる場所、つかまれる手すりのある道を選ぶのも、立派な工夫です。

転んでしまったとき

転んだときは、あわてて起こさず、まず、ご本人の様子を確かめます。起こす前に確かめることと、手順は親が家で転んだらあわてず、起こす前に確かめることに書いています。転びにくい家の整え方は家の中の転倒を防ぐ工夫をご覧ください。

7. 専門職に相談する目安

迷ったときは、ひとりで抱え込まない

付き添い方に、これが正解という形はありません。ご本人の歩く力や、麻痺・痛みの状態で、必要な手助けが変わるためです。次のようなときは、相談するのがおすすめです。

急に片方の手足に力が入らない、ろれつが回らない、顔がゆがむといったときは、脳卒中の心配があります。すぐに119番に連絡してください。転んだあとに強く痛がる、急に腫れてきて動かせない、というときも、骨折の心配があります。早めに受診してください。

相談先

かかりつけ医やケアマネジャー、リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士)に相談できます。ご本人が歩く様子を実際に見てもらうと、立つ位置や手の添え方を、その方に合わせて教えてもらえます。相談先の探し方は介護・リハビリに関わる職種ガイドをご覧ください。

よくある質問

手をつないで歩くのは、よくないですか?

手をつないで歩いてもかまいません。ご本人が安心でき、付き添う人も、崩れそうなときに支えやすい方法です。
つなぎ方のこつは、付き添う人が横に並び、手のひらを上に向けて、下からご本人の手を受けるように持つことです。ご本人は上から手を乗せて体重をかけられるので、杖の代わりのように使えます。付き添う人が上から握ると、引っぱる形になりやすくなります。
もう片方の手は、ご本人の腕や腰に軽く添えておくと、崩れそうなときに支えやすくなります。

腕や手をつかんで支えてもよいですか?

腕や手をつかんで引くと、ご本人が自分の力で立て直す動きの妨げになることがあります。とくに麻痺のある側の腕や肩は、強く引くと痛めるおそれがあります。
強くつかまず、軽く添えて、崩れそうなときに支えるのがおすすめです。腕や腰など、体を支えやすいところに添えます。

歩くのがゆっくりで、つい急かしてしまいます

ご家族が先に進むと、ご本人は追いつこうとして足元への注意が減り、バランスを崩しやすくなります。ご本人のペースに合わせるのがおすすめです。
出かける時間に余裕を持たせておくと、急かさずにすみます。

家族ひとりで、転びそうな親を支えきれるか不安です

支えきれない場面がある、という前提で備えるのが大切です。ひとりで抱えて止めようとせず、安全に座れる場所やつかまれる手すりがある道を選ぶと、安心につながります。
不安が大きいときは、実際の歩く場面を理学療法士などに見てもらうと、その方の動作に合った付き添い方を教えてもらえます。
支える場面が増えてきたら、杖や歩行器などの道具を使うことも、考えてみるのがおすすめです。道具が支えの一部を受けもつので、ご本人は安定しやすく、ご家族の負担も軽くなります。合う道具は、リハビリ専門職やケアマネジャーに相談できます。

ふらつきが急に増えたときは、どうすればよいですか?

いつもよりふらつく、足が出にくいという変化は、体調や薬の影響などで起こることがあります。外出を控えて、かかりつけ医に相談するのがおすすめです。
急に片方の手足に力が入らない、ろれつが回らない、顔がゆがむといったときは、脳卒中の心配があります。すぐに119番に連絡してください。

出典・参考にした資料

最新の情報は、かかりつけ医、ケアマネジャー、各相談窓口で確認するのがおすすめです。付き添い方は、リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。