やまねこのリハビリ・介護手帖理学療法士がひもとく、家族の安心と現場の実践ツール

親が出かけなくなった・
横になる時間が増えたら見落としやすい暮らしの変化と、家族ができること

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年9月24日/最終確認日:2026年9月24日

離れて暮らす家族が帰省したときに「あれ?」と気づくこともあれば、同居していても少しずつ変化が進むため、すぐには異変だと気づけないこともあります。親が「出かけなくなった」「横になっている時間が増えた」という変化は、年齢のせいだから仕方ないと見過ごされがちです。

けれども、面倒がるようになったり、横になる時間が増えたりすることの背景には、別の理由が隠れていることがあります。そのままにしておくと、さらに動きにくくなってしまうこともあるため、早めに気づけると、次の手を打ちやすくなります。

この記事では、見落としやすい暮らしぶりの変化と、その背景にあるもの、そして家族が無理なくできる工夫や、迷ったときの相談先についてまとめました。

この記事のポイント
  • 「出かけなくなった」「横になる時間が増えた」は、生活の変化に気づくための大切なサイン
  • 背景には、体の痛み、転ぶのが怖い、耳や目の不自由、気分の落ち込み、認知機能の低下、薬の影響などが隠れていることがある
  • 本人の家での役割や楽しみを取り上げず、やり方を工夫して続けられるようにする
  • 責めたり無理に連れ出したりせず、地域の通いの場やデイサービスをきっかけにする
  • 気になる変化は、かかりつけ医や地域包括支援センターに早めに相談すると、原因に合わせた対応を考えやすくなる

1. 「年のせい」で見過ごされやすい、暮らしぶりの変化

暮らしの中のちょっとした変化は、ゆっくり進むことが多く、本人も家族も「年のせいだから仕方ない」と受け止めてしまいがちです。次のような変化に気づいたときは、生活の中で少し手助けが必要になり始めているサインと考えられます。

見落としやすい変化の例

こうした変化は、痛みや熱のようにはっきりした症状がないため、診察のときに伝えそびれやすい部分でもあります。本人も「特に変わりない」と答えることが多く、家族が気づいたことを伝えないと、話題にのぼらないまま過ぎてしまいます。

国のチェックを土台に、現場の視点を足しました

介護予防の分野では、厚生労働省が作った基本チェックリスト(25項目)が使われています。市町村や地域包括支援センターが、心身の衰えの兆しに早めに気づいて、介護予防の取り組みにつなげるためのものです。この中にも、外出の回数(「週に1回以上は外出していますか」「昨年と比べて外出の回数が減っていますか」)、おっくうさ(「以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる」)、物忘れ(「周りの人から『いつも同じ事を聞く』などの物忘れがあると言われますか」)をたずねる質問が入っています。

ただし、これは本人が自分で答える形が基本で、市町村の窓口で使われるものです。ご家族が「前と比べてどう変わったか」を見る場面には、少し形が合いません。そこで当サイトでは、この基本チェックリストの領域(運動、閉じこもり、物忘れ、気分、食べること)を土台に、リハビリの現場でご家族からよく聞く変化を足して、家族が見て気づける26項目のチェックリストを作りました。失禁が増えた、お風呂やトイレの動作に手助けが要る、身だしなみに気を使わなくなった、料理の段取りがうまくいかない、といった項目です。

点数で判定はせず、3か月ごとに同じ項目を見直して、前回と比べて何が増えたかを確かめ、受診や相談のときにそのまま伝えられるようにしています。

関連ツール 親の変化に気づくチェックリスト 体の動き・暮らしぶり・物忘れの26項目を、3か月ごとに記録できます。前回から増えた変化がグラフと表でわかり、そのまま受診や相談で伝えられます。無料・登録不要。

2. 変化の背景に隠れていること

出かけなくなったり、横になる時間が増えたりする背景には、年齢のせいというだけでなく、いろいろな理由が隠れていることがあります。しかも、理由は1つとは限らず、重なっていることもよくあります。

背景として考えられること

たとえば「お風呂が面倒」と言っている場合でも、実は「浴室の床で滑りそうで怖い」「浴槽をまたぐときに足が痛い」といった理由が隠れていることがあります。そのときは、手すりや入浴用のいすで入りやすくすると、また入るようになることもあります(記事「お風呂の手すりと入浴用品の選び方」)。2階に上がらなくなった場合も、階段の上り下りに不安が出ているのかもしれません(記事「階段の上り下りが不安になったら」)。

認知機能の低下が関係していることもあります

「おっくうがる」「出かけなくなった」という変化は、気持ちの問題や体力の問題だけでなく、もの覚えや段取りの力(認知機能)の変化が関係していることもあります。ここは家族から見えにくいところなので、少していねいに整理します。

認知症では、脳の働きが低下することで直接起こる症状を中核症状と呼びます。新しいことを覚えにくくなる(記憶障害)、日付や場所がわかりにくくなる(見当識障害)、段取りを組み立てて実行するのが難しくなる(実行機能障害)などです。これに対して、中核症状に、もともとの性格や体の状態、まわりの環境が影響して現れる、抑うつ、不安、意欲の低下、興奮などを周辺症状(行動・心理症状)と呼びます。

この分け方を知っておくと、家族から見える変化の意味が少し違って見えてきます。たとえば、次のような場面です。

大切なのは、こうした変化があるからといって、認知症だということにはならないという点です。同じような変化は、体の痛み、耳や目の不自由、薬の影響、うつ、甲状腺などの病気でも起こります。原因を確かめて診断できるのは医師だけです。家族の役割は、見分けることではなく、気づいた変化をそのまま伝えることです。

物忘れが気になるときは、まずかかりつけ医に相談するのがおすすめです。地域包括支援センターでも、物忘れの相談を受け付けています。「まだ受診するほどでは」と迷う段階でも、相談だけならできます。

気になる変化は、早めにかかりつけ医や地域包括支援センターに相談すると、原因に合わせた対応を考えやすくなります。

急に元気がなくなった、急に歩けなくなった、受け答えがおかしい、顔や手足が動かしにくいなど、急な変化が見られるときは、様子を見ずに受診してください。救急車を呼ぶか迷うときは、地域の救急相談(#7119など)でも相談できます。

3. 動かない時間が続くとどうなるか

日中に横になっている時間が長い状態が続くと、体にはいろいろな影響が出やすくなります。

体力が落ちると、少し動いただけでも疲れやすくなります。すると、さらに動くのがおっくうになり、活動する時間が減っていく、という繰り返しになりやすいところが、この変化のやっかいなところです。

「転ぶのが怖い」という理由で動かなくなっている場合も同じで、動かない時間が続くと足腰の力が落ち、かえって転びやすくなることがあります。家の中を安全に動ける環境に整えることは、動く機会を守ることにもつながります(記事「家の中の転倒を防ぐ工夫」)。

4. 家族ができること:役割を取り上げずに続ける工夫

親が動かなくなってくると、家族は心配から「危ないから私がやる」「休んでいて」と、家事などを代わりにやってしまうことがあります。安全を守ることは大切ですが、本人の家での役割や楽しみまで取り上げてしまうと、動く機会がさらに減ってしまいます。代わりにやりすぎるのではなく、やり方を工夫して続けられるようにするのがおすすめです。

役割や楽しみを続けるための工夫

理学療法士の視点から リハビリでは、体の状態だけでなく、その方が家で担っている役割、好きなこと、興味のあること、いまできることを確かめます。そのうえで、暮らしのどこに動く場面を組み込めるかを考えます。「1日10回、立ち座りをしましょう」と決めた運動は、こなすこと自体が目的になってしまい、続きにくいものです。それよりも、洗濯物を干す、新聞を取りに行く、仏壇に手を合わせる、庭の草を抜くといった、もともとの暮らしの中の動きが増えるほうが、無理なく続きます。人と話す、段取りを考える、手を動かす場面も一緒に増えるので、体の活動量と頭の働きの両方を保ちやすくなります。ご家族から「前はこれをやっていた」「これが好きだった」と教えていただけると、その手がかりになります。

5. 外出のきっかけと、生活のリズム

家の中での活動に加えて、外に出るきっかけがあると、生活のリズムが整いやすくなります。いきなり遠出をする必要はありません。

退院した後などは、疲れて横になる時間が長くなりやすい時期です。短い期間でもサービスを使って、生活のリズムを先に作っておく方法もあります(記事「訪問リハビリと通所リハビリ(デイケア)の違いと選び方」)。どちらが合うか迷うときは、ツール「デイケアとデイサービス、どちらが合う?かんたん診断」で整理できます。

6. 気になる変化は、どこに相談するとよいか

家族だけで抱え込まず、早めに相談できる窓口があります。

それぞれの役割の違いは、記事「地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い」でまとめています。

相談のときは、「いつから」「どんなふうに」変わったのかを具体的に伝えられると、短い時間でも話が進みやすくなります。気づいたことをその場で思い出すのは難しいので、あらかじめ書き出しておくのがおすすめです。

関連ツール 親の変化に気づくチェックリスト 気づいた変化をチェックすると、受診やケアマネジャーへの相談でそのまま見せられる項目にまとまります。印刷やLINEでの共有、次のチェックの日のカレンダー登録もできます。

7. よくある質問

横になっている時間が増えたのは、年のせいと考えてよいのでしょうか?

年齢とともに疲れやすくなることはありますが、横になる時間が増えた背景に、痛み、息切れ、気分の落ち込み、薬の影響などが隠れていることもあります。原因を決められるのは医師なので、気になるときは、かかりつけ医に「最近、横になっている時間が増えた」と具体的に伝えて相談するのがおすすめです。

本人が「大丈夫」と言って、受診したがりません。

無理に説得するより、別の用事に合わせる方法があります。定期の通院や薬をもらうときに家族が付き添って、そのついでに様子を伝える形なら、本人の負担が少なくて済みます。受診が難しいときは、地域包括支援センターに家族だけで相談することもできます。

離れて暮らしているので、変化に気づきにくいです。

帰省したときは、話す内容だけでなく、家の中の様子(食べ物の減り方、郵便物、洗濯やごみの様子)や、歩く姿、着ているものにも目を向けると、変化に気づきやすくなります。前回の帰省と比べてどうかを記録しておくと、次に気づきやすくなります。

デイサービスに行きたがりません。どうすればよいですか?

「行かせる」のではなく、見学や体験から始める方法があります。目的(お風呂、リハビリ、人と話す)によって向いている場所が変わるので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに、本人が気にしている点も含めて伝えて、合いそうな場所を探してもらうのがおすすめです。

おっくうがるのは、認知症のサインでしょうか?

認知症では、意欲の低下が現れることがあります。ただし、同じような変化は、体の痛み、耳や目の不自由、薬の影響、うつなどでも起こるため、この変化だけで判断はできません。診断できるのは医師です。「面倒がることが増えた」「前は好きだった集まりに行かなくなった」と、気づいたことをそのまま伝えると、必要な検査や相談につながりやすくなります。

物忘れが気になりますが、本人に言い出しにくいです。

本人の前では伝えにくいときは、受診の前に受付や看護師にメモを渡す、地域包括支援センターに家族だけで相談する、といった方法があります。気づいた出来事を日付とあわせて書き留めておくと、相談のときに落ち着いて伝えられます。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な考え方をまとめたものです。変化の原因や必要な対応は、ご本人の状態によって変わります。気になる変化があるときは、かかりつけの医療機関や地域包括支援センターに相談するのがおすすめです。