やまねこのリハビリ・介護手帖理学療法士がひもとく、家族の安心と現場の実践ツール

ドアを引き戸に替える工事|介護保険の住宅改修で対象になる?開き戸が使いにくい理由と選び方トイレ・お風呂・寝室の開き戸で困ったとき。開き戸が大変な理由、工事の前にできること、引き戸への交換と介護保険の扱い

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月18日/最終確認日:2026年10月18日

トイレやお風呂、寝室のドアが開き戸のままで、「開け閉めのたびにふらつく」「杖や歩行器、車いすで通りにくい」と感じているご家族に向けて書きました。片麻痺の方、骨折や膝・股関節の痛みのある方、ふらつきの出てきた方が、家の中のドアで困る場面と、その解決の選択肢(開く向きの変更から、引き戸への交換、介護保険の住宅改修)をお伝えします。

この記事のポイント
  • 開き戸は、開けるときに体を後ろに下げたり、向きを変えたりする動きが必要で、立ったときのバランスが不安定な方には負担になることがあります
  • 工事の前に、誰が使うか・杖や車いすを使うか・ドアの開く向き・ドアの前の広さを確かめます
  • 大きな工事の前に、開く向きの変更、ドアノブの変更、扉を外すといった方法もあります
  • 引き戸への取替えは、介護保険の住宅改修の対象になる工事です。自動ドアの動力部分は対象外です
  • 引き戸には、壁に引き込む広さや、床のレールなど、確かめたい点があります
  • 工事の前に事前申請が必要です。まず、ケアマネジャーに相談するのが安心です

1. 開き戸が大変になる理由

開き戸は、日本の家で多く使われているドアです。ただ、立っているときのバランスに不安がある方にとっては、開け閉めの動きの中に、いくつかの負担があります。

開き戸(ひらきど) ちょうつがいを軸に、扉が弧を描いて開く 後ろに下がる 人 色の部分が、扉の動く範囲です 引き戸(ひきど) 扉が、壁に沿って横にすべる 人 引き込む壁 前の場所は不要。横の壁の広さが必要
開き戸と引き戸の違い(上から見た図)。色の線が扉です

手前に引くドアは、自分に当たる

手前に引いて開けるドアでは、ドアが自分の体のほうに動いてきます。そのため、ドアの動きに合わせて、一歩後ろに下がる必要があります。後ろに下がりながら、片手でドアを持ち、もう片方の手で杖や歩行器を扱う、という動きは、バランスを崩しやすい場面です。

廊下で、杖をついた高齢の男性が、トイレの開き戸のドアノブを持ち、手前に開くドアに当たらないよう、片足を後ろに引いている
手前に引くドアは、ドアの動きに合わせて、体を後ろに下げる動きが入る

押して開けるドアも、体の向きを変える

押して開けるドアでも、ドアノブを握って回し、押しながら、前に進み、さらに閉めるときに向きを変える、という動きが続きます。片麻痺の方や、膝・股関節の痛みで片脚に体重をかけにくい方は、この動きの途中で、足元が不安定になることがあります。

杖・歩行器・車いすでは、ドアの前に場所が足りない

杖や歩行器を使う方は、ドアノブに手が届く位置まで進むと、ドアの開く範囲に体や用具が入ってしまいます。車いすでも、ドアの前に車いすが止まると、ドアを開けるための場所がなくなります。引き戸は、開け閉めのときの体の移動が少なくてすみ、車いすでは通る幅や動きの流れを確保しやすいとされています。

介助する人が、ドアでふさがる

ベッドで過ごす時間が長い方でも、ドアは大切です。介助する方が、車いすを押したり、食事や洗濯物を持ったりして、両手がふさがった状態で、ドアを開けることがあります。このとき、ドアの開け閉めが介助の妨げになります。

2. 工事の前に、見ておくこと

引き戸に替えるかどうかを決める前に、次のことを確かめておくと、必要な工事がはっきりします。

見ること見る理由
誰が、どこのドアを使うかトイレ、お風呂(脱衣所)、寝室のどれか。ご本人が使うのか、介助する人が出入りするのか。
杖・歩行器・車いすのどれか用具によって、必要な通路の幅と、ドアの前の広さが変わります。
ドアの開く向き内開きか外開きか。手前に引くのか、押すのか。トイレは、中で具合が悪くなって倒れたとき、内開きだと、体でドアがふさがって開けにくくなる場合があります。
ドアの前の広さドアを開けるときに、体と用具が入る場所があるか。
通れる幅車いすを使うときは、ドアの開口の幅と、廊下から曲がって入る広さを見ます(車いすの選び方)。
開け閉めの動き実際に開けて、閉める場面を見て、どの動きで不安定になるかを確かめます。

とくに、ドアの開く向きと、ドアの前の広さは、どの方法を選ぶ場合にも手がかりになります。退院前の家屋調査でも、リハビリ専門職が、ご本人の動きと合わせて見るところです(家屋調査とは)。

3. 大きな工事の前に、できること

引き戸への交換は、壁や枠の工事が必要になることがあります。その前に、次のような方法で足りる場合もあります。

ドアノブを、握りやすい形に替える

丸いドアノブは、握って回す動きが必要です。手の力が弱い方や、麻痺のある手では、回しにくいことがあります。レバー型は、手のひらや前腕で押し下げて開けられる形です。ドアノブの変更は、住宅改修の「引き戸等への扉の取替え」に含まれます。

ドアの開く向きを変える

手前に引く向きから、押して開ける向きにする、または、使いやすい手の側(麻痺のない側など)でドアを扱えるように、ちょうつがいを付け替える方法です。向きが変わると、後ろに下がる動きが減る場合があります。ただし、部屋の広さや壁、廊下の使い方で、変えられるかどうかが決まります。トイレを内開きに変えるときは、前の章の、中で倒れたときのことも考えて、専門職と相談すると安心です。

扉を外す、またはカーテンにする

寝室や、人目が気にならない場所では、扉そのものを外す、または、アコーディオンカーテンなどに替える方法もあります。扉の撤去も、住宅改修の「引き戸等への扉の取替え」に含まれます。トイレやお風呂など、閉めたい場所では、向きません。

ストッパーで開けたままにする方法の限界

「開けておけばよい」と、ドアストッパーで開いたままにすることがあります。ただ、開きっぱなしのドアは、通り道の邪魔になります。また、閉めたいときに使いにくい、という問題も残ります。ストッパーは、一時的な工夫としては使えますが、毎日の暮らしを楽にする方法としては、物足りないことがあります。

理学療法士の視点から 現場でよく見るのは、開き戸が、ご本人の「支え」になってしまう場面です。ふらついたときに、とっさに扉を持って体を支える。ところが、扉は動くので、体重をかけると、体と一緒に動いてしまい、かえって不安定になります。 また、開きっぱなしにすると邪魔になり、ストッパーで固定すると、今度は使い勝手が悪くなる、という困りごともよく聞きます。手前に引くドアは、扉が自分に当たるので、一度、場所を移る動きが必要です。ドアの前では、開け閉めのときに安定して立っていられるかを見ています。 ご自宅では、ドアの開く向きと、ドアの前の広さを、まず見てみるのがおすすめです。実際の開け閉めを見ないと決められない部分が多いので、迷うときは、リハビリの専門職に、その場面を見てもらうと安心です。

4. 引き戸に替える工事

引き戸は、扉が壁に沿って横に動くので、ドアの前後に開く場所がいらず、後ろに下がる動きや、向きを変える動きが減ることが期待されます。ただ、住まいによって、できる・できないや、向き・不向きがあります。

介護ベッドで背を起こして座る高齢の女性のもとへ、寝室の引き戸から、食事のおぼんを両手で持った娘がまっすぐ入ってくる
引き戸なら、両手がふさがっていても、まっすぐ出入りしやすい

工事の種類

見積もりのときに、確かめたいこと

商品や住まいで違うので、現地を見てもらったうえで、次の点を確かめるとよいです。

自動ドアにする場合

自動ドアは、便利な反面、住宅改修では、動力部分の費用は対象外です(次の章)。今ある開き戸に付ける、電動で開け閉めする装置も、住宅改修の対象にしない案が示されています。自動で閉まるタイミングに間に合わず、ぶつかって転倒するおそれも指摘されています。使う方の動きや、必要性を、専門職と一緒に考えるのが安心です。

5. 介護保険の住宅改修での扱い

対象になる工事

「引き戸等への扉の取替え」には、開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置なども含まれます。扉の取替えに伴う、壁や柱の改修工事も、付帯して必要な工事として含まれます。

対象にならない部分

引き戸への取替えにあわせて自動ドアにした場合、自動ドアの動力部分の設置は含まれません。動力部分の費用にあたる額は、介護保険の給付の対象外で、自己負担です。

引き戸の新設

引き戸等の新設は、扉の位置を変える工事より、費用が低く抑えられる場合に限り、「引き戸等への扉の取替え」に含まれるとされています。

費用と上限

住宅改修の支給の上限は、1人20万円です。そのうち、自己負担は1〜3割です(保険給付は通常、最大でも18万円です)。上限を超えた分は、全額自己負担になります。上限まで使う必要はありません。トイレの手すりなど、ほかに必要な工事があれば、合わせて上限の範囲で考えます(住宅改修の対象になる工事と、ならない工事)。

工事の前に、申請が必要

住宅改修は、工事の前の事前申請が必要です。市区町村が必要と認めた工事が対象になります。扱いの細かいところは、市区町村によって違うので、工事を頼む前に、ケアマネジャーか市区町村の窓口に相談すると安心です(住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方)。

6. 決めるまでの進め方

  1. 困っている場面を、具体的にする:トイレのドアの手前で、ふらつく。浴室から出るとき、ドアに手をかけて立ち上がる。寝室から、車いすで出られない、など。
  2. ケアマネジャーに相談する:申請の流れや、理由書のことを相談できます(要支援の方は、地域包括支援センター)。
  3. リハビリ専門職に、開け閉めの場面を見てもらう:入院中なら、退院前の家屋調査で。在宅なら、訪問のリハビリや、ケアマネジャーを通じた相談で。
  4. 施工業者に、現地を見てもらう:引き込む壁、スイッチ、床のレールなどを確かめます。見積もりは、動力部分などの対象外の部分を分けて出してもらいます。
  5. 事前申請を出して、通ってから工事:理由書や図面、写真が必要です。

ご本人の動きは、病状や回復で変わります。いま困っている動きに合わせて、まず小さな方法を試すか、引き戸に替えるかを、専門職と一緒に決めていくのがおすすめです。

よくある質問

開き戸を引き戸に替える工事は、介護保険の対象ですか?

対象になります。介護保険の住宅改修の6種類の工事の1つ、「引き戸等への扉の取替え」です。開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置なども含まれます。
ただし、市区町村が必要と認めて、事前の申請が通ったものが対象です。工事の前に、ケアマネジャーか市区町村の窓口に相談するのがおすすめです。

引き戸にあわせて、自動ドアにしたいです

自動ドアにする場合、自動ドアの動力部分は住宅改修の対象になりません。動力部分の費用にあたる額は、保険給付の対象外で、自己負担になります。
引き戸への取替えの部分は、対象になる場合があります。見積もりでは、動力部分とそれ以外を分けて出してもらうと、申請のときに整理しやすくなります。

扉を外すだけ、ドアノブを替えるだけでも、対象になりますか?

扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も、「引き戸等への扉の取替え」に含まれます。
大きな工事をしなくても、本人の動きに合う工夫で足りる場合があります。どれが合うかは、家屋調査や、リハビリ専門職の見立てで相談できます。

今ある開き戸の場所に、引き戸を新しく作ることはできますか?

引き戸等の新設は、扉の位置を変える工事より費用が低く抑えられる場合に限り、「引き戸等への扉の取替え」に含まれるとされています。
壁の状態や間取りで、できるかどうかが変わります。施工業者とケアマネジャーに、現地を見てもらって確かめるのがおすすめです。

工事を先に済ませて、あとで申請してもよいですか?

住宅改修は、工事の前の申請(事前申請)が必要です。先に工事をしてしまうと、対象にならない場合があります。
工事を頼む前に、ケアマネジャーに相談して、申請の準備を進めるのがおすすめです。

費用は、どのくらいかかりますか?

製品の種類、扉の大きさ、壁や枠の工事の有無で変わるため、見積もりで確かめます。住宅改修の支給の上限は1人20万円で、そのうち自己負担は1〜3割です。上限を超えた分は、全額自己負担になります。
20万円を使い切ることが目的ではありません。その人に必要な工事を選んで、上限の範囲に収まるか確かめる、という順番が安心です。

出典・参考にした資料

最新の情報は、かかりつけ医、ケアマネジャー、市区町村の窓口で確認するのがおすすめです。住宅改修の扱いは市区町村で違うことがあります。ドアの開け閉めの方法や、工事の選び方は、リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。