お風呂で転びそうになる、浴槽の出入りが怖い、というご本人とご家族、ケアマネジャーに向けて書きました。浴室の工事のうち、介護保険の住宅改修の対象になるものと、福祉用具の購入や貸与になるものを分けて整理します。手すりの位置や、入浴用品の選び方は「お風呂の手すりと入浴用品の選び方」に、住宅改修全体の対象工事は「住宅改修の対象になる工事と、ならない工事」にまとめています。この記事は、その浴室の部分です。
- 浴室で住宅改修の対象になるのは、手すりの取付け、滑りにくい床材への変更、床のかさ上げ(段差の解消)、扉の取替え(折れ戸・引き戸など)と、それらに付帯する工事です
- 置くだけの「すのこ」は住宅改修ではなく、福祉用具の購入(入浴補助用具)です。シャワーチェア、浴槽台、浴槽につける手すりも、購入の対象です
- 浴槽の交換や、ユニットバス全体の入れ替えは、対象の6種類の工事に挙げられていません。工事の前に、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認するのがおすすめです
- 住宅改修は、工事の前に申請します。支給の限度額は1人20万円までで、自己負担は1〜3割(所得に応じて)です
- 浴室は濡れて滑りやすく、手すりの下地も必要な場所です。見積もりの前に、リハビリ職やケアマネジャーに、実際の動きを見てもらうと安心です
- 手すりの形は、立ち座りが目的ならL字型から検討するのがおすすめです。冬は脱衣所と浴室を暖めることも、あわせて考えます
1. 浴室の工事を考えるとき
浴室は、濡れて滑りやすく、裸で、足元が不安定になる場所です。転びやすい場面は、洗い場での立ち座り、浴槽をまたぐとき、浴室の出入口の段差、狭い浴室での向きを変えるときなど、いくつかあります。どの場面で困っているかによって、必要なものが変わります。
工事の前に、まず次の順番で考えるのがおすすめです。
- どの場面で困るかを、本人と一緒に確かめます(立ち座り・またぎ・出入口・着替え)。
- 置くだけの用具で解決できないかを見ます(シャワーチェア、浴槽台、すのこ、滑り止めマット)。これらは、工事をしなくても、購入や貸与で使えます。
- 工事が要るもの(手すり、床材、床のかさ上げ、扉)を、住宅改修として考えます。
手すりをどこから付けるか、浴槽のまたぎ方は、本人の体の動きで変わります。実際の動きを、リハビリ職やケアマネジャーに見てもらって決めると、付けたあとに合わない、という失敗を減らせます。
2. 手すりの取付け
手すりの取付けは、住宅改修の6種類の工事の1つです。浴室は、廊下、便所、玄関、玄関から道路までの通路などと並んで、手すりの取付け場所として挙げられています。転倒の予防、移動や乗り移りの動作の助けになることを目的に付けるものです。手すりの形に決まった型はなく、使う方の動きに合わせて、合うものを選びます。浴室でよく使われる形は、次の3つです。
- L字型:縦の部分と横の部分が1本につながった形で、浴槽の脇の壁によく使われます。縦と横の両方を持てるので、浴槽の出入りと、浴槽の中での立ち座りの両方を支えます。立ち座りに使うときは、まず検討する形です。
- 縦付け:立ち上がるときに、体を引き上げるように持ちます。出入口や、浴槽の脇によく付けます。
- 横付け:浴槽に沿った壁や、洗い場の壁で、体を支えたり、伝い歩きをしたりするときに持ちます。

- 手すりを付けるための壁の下地補強も、付帯して必要な工事として、対象に含まれます。
- 浴室の壁は、タイルやユニットバスのパネルで、そのままでは取り付けにくいことがあります。取り付け方は、工事の事業者と相談します。
- 手すりの高さや位置の考え方は「お風呂の手すりと入浴用品の選び方」と「手すりの高さの測り方」を見てください。
3. 脱衣所から浴室までの移動と、寒さ
工事とは別に、脱衣所から浴室までの流れも、あわせて見ておくのがおすすめです。脱衣所は、立ったまま服を脱ぐ、向きを変える、濡れた足で浴室の段差をまたぐ、と、ふらつきやすい動きが続く場所です。
- 着替えは座って:脱衣所に、腰かけられるいすやベンチがあると、立ったまま片脚で支える場面が減ります。
- 手すりを途切れさせない:脱衣所の壁から、浴室の出入口、浴槽の脇まで、つかまるものが続いていると、壁や扉の枠につかまらずにすみます。出入口の手すりは、扉の開け閉めの邪魔にならない位置を、事業者と相談します。
- 濡れた足の対策:浴室から出た足で脱衣所の床が濡れます。吸水性のあるマットを敷くときは、端が浮かず、足を引っかけないものを選びます。
- 出入口の段差と扉:段差は、次の5(床のかさ上げ)、扉は6(取替え)を見てください。

冬は、脱衣所や浴室の寒さも気をつけたい点です。高齢の方の入浴中の事故は、11月から4月の冬の時期を中心に多く起きています。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移り、熱いお湯につかると、血圧が大きく変動して体調を崩しやすいとされています。
- 入浴前に、脱衣所や浴室を暖める
- お湯の温度は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にする
- 浴槽から急に立ち上がらない
- 食後すぐの入浴や、飲酒後、薬を飲んだあとの入浴は避ける
- 入浴する前に、同居しているご家族に一声かけておく
浴室暖房の取付けは、住宅改修の6種類の工事には挙げられていません。浴槽のふたを開けておく、シャワーでお湯を張る、小型の暖房を置く、といった方法でも暖められます。くわしくは「お風呂の手すりと入浴用品の選び方」の「寒さによる事故を防ぐ」を見てください。
4. 滑りにくい床材に替える
浴室の床を、滑りにくいものに変える工事は、「滑りの防止や移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」の例として挙げられています。居室の畳を板張りやビニール系の床材に替える工事と同じ種類の工事です。床材を変えるための下地の補修や根太の補強も、付帯して必要な工事に含まれます。
床の状態によっては、置くだけの滑り止めマットで足りる場合もあります。工事と用具のどちらで解決するかは、浴室の状態を見て、事業者やリハビリ職と相談するのがおすすめです。
5. 段差を減らす:床のかさ上げ
浴室の出入口の段差や、洗い場と脱衣所の段差は、つまずきやすい場所です。段差の解消は、居室、廊下、便所、浴室、玄関などの各室の間の床の段差を解消する工事で、浴室の床のかさ上げが、具体例として挙げられています。かさ上げに伴う給排水設備の工事も、付帯して必要な工事に含まれます。
| 方法 | 介護保険での扱い |
|---|---|
| 浴室の床を、工事でかさ上げする | 住宅改修(段差の解消)の対象です。 |
| 置くだけの「浴室内すのこ」 | 住宅改修からは除かれ、福祉用具の購入(入浴補助用具)の対象です。 |
| 置くだけのスロープ | 住宅改修からは除かれ、福祉用具の貸与の対象です。 |
すのこは、安く、あとから外せる一方で、浴槽のまたぎ高さが変わる、水はけを考える、といった点があります。工事でかさ上げする場合は、排水の位置や、浴槽の高さとの関係があるため、事前に見積もりと図面で確かめます。
6. 扉の取替え:折れ戸・引き戸
浴室の扉が、開き戸で、杖や介助のときに引っかかる場合などに、引き戸、折れ戸(折戸)、アコーディオンカーテンなどへ取り替える工事が、対象になります。扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含まれます。扉の取替えに伴う、壁や柱の改修工事も、付帯する工事です。
引き戸にあわせて自動ドアにする場合は、自動ドアの動力部分は対象外です。扉の考え方は「ドアを引き戸に替える工事」にくわしくまとめています。
7. 対象にならないもの、福祉用具との使い分け
住宅改修の対象は、手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、それらに付帯して必要な工事の6種類です。浴槽の交換や、ユニットバス全体の入れ替えは、この中に挙げられていません。
浴室で、住宅改修ではなく、福祉用具の購入(入浴補助用具)になるものは、次のとおりです。
- 入浴用いす(シャワーチェア)
- 浴槽用手すり(浴槽の縁を挟んで固定できるもの)
- 浴槽内いす(浴槽内に置くもの)
- 入浴台(浴槽の縁にかけて、出入りを容易にするもの)
- 浴室内すのこ、浴槽内すのこ
- 入浴用介助ベルト
これらは、介護保険では、レンタルではなく購入です。購入費の限度額や自己負担は、「お風呂の手すりと入浴用品の選び方」にまとめています。なお、浴室などに固定して人を持ち上げる機器は、扱いが別になるため、ケアマネジャーに確認します。
8. 申請の流れ
- ケアマネジャーに相談する:浴室のどこで困っているか、どの工事を考えるかを伝えます。
- 事業者に見積もりを頼む:浴室の写真と、見取り図(寸法)を用意します。
- 理由書を作る:なぜその工事が必要かを、ケアマネジャーなどが書きます。
- 工事の前に、市区町村へ申請する:申請書、理由書、見積書、図面、写真などを出します。
- 承認のあと、工事を行い、工事後に、写真や領収書で完了を報告して、支給を受けます。
書類の書き方は「住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方」、写真の撮り方は「住宅改修の写真の撮り方」にあります。工事を先に済ませてしまうと、対象にならないことがあります。申請は、工事の前です。支給の限度額は、浴室以外の場所の工事も合わせて1人20万円までで、自己負担は1〜3割です(20万円の工事なら、保険給付は通常18万円)。上限まで使う必要はなく、必要な工事だけを選びます。
よくある質問
浴室の手すりを付ける工事は、介護保険の対象ですか
対象になります。手すりの取付けは、住宅改修の6種類の工事の1つで、廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などが挙げられています。手すりの形は、使う方の動きに合わせて選びます。手すりを付けるための壁の下地補強も、付帯する工事として含まれます。
浴室の床を、滑りにくいものに替える工事は、対象ですか
対象になります。浴室では、床材を滑りにくいものに変える工事が、「滑りの防止や移動の円滑化のための床の材料の変更」の例として挙げられています。床材を変えるための下地の補修も、付帯する工事に含まれます。
すのこを置くのは、住宅改修ですか
住宅改修ではありません。浴室の床の段差をなくすために置く浴室内すのこは、住宅改修の「段差の解消」からは除かれ、福祉用具の購入(入浴補助用具)の対象とされています。工事で、浴室の床そのものをかさ上げする場合は、住宅改修の対象になります。
シャワーチェアや浴槽台は、住宅改修ですか
住宅改修ではありません。入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台などは、福祉用具の購入(入浴補助用具)の対象とされています。購入の限度額や自己負担は、お風呂の手すりと入浴用品の記事にまとめています。
浴槽の交換や、ユニットバスへの入れ替えは、対象ですか
住宅改修の対象は、手すり、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、それらに付帯する工事の6種類で、浴槽の交換や、ユニットバス全体の入れ替えは、その中に挙げられていません。浴槽の取替えを含む工事を考えるときは、対象になる部分があるかどうかを、工事の前に、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認するのがおすすめです。
浴室の折れ戸を、引き戸に替えるのは対象ですか
対象になります。開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える、扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含まれます。
工事は、いつ申請しますか
住宅改修は、工事の前に申請(事前申請)が必要です。工事を先に済ませてしまうと、対象にならないことがあります。支給の限度額は、1人20万円までで、自己負担は1〜3割(所得に応じて)です。
出典・参考にした資料
- 厚生労働省の通知「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年老企第34号)第二:住宅改修の6種類の定義。手すりの取付け(浴室を含む)、段差の解消(浴室の床のかさ上げ、置くだけのスロープと浴室内すのこは除く)、滑りの防止の床材変更(浴室は滑りにくい床材)、引き戸等への扉の取替え、付帯して必要な工事(壁の下地補強、浴室の床のかさ上げに伴う給排水設備工事、床材の下地の補修)。第一の入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)と簡易浴槽 Web https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4381&dataType=1&pageNo=1(2026年10月確認)
- 厚生労働省の通知「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年老企第42号):事前申請、支給限度基準額20万円(保険給付は通常18万円) Web https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4385&dataType=1&pageNo=1(2026年10月確認)
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第3回 参考資料2、令和8年3月):住宅改修の種類、支給限度基準額20万円、保険給付の割合(原則9割、所得に応じて8割・7割) PDF https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001668164.pdf(2026年10月確認)
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」 Web https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042(2026年10月確認)
この記事は一般的な内容です。対象になるかどうかは、工事の内容と、ご本人の状況をもとに、市区町村が判断します。細かい扱いは、市区町村によって違います。工事の前に、担当のケアマネジャーや、お住まいの市区町村の窓口で、最新の内容を確認するのがおすすめです。