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車いすの選び方自走用と介助用の違い、体に合うサイズ、家で使うときの確認

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年9月17日/最終確認日:2026年9月17日

退院が近づいて「家でも車いすが必要」と言われたときや、長い距離を歩くのが難しくなってきたときに、「どの車いすを選べばいいのか」「家の中で本当に使えるのか」と迷うご家族は多いです。

車いすは、座ったまま移動するための道具であると同時に、ベッドから離れて過ごす時間を増やす「動けるいす」でもあります。体に合っていない車いすは、姿勢が崩れたり、こすれて皮膚を傷めたりする原因になります。

この記事では、車いすの種類と選び方、体に合うサイズの目安、家の中で使うときに確かめたい廊下や入口の幅、安全な使い方、介護保険での借り方をまとめました。

この記事のポイント
  • 車いすは大きく、自分でこぐ「自走用」と、介助する人が押す「介助用」に分かれる。自分でこげる場合は、自走用を検討するのが基本
  • 片方の手足に麻痺がある方は、麻痺のない側の手と足でこぐため、足が床に届く低めの座面が合うことが多い
  • 骨折や手術のあとは、脚を伸ばしておけるレッグサポートや、座面の高さの確認が必要なことがある
  • 家で使うときは、車いすの幅だけでなく、廊下を曲がって部屋に入れるかを確かめる
  • 乗り移りに介助が必要な方は、ひじ掛けが上がる車いすが便利。乗り移ったら、すぐに元に戻す
  • 介護保険のレンタルは、原則要介護2から。歩行器や杖と同時に借りるときは、市区町村によって理由書が必要なことがある

1. 車いすの種類

自走用(自分でこぐ車いす)

後ろに大きな車輪があり、座面の横にひじ掛け、足元にフットサポート、後ろに押し手のグリップが付いた自走用の車いすの図
自走用の車いす。後ろの大きな車輪を回して、自分で進めます

後ろに大きな車輪があり、その外側の輪(ハンドリム)を手で回して進みます。足で床をけって進むこともできます。後ろには押し手のグリップも付いていて、介助する人が押すこともできます。

向いている方:片手だけでも、手や足で少しでもこげる方。家の中の短い距離を自分で動きたい方

介助用(介助する人が押す車いす)

後ろの車輪が小さく、押し手のグリップに介助する人用のブレーキレバーが付いた、介助用の車いすの図
介助用の車いす。後ろの車輪が小さく、押し手にブレーキが付いています

後ろの車輪が小さく、ハンドリムが付いていない車いすです。自分ではこげませんが、全体が小さく軽いため、狭い場所で向きを変えやすく、車に積みやすいのが特長です。押し手のグリップに、介助する人用のブレーキが付いているものが多いです。

向いている方:自分でこぐことが難しい方。外出のときだけ使う方

姿勢を変えられる車いす(ティルト・リクライニング)

座面と背もたれが一緒に後ろに傾き、頭を支える枕と体の横を支えるパッド、角度を上げた足を乗せる台が付いた車いすを横から見た図
姿勢を変えられる車いす。座面ごと後ろに傾けたり、足を上げたりできます

座面ごと後ろに傾けられる(ティルト)、背もたれを倒せる(リクライニング)車いすです。座ったままでいると体が傾いたり、前にずり落ちたりする方や、長く座っていると疲れやすい方に使います。自走用・介助用のどちらにもありますが、大きく重くなります。

向いている方:座った姿勢を自分で保つのが難しい方。座っている時間が長い方

各部の大きさを調整できる車いす(モジュール型)

座面の高さや幅、ひじ掛けの高さなどを、体に合わせて調整したり、部品を交換したりできる車いすです。ひじ掛けや足を乗せる部分(フットサポート)を外したり、跳ね上げたりできるものは、ベッドとの乗り移りがしやすくなります。

ひじ掛けが上がる車いす(跳ね上げ式・取り外し式)

ひじ掛け(アームサポート)を後ろに跳ね上げたり、取り外したりできる車いすです。ひじ掛けがじゃまにならないので、ベッドやトイレ、ポータブルトイレとの間を、体を高く持ち上げずに横へずれるように乗り移れます。座ったまま板の上を滑って移る「スライディングボード」を使うときにも、ひじ掛けを上げられる車いすが必要です。

あわせて、足を乗せる部分(フットサポート)を外側に開いたり、取り外したりできるものを選ぶと、足を引いて立ちやすくなり、介助する人も体を近づけやすくなります。国の選び方の基準でも、乗り移りに介助が必要な場合は、ひじ掛けや足を乗せる部分が取り外せる・外に開けるものを選ぶと、安全で介助の負担も軽くなるとされています。

向いている方:立ち上がって向きを変えるのが難しい方。ベッドやトイレへの乗り移りに介助が必要な方

ひじ掛けを上げたままにすると、体の横を支えるものがなくなり、座っている方が横に落ちそうになることがあります。乗り移りが終わったら、すぐにひじ掛けを元に戻すことを習慣にしておくと安心です。ひじ掛けを上げる前に、ブレーキがかかっているかも確かめます。

電動車いす

座面の下にモーターとバッテリーが付き、右のひじ掛けの先に操作用のレバーが付いた電動車いすの図
電動車いす(レバーで操作するタイプ)。ひじ掛けの先のレバーで進む向きや速さを操作します

手元のレバー(ジョイスティック)で操作する車いすです。自分でこぐのが難しい方が、主に外を移動するために使います。自転車のようなハンドルで操作する「ハンドル形」(いわゆるシニアカー)もあります。電動車いすで重大な事故が起きていることが報告されていて、操作を安全に続けられるかの確認が必要とされています。選ぶときは、福祉用具専門相談員やリハビリの専門職と一緒に、実際に使う道で試すのがおすすめです。

国の選び方の基準でも、まったくこげない場合を除いては、使う場所に合った、自分でこげる車いすを検討するとされています。自分で動けることは、ご本人の「行きたいところに行ける」気持ちや、体を使う機会を保つことにつながるからです。

2. 体の状態別の選び方

車いすの種類やサイズ、こぎ方は、ご本人を実際に見ているリハビリの専門職の指導が最優先です。ここで紹介するのは一般的な目安です。入院中なら、病院のリハビリ職員に、退院後に使う車いすについて相談しておくのがおすすめです。

片方の手足に麻痺がある場合

脳卒中などで片方の手足に麻痺がある方は、麻痺のない側の手でハンドリムを回し、同じ側の足で床をけって方向を調整しながら進むことが多いです(片手片足でこぐ方法)。

骨折や手術のあと

脚の骨折や、股関節・膝の手術のあとに車いすを使う場合は、次の点を確かめておくと安心です。

座った姿勢が崩れやすい場合

座っていると体が横に傾く、前にずり落ちてくる場合は、サイズが合っていないか、クッションが合っていないことがあります。姿勢を支えるクッションや、ティルト・リクライニングの車いすを検討します。国の選び方の基準でも、このような場合は医師やリハビリの専門職に意見を求めることが望ましいとされています。

3. 体に合うサイズの目安

車いすのサイズを合わせる場所 車いすに座った高齢の女性を横から見た図。1は座面の前の端と膝の裏のすき間、2は床から座面までの高さ、3は肘を乗せるひじ掛けの高さを示している。 1 2 3 1 膝の裏とのすき間 2 座面の高さ 3 ひじ掛けの高さ
サイズを合わせるときに見る場所。座面の幅は、お尻の横とサイドガードの間に手のひらが入るくらいが目安です

車いすのサイズは、ふだん座る姿勢で、次のように合わせるのが目安です。実際には、福祉用具専門相談員などに採寸してもらいます。

場所目安合っていないと
座面の幅お尻の幅+3〜5cm(手のひらが、お尻の横とサイドガードの間に入るくらい)広すぎると体が傾き、こぐときに手が遠くなる。狭いと、こすれて皮膚を傷める
座面の奥行きお尻の後ろから膝の裏までの長さより、5〜7cmほど短い長すぎると膝の裏が当たり、お尻が前にずれて姿勢が崩れる
座面の高さ足でこがない方は、膝の下から床までの高さ+5〜8cm。足でこぐ方は、かかとまで床につく高さ高すぎると足でこげない。低すぎると、フットサポートが床に当たる
ひじ掛けの高さ肩の力を抜いて、肘を軽く乗せられる高さ高すぎると肩が上がり、低すぎると体が傾く

クッションも大切です。座っている時間が長い方や、やせていてお尻の骨が当たりやすい方は、床ずれを防ぐクッションを使います。クッションを敷くと座面が高くなるので、高さはクッションを敷いた状態で合わせます。

4. 家の中で使えるかの確認

車いすを選ぶときに見落としやすいのが、家の中で本当に通れるかです。車いすの幅は、JIS(日本産業規格)で70cm以下と決められていて、自走用ではおよそ60〜65cm前後のものが多く、介助用はそれより少し小さめです。

廊下と入口の幅

住宅の性能表示の基準でも、介助用の車いすで暮らしやすい家として、通路の幅78cm以上(柱の部分は75cm以上)、出入口の幅75cm以上(浴室は65cm以上)という目安が示されています。

入口の幅は、ドアを開けたときに実際に通れる幅で測ります。開き戸は、開いたドアの厚みやドアノブの分だけ狭くなります。

段差と床

家の中で車いすをどこで使い、どこに置いておくかは、間取り図に車いすを置いてみると確かめやすくなります。かんたん間取り図メーカーの車いすは、実物に近い大きさ(63×105cm)で置けます。

幅約80cmの廊下の間取り図。まっすぐ進む向きの車いすは廊下に収まるが、寝室の入口に向かって横向きにした車いすは、長さが約105cmあるため廊下の両側の壁にぶつかっている
かんたん間取り図メーカーで作った図。車いすの長さ(約105cm)は、よくある廊下の幅(約80cm)より長いため、廊下の途中で横向きになって部屋に入るのは難しくなります
理学療法士の視点から 家の中をすべて車いすで移動しなければいけない、というわけではありません。家の中は手すりや伝い歩きで歩き、外出や長い距離だけ車いすを使う方も多くいます(歩行器と一緒に借りるときの注意は6章)。車いすで通れない場所があるときは、「車いすで行ける場所まで行って、そこから少し歩く」「寝室をトイレに近い部屋に移す」など、使い方や部屋の使い方で解決できることもあります。退院前に家屋調査がある場合は、車いすで通れるかも一緒に確認してもらうのがおすすめです(記事「退院前の家屋調査とは?」)。

5. 安全な使い方と点検

乗り移りの介助の方法は、ご本人の体の状態によって大きく違います。ご家族が介助する場合は、入院中や退院前に、リハビリの専門職と一緒に練習しておくと安心です。

6. 介護保険でのレンタル

レンタルなら、体の状態が変わったときにサイズや種類を替えられ、点検もしてもらえます。まずは担当のケアマネジャー(まだ担当がいない方は地域包括支援センター)に相談するところから始めるのがおすすめです(記事「地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い」)。

関連ツール かんたん間取り図メーカー 実物に近い大きさの車いすを間取り図に置いて、廊下や入口を通れるか、どこで向きを変えられるかを確かめられます。

7. よくある質問

自走用と介助用、どちらを選べばよいですか?

自分で車輪を回して進む場面があるなら自走用、進むのは常に誰かが押すなら介助用が基本です。
迷いやすいのは、家の中では自分で動き、外出は家族が押す、という場合です。このときは自走用を選んでおくと、両方に使えます。介助用は車輪が小さく、幅も細いぶん、狭い家の中では取り回しやすいという利点があります。どこで、誰が動かすかを具体的に伝えると、福祉用具専門相談員が絞り込んでくれます。

家の中で車いすを使えるか、どこを測ればよいですか?

出入口の幅、廊下の幅、方向転換する場所の広さ、の3つです。とくに見落としやすいのが、まっすぐ通れても曲がれない、という場面です。
おおよその目安として、まっすぐ通るには車いすの幅より10cmほど広い出入口、直角に曲がるには1m前後の廊下幅が必要になることが多いです。実際には車いすの大きさで変わるため、家屋調査や福祉用具の相談のときに、間取りと寸法を伝えるのがおすすめです。

座面の幅は、大きめを選んだほうが楽ですか?

広すぎると、体が横に傾いて座る姿勢が崩れます。目安は、お尻の幅に左右合わせて5cmほど余裕がある程度です。厚着をする季節も考えて選びます。
奥行きは、座ったときにひざの裏と座面の先に指が2〜3本入るくらいが目安です。奥行きが長すぎると、ひざの裏が押されて浅く座るようになり、ずり落ちやすくなります。

クッションは必要ですか?

長く座る方ほど、あったほうがよいです。車いすの座面は布1枚のことが多く、そのままだと体が沈んで姿勢が崩れ、お尻の同じ場所に体重がかかり続けます。
床ずれの心配がある方、座っている時間が長い方は、体圧を分散するクッションが候補になります。車いす用のクッションは介護保険のレンタルの対象で、自己負担は1〜3割です。座る姿勢が崩れやすい方は、リハビリの専門職に見てもらうと合うものが選びやすくなります。

自分の車いすを買ったほうが安いですか?

使う期間によります。レンタルなら自己負担は月あたり数百円程度からで、体の状態が変わったときに交換でき、点検や修理も業者が行います。長く同じものを使い続けるとは限らない場面では、レンタルが向いています。
一方、体の形に合わせて作る車いすや、長期間ずっと同じものを使う見込みがある場合は、購入を検討することもあります。購入は介護保険の対象外(自費)になるため、まずレンタルで試してから考えるのが一般的です。

要介護1ですが、車いすは借りられませんか?

車いすは原則として要介護2以上が対象です。ただし、要支援・要介護1の方でも、日常的に歩くのが難しいなど、体の状態によっては例外として認められる場合があります。
判断は市区町村が行うので、まず担当のケアマネジャーに、外出できずに困っている場面を具体的に伝えるのがおすすめです。認められない場合は、自費でのレンタルや、歩行車など別の用具を検討することになります。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な考え方をまとめたものです。実際に合う車いすの種類やサイズ、使い方は、ご本人の体の状態や家の環境によって変わります。