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階段の上り下りが不安になったら安全な上り下りの基本と、寝室を1階に移すか考えるポイント

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年9月17日/最終確認日:2026年9月17日

寝室が2階にある家では、退院が近づいたときや、足腰が弱ってきたときに、「階段を毎日上り下りして大丈夫か」「寝室を1階に移したほうがいいのか」と迷うご家族が多いです。

この記事では、階段を安全に上り下りするための基本と、階段まわりの環境の見直し、寝室を1階に移すかどうかを考えるときのポイント、階段昇降機などの選択肢をまとめました。

この記事のポイント
  • 高齢の方の「落ちる」事故が最も多い場所は階段
  • 上り下りは手すりにつかまって1段ずつ。上りは良い脚から、下りは悪い脚から
  • 階段は、手すり・明るさ・滑り止めと、物を置かないことから見直す
  • 寝室を移すかは、夜中のトイレと1日に何回上り下りするかを中心に考える。国の指針でも、寝室とトイレは同じ階にあることが基本とされている
  • いす式の階段昇降機は、介護保険の対象外

1. 階段は「落ちる」事故が多い場所

東京消防庁の救急搬送のデータ(2024年)では、高齢の方が「落ちる」事故で救急搬送されたのは8,719人で、そのうち約半数の4,240人が階段での事故でした。階段から落ちると、平らな場所で転ぶよりも大きなけがにつながりやすくなります。

2階へ続くまっすぐな木の階段を下から見上げた図。右の壁に手すりがあり、段の端に滑り止めが付いている
家の中の階段。踏み外すと、下の段や床まで落ちて、大きなけがにつながることがあります

2. 安全な上り下りの基本

上り下りの方法や、手すり・杖の使い方は、ご本人を実際に見ているリハビリの専門職の指導が最優先です。入院中なら、退院前に階段の練習をしておくのがおすすめです。
滑り止めの付いた階段の途中で、高齢の女性が壁の手すりをつかみ、同じ段に両足をそろえて立っている図
手すりにつかまり、1段ごとに両足をそろえて下りる。段の端の滑り止めは、段の位置を見分けやすくします

手すりを付ける側

片側だけに付ける場合は、転びやすい「下り」のときにつかめる側が基本です。

上りと下りでは手すりが体の反対側になるため、両側にあると安心です。国の住宅の設計の指針でも、推奨する水準では両側とされています。高さの目安は、記事「手すりの高さの決め方」でまとめています。

3. 階段まわりの見直し

段の端の滑り止めのあり・なしの比較 同じ木の階段を下から見上げた2つの図。左は滑り止めがなく、段の端が同じ色で見分けにくい。右は段の端に濃い色の薄い滑り止めがあり、段の位置が分かりやすい。 滑り止めなし 滑り止めあり
段の端に、段と色の違う薄い滑り止めを付けると(右)、段の位置が見分けやすくなります

4. 寝室を1階に移すか考えるポイント

国の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」では、高齢の方の寝室と同じ階にトイレがあることを基本とし、さらに玄関、浴室、食事をする部屋なども同じ階にあることを推奨しています。毎日使う場所が1つの階にまとまっていると、階段を使う回数が減るからです。

寝室を移すかどうかは、次のような点から考えてみるのがおすすめです。

考えること確かめたいこと
夜中のトイレ夜中に何回トイレに起きるか。2階にトイレがない場合、寝ぼけた状態で暗い階段を下りることになる
上り下りの回数食事・トイレ・入浴で、1日に何回上り下りするか。朝は大丈夫でも、疲れた夕方や夜に安全か
見守り家族がどこで過ごしているか。1階なら、様子に気づきやすく、呼んだときに届きやすい
1階の部屋ベッドを置く広さがあるか、トイレに近いか、冷暖房があるか(記事「介護ベッドの置き場所」)
ご本人の気持ち慣れた部屋や、自分の物に囲まれた暮らしを続けたいか。家族の生活の音が気になるか

すぐに移さない場合の工夫

理学療法士の視点から 病院のリハビリで「階段を上り下りできた」ことと、「家で毎日安全に上り下りできる」ことは、同じではありません。リハビリの時間は体調のよい時間帯で、専門職がそばにいて、手すりも階段の形も家とは違います。家の階段の段の高さや手すりの位置、夜中に使うかどうかを伝えたうえで、階段を使ってよいか、どんな条件なら安全かを相談しておくのがおすすめです。

5. 階段昇降機などの選択肢

階段に沿って取り付けたレールに、いすが付いた階段昇降機があり、高齢の男性がシートベルトを締めて座り、足をフットレストに乗せている図
いす式の階段昇降機。介護保険の対象ではなく、費用は自己負担になります

6. 介護保険の使い方

まずは担当のケアマネジャー(要支援の方や、まだ担当がいない方は地域包括支援センター)に相談するところから始めるのがおすすめです(記事「地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い」)。

関連ツール かんたん間取り図メーカー 1階と2階の間取り図を重ねて描けます。寝室・トイレ・階段の位置を並べて、寝室をどこにするか考えるときに使えます。

7. よくある質問

手すりは、上りと下りのどちらに合わせて付けますか?

下りに合わせるのが基本です。階段の事故は下りるときに多く、下りるほうが怖さも大きいためです。
片方の手足に麻痺がある方や、片脚に痛みがある方は、下りるときに支えたい側が決まります。その側に手すりが来るように付けると、上りでは反対の手になりますが、危険の大きい下りを優先します。両側に付けられるなら、そのほうが確実です。

階段に滑り止めを付けたほうがよいですか?

段の先(段鼻)が見分けにくい階段では、滑り止めを兼ねた見やすいテープが役に立ちます。とくに、同じ色の階段や、照明が暗い階段では、段の境目が分からずに踏み外すことがあります。
ただし、厚みのあるものを段の上に貼ると、それ自体につまずくことがあります。段差ができない薄いタイプを選び、端がめくれてきたら早めに貼り替えます。

夜のトイレで階段を下りるのが心配です。

まず、階段の上下に照明のスイッチがあるかを確かめます。片方にしかない場合は、人が近づくと点く足元灯を置くだけでも変わります。
そのうえで、夜だけポータブルトイレを寝室に置く、寝室を1階に移すといった方法も検討できます。夜間は判断力も落ちやすいため、階段を使う回数そのものを減らせないかを考えるのがおすすめです。

階段昇降機は、介護保険で使えますか?

いす式の階段昇降機は、介護保険のレンタル・購入の対象外です。全額が自己負担になります。ただし、市区町村によっては独自の助成制度があるため、担当のケアマネジャーや市区町村の窓口に確認する価値があります。
一方、階段の手すりの取り付けは、介護保険の住宅改修の対象です(工事費20万円までを対象に、自己負担1〜3割)。まず手すりで足りるかを検討してから、次の手段として考えるのが一般的な順番です。

本人が手すりを使ってくれません。

「危ないから使って」と言うほど、本人は「まだ大丈夫」と感じて使わなくなることがあります。使わない理由が、必要ないと思っているのか、位置が合っていなくて使いにくいのか、で対応が変わります。
位置や高さが合っていないだけのことも多いので、まずは一緒に上り下りしてみて、手が自然に届くかを確かめるのがおすすめです。それでも使わない場合は、リハビリの専門職から説明してもらうと、受け入れられることがあります。

2階の部屋を使わないようにしたほうがよいですか?

階段を使う回数が減れば事故の心配は減りますが、本人の生活の中身も一緒に減ってしまうことがあります。2階に趣味の部屋がある、洗濯物を干す場所がある、といった場合、そこへ行かなくなることで、活動量も役割も減ります。
まずは、どうしても必要な用事だけ2階に残し、日常の動線は1階で完結するように整える、という順番で考えるのがおすすめです。本人が大事にしていることを取り上げない形にできないか、リハビリの専門職と一緒に検討できます。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な考え方をまとめたものです。階段を使ってよいか、どんな方法で上り下りするかは、ご本人の体の状態や家の造りによって変わります。