この記事は、ベッドで横になる時間が長い方、または車いすに座って過ごす時間が長い方を、ご自宅で介護しているご家族に向けて書きました。床ずれ(医療の言葉では「褥瘡(じょくそう)」)は、圧迫と、ずれと、栄養が関わってできるキズです。「毎日、どこを見ればよいのか」「体位変換は何時間ごとか」「マットレスはどう選ぶのか」といった疑問に、日本褥瘡学会の資料をもとに答えます。
床ずれは、正しく知って、早く気づけば、防げることが多いキズです。むやみに不安にならず、毎日の暮らしの中でできることから、整えていきましょう。
- 床ずれは、骨が出っ張って、体の下になる場所にできやすい。皮膚の表面より、奥のほうにダメージが強いことがある
- できる原因は、圧迫・ずれ・栄養。背上げのあと、体が下へずり落ちたときや、車いすで姿勢が崩れたときに、ずれが起こる
- 体位変換は、基本的に2時間を超えない範囲とされています。ただし、マットレスの種類や、ご本人の状態で違うので、訪問看護師や医師に決めてもらう
- 床ずれ防止のマットレスや、体位変換器は、介護保険で借りられます(原則、要介護2以上)
- 皮膚の赤みが消えない、周りと比べて硬い・ぶよぶよ柔らかい、食べる量が減ったなどは、早めに訪問看護師やかかりつけ医へ
1. 床ずれとは、できやすい場所
床ずれは、一日のほとんどをベッドで過ごす方や、車いすで過ごす時間が長い方に、できやすい、圧迫とずれが原因のキズです。骨が出っ張っていて、体の下になる場所にできやすくなります。
- ベッドで仰向けのとき:後頭部、肩甲骨のあたり、肘、お尻の中央の骨(仙骨・尾骨)、かかと。背中が丸い方(円背)は、背骨のところも。
- 横向きのとき:耳、肩、腰の横の出っ張り(大転子)、膝の外側の骨の出っ張り(腓骨頭)、外側のくるぶし。
- 車いすやいすに座っているとき:背中、お尻の骨(坐骨)、尾骨、かかと。
床ずれの特徴
- 皮膚の表面より、見えない奥のほうに、ダメージが強く及んでいることがあります。
- 初期のサインは、皮膚が赤い、紫色や暗い色になる、周りの皮膚と比べて硬い、または泥のようにぶよぶよと柔らかい、温かい、冷たい、などです。痛みを伴うこともあります。
- 治療の開始が遅れると、治るのに時間がかかります。しっかり治療すれば、治るキズです。
2. できる原因:圧迫・ずれ・栄養
圧迫
同じ姿勢で長く寝ていると、骨が出っ張った所とベッドのあいだで、同じ場所が長く押されて、血液の流れが妨げられます。寝たきりになると、食事の量が減り、動かないことで筋肉も減って、骨がさらに出っ張ってきます。
ずれ
電動ベッドで背上げをしたあとに、体が下へずり落ちることはありませんか。このとき、腰や背中には、ずれの力がかかっています。ずれは、背上げをするときだけでなく、背上げのあとで水平に戻すときにも起こります。ベッドの上で横へ動かすとき、ベッドから車いすへ移すとき、車いすで姿勢が崩れたときにも起こります。
ずれがあると、皮膚と、皮膚の下の組織が、水平方向に強く引っ張られて、ダメージを受けます。そのため、弱い圧でも、床ずれができてしまいます。
栄養
食べる量が減ると、脂肪や筋肉が減って、骨がさらに出っ張り、圧迫やずれの影響を受けやすくなります。ダメージを受けた組織が治るには、材料になるたんぱく質と、エネルギーが必要です。
3. 毎日の見方
骨が出っ張った場所の皮膚に、変化がないか、毎日、気にかけます。着替えや、おむつの交換、入浴のときが、見るきっかけにしやすいときです。
- 見る場所:お尻の中央(仙骨・尾骨のあたり)、かかと、背骨(背中が丸い方)。車いすに座る時間が長い方は、お尻の骨(坐骨)のあたりも。
- 見ること:皮膚が赤くなっていないか。時間がたっても、赤みが消えないか。皮膚がむけていないか。周りの皮膚と比べて、触ると、硬い所、ぶよぶよと柔らかい所、温かい所、冷たい所がないか。かさぶたができていないか。
- 当てはまるときは、様子を見ずに、訪問看護師やかかりつけ医に伝えます(7章)。
床ずれのできやすさを知る目安
日本褥瘡学会のパンフレットでは、床ずれのできやすさを知る方法として、OH(大浦・堀田)スケールが紹介されています。次の4つを見ます。1点でもつくと、床ずれになりやすい方で、点数が高いほど、なりやすいとされています。
- ベッドの上で、寝返りができるか(動けない方が、いちばん点が高い)
- お尻の骨の出っ張り具合
- 足の甲やすね、背中などのむくみ
- 関節が硬くなって、手足を伸ばしにくい(関節の拘縮)
点数の付け方や、マットレスの選び方は、訪問看護師や、リハビリの担当者に、実際に見てもらって決めるのがおすすめです。
4. 体位変換と、ずれの減らし方
体位変換の間隔と、方法
長い時間、同じ所が圧迫されないように、定期的に体位変換(体の向きを変えること)を行います。日本褥瘡学会は、間隔について、次のように示しています。
- 基本的に、2時間を超えない範囲で行います。
- ただし、マットレスの種類や、骨の出っ張り具合で、個人差があります。粘弾性フォームマットレスや、上敷きの二層式エアマットレスなどを使う場合は、4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています。
夜の体位変換が、介護する方の大きな負担になることがあります。間隔は、ご本人の状態と、マットレスの種類で変わるので、決め方を、訪問看護師や医師に相談するのがおすすめです。
- 30度側臥位:体を真横ではなく、斜め(30度くらい)に向けると、骨の出っ張りがない、お尻の大きな筋肉(殿筋)で体重を受けられます。クッションを使って、広い面積で支えます。30度は、あくまで目安で、個人差があります。
- できれば2人で行うとされています(転落、摩擦、ずれを防ぐため)。1人で行うときは、体の部分を、少しずつ動かします。滑りやすいシート(スライディングシート)を使う方法もあります。
- 体位変換のあとは、寝衣のしわを伸ばして、圧迫が生じないように整えます。
ずれを減らす工夫
- 背上げをしたあと、背中や腰に、ずれやしわが残りやすくなります。背上げや背下げのあとに、体の下のしわを伸ばし、ずれの力をとる方法(背抜き)があります。滑りやすいグローブ(スライディンググローブ)で、体の下をなでると、体の下にたまったずれが取り除けるとされています。
- 持ち上げず、滑らせて動かす:スライディングシートなどを使うと、摩擦やずれを減らせます。介助する人の腰への負担も減ります(介護する人の腰痛予防)。
- おむつの交換:尿取りパッドを、引っぱって取り出すと、お尻の骨のあたりに、強い摩擦とずれがかかります。おむつをゆるめてから交換します。
- 濡れたおむつは、早めに:排尿後に長く着けていると、皮膚がふやけて弱くなります。濡れたおむつで座ると、硬くなったおむつで圧迫され、姿勢も崩れてずれます。排尿のパターンを知って、量に合ったおむつにして、排尿後はなるべく早く交換します。
- 車いすの姿勢:車いすが体に合っていないと、前に滑って、お尻の骨のあたりと、かかとにずれが起こります(車いすの選び方)。
5. マットレスとクッション、借りられる用具
マットレスの考え方
体圧分散寝具(床ずれ予防のマットレス)は、体が沈み込んだり、包み込まれたりして、出っ張った場所にかかる圧を低くします。使うと、床ずれの発生率を下げられるとされています。種類は、ご本人の床ずれのリスク、好み、介護の環境を考えて選びます。次のような目安があります。
| ご本人の状態 | マットレスの考え方の目安 |
|---|---|
| 床ずれのリスクが 軽い方 | 厚さ8〜9cmのウレタンマットレスが勧められる。寝返りがしやすい程度のもの |
| 中くらいの方 | ご本人の状態に加えて、介護する方が、体位変換などをどこまでできるかも考えて、選ぶ |
| 自分で体位変換が できない方、 リスクが高い方 | 圧が切り替わるエアマットレスなど、高機能のものが勧められる |
エアマットレス
エアマットレスは、空気の入った管で、体を支えるマットレスです。電動のポンプ(送風装置)で、空気の入る場所が切り替わり、体にかかる圧が時間で変わるタイプ(圧切替型)などがあります。日本褥瘡学会は、自分で体の向きを変えられない方には、圧切替型のエアマットレスを使うことを勧めています。また、骨の出っ張りがある高齢の方には、二層式などの多層式のエアマットレスが勧められています。
- 介護保険の「床ずれ防止用具」として、借りられます(原則、要介護2以上)。
- 空気の量や、硬さの設定は、体重や体の状態に合わせる必要があります。事業所や訪問看護師に、合わせてもらいます。
- エアマットレスの上でも、体位変換と、皮膚の観察は必要です。マットレスの種類によって、体位変換の間隔が変わります(4章)。
- やわらかいマットレスの上では、寝返りや、端に座ることが、しにくくなる場合があります。ご本人が自分で動ける方は、リハビリの担当者にも、相談します。
関節が曲がったまま固まっている方(拘縮)は、体の向きを支える体位保持クッションを上手に使う方法もあります。自己流の対策は、効果がないことが多く、かえって床ずれをできやすくすることもあるとされています。身近な訪問看護師に、相談するのがおすすめです。
車いすのクッション
車いすに長く座る方は、必ず座るとき用の、床ずれ予防クッションを使います。座面の高さ、肘掛けの高さ、背中のカーブが、体に合っていると、姿勢が崩れにくく、ずれも起きにくくなります。
介護保険で借りられるもの
| 用具 | 内容 |
|---|---|
| 床ずれ防止用具 | 送風装置などを備えた空気マット、水などで体圧を分散する全身用のマット。借りる(原則、要介護2以上) |
| 体位変換器 | 体の下に入れて、向きを変えやすくするもの。借りる(原則、要介護2以上) |
| 特殊寝台・付属品 | 介護ベッドと、マットレス、スライディングボードなどの付属品。借りる(原則、要介護2以上。介護ベッドの選び方) |
| 車いす・付属品 | 車いすと、クッションなどの付属品。借りる(原則、要介護2以上) |
要支援1・2、要介護1の方は、原則として対象外ですが、日常的に寝返りが困難な方は、床ずれ防止用具と体位変換器を、例外として借りられます。くわしくは、福祉用具のレンタルと、福祉用具の早見表にまとめています。
6. 栄養と皮膚のケア
栄養
床ずれの予防では、低栄養を避けることが基本とされています。食事の量が足りていても、肉、魚、大豆製品、たまご、乳製品など、たんぱく質の食品がとれているかを、見直します。食べる量が減ってきたときは、日本褥瘡学会の資料でも、医師や看護師に伝えるよう、案内されています。
皮膚のケア
- 尿や便で、皮膚がぬれたままにしない:皮膚がふやけると、床ずれにつながりやすくなります。洗ったあとは、皮膚を守るクリームなどを塗る方法があります。
- ゴシゴシこすらない:優しく丁寧に洗います。石けんは、よく泡立てて使い、十分に洗い流します。
- 乾燥を防ぐ:高齢の方の皮膚は弱く、骨の出っ張った所は、摩擦を受けやすくなっています。保湿クリームなどで、乾燥を防ぎます。
骨の出っ張った所に、摩擦を減らすテープやドレッシング材を貼る方法もあります。貼る場所と、材料は、訪問看護師や医師に決めてもらいます。
7. 早めに相談したいサイン
- お尻やかかとなど、ベッドや車いすに触れる部分の皮膚が赤くなり、時間がたっても、赤みが消えない
- 皮膚がむけた。赤い所を触ると、周りと比べて、硬い、またはぶよぶよと柔らかい
- お尻などに、かさぶたができた。かさぶたがあって、高い熱が出てきた(早めに受診)
- 食べる量が減った。ここ2〜3日、食べる量が減ってきた
- 寝てばかりになった。ぼんやりしている。ここ数日で、急に動かなくなってきた
- ここ1〜2日、水分をとらなくなって、おしっこの量が減った
これらは、日本褥瘡学会のパンフレットで、床ずれができているか、できやすい状態を示す危険信号としてあげられているものです。担当の訪問看護師や、かかりつけ医がいないときは、担当のケアマネジャーに相談すると、つないでもらえます。
寝たきりにならないために
床ずれは、寝たきりになると、できやすくなります。日中、ベッドから離れて過ごす時間が、予防にもつながります。座る、立つ、好きなことをする、役割をもつ、といった暮らしの中の動きが、体を動かす機会になります。訪問リハビリを受けて、家の中でできる動きを、教えてもらう方法もあります(訪問リハビリと通所リハビリの違い、親が出かけなくなったら)。
よくある質問
床ずれを防ぐために、体位変換は何時間ごとに行えばよいですか
日本褥瘡学会は、基本的に2時間を超えない範囲で行うとしています。ただし、床ずれ予防のマットレスの種類や、骨の出っ張り具合によって、個人差があります。粘弾性フォームマットレスや、二層式のエアマットレスなどを使う場合は、4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています。間隔の決め方は、訪問看護師や医師に相談するのがおすすめです。
エアマットは、介護保険で借りられますか
借りられます。「床ずれ防止用具」という種目で、送風装置などを備えた空気マットや、水などで体圧を分散する全身用のマットが対象です。原則として要介護2以上の方が対象ですが、日常的に寝返りが困難な方は、要支援1・2や要介護1でも、例外として借りられます。
車いすで過ごす時間が長い場合も、床ずれはできますか
できます。日本褥瘡学会のパンフレットでは、車いす生活の方にも、床ずれができやすいことが示されています。特に、車いすが体に合っていなかったり、クッションが合っていなかったりして、前に滑るような姿勢になると、お尻の骨のあたりやかかとに、ずれが起こり、床ずれができやすくなります。座るとき用の、床ずれ予防クッションを使うことが勧められています。
食欲がないときは、どうすればよいですか
食べる量が減ると、筋肉や脂肪が減って骨が出っ張り、床ずれができやすくなります。ダメージを受けた組織が治るにも、たんぱく質とエネルギーが必要です。食べる量が減ってきたときは、日本褥瘡学会の資料でも、医師や看護師に知らせるよう案内されています。食べる工夫や、栄養の補い方は、かかりつけ医や、管理栄養士に相談するのがおすすめです。
皮膚が赤くなっていたら、どうすればよいですか
時間がたっても赤みが消えない、皮膚がむけた、周りと比べて触ると硬い、またはぶよぶよと柔らかい、かさぶたができた、といったときは、床ずれができているか、できやすい状態です。日本褥瘡学会のパンフレットでは、すぐに訪問看護師やかかりつけ医に診てもらうよう案内されています。床ずれは、ご本人が痛みを感じにくいこともあるので、ご家族が毎日、皮膚を見ることが大切です。自己流の対策は、かえって床ずれをできやすくすることもあるとされています。
出典・参考にした資料
- 日本褥瘡学会 在宅医療委員会「床ずれ(褥瘡)予防パンフレット」(2018年):床ずれの特徴、圧迫・ずれ・栄養の3つの原因、背上げのあとのずれ、OH(大浦・堀田)スケールの4項目、マットレスの目安、スライディングシートやグローブ、おむつ交換の注意、車いすのクッション、相談したいサイン。2026年10月確認 リンク
- 日本褥瘡学会「褥瘡状態評価スケール DESIGN-R 2020 コンセンサス・ドキュメント」:深部損傷褥瘡(DTI)の触診(硬結、泥のような浮遊感、皮膚温の変化)、紫色や栗色への変色、疼痛。2026年10月確認 リンク
- 日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」(一般・福祉関係の皆様向けページ):体位変換の方法と時間間隔(2時間を超えない範囲、マットレスによっては4時間)、30度側臥位、体圧分散寝具、栄養、スキンケア。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(令和8年3月)、「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」:床ずれ防止用具、体位変換器、車いすの付属品が貸与の種目であること、軽度者の例外(日常的に寝返りが困難な方)。2026年10月確認 リンク
この記事は一般的な内容です。床ずれのできやすさや、体位変換の間隔、マットレスの選び方は、ご本人の状態によって違います。皮膚に変化があるときや、迷うときは、訪問看護師、かかりつけ医、担当のケアマネジャーに、相談するのがおすすめです。