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食事の姿勢は、むせる前から見直そう姿勢が少しずつ崩れてきた親の食事。車いす・ベッドでの整え方と、口のケア、相談の目安

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月10日/最終確認日:2026年10月10日

この記事は、車いすやベッドで過ごす時間が増え、食事の姿勢が少しずつ崩れてきた親を介護しているご家族に向けて書きました。まだむせることがない段階から、役立てていただけます。

食事の姿勢は、飲み込みやすさや、食べる量、疲れやすさに関わるとされています。ご家族が整えられる姿勢のポイントと、口のケアの最低限、専門職に相談する目安をお伝えします。

この記事のポイント
  • 食事の姿勢を整えると、食欲、栄養状態、誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクによい影響が期待されています
  • むせなくても、誤嚥していることがあります。体重が減る、食後に声がかれるなどの変化が、サインの例です
  • 車いすでは、足の裏がつく、お尻が奥まで入る、体が傾かない、あごが引けていることを見ます
  • ベッドでは、背を上げる前に位置を直し、足元(膝)を先に上げてから背を上げます。頭と首が反らないよう、クッションで支えます
  • 口のケアは、食前・食後・就寝前に、できる範囲で続けることがおすすめです
  • むせが続く、熱が続く、体重が減るときは、かかりつけ医やケアマネジャーに相談します

1. 姿勢は、むせる前から食事に関わります

少しずつ崩れる姿勢と、気づきにくい変化

車いすやベッドで過ごす時間が長くなると、気づかないうちに姿勢が少しずつ崩れてくることがあります。お尻が座面の前にずれる、体が左右に傾く、あごが上がって首が後ろに反る、といった変化です。

食事のときの変化としては、食事に時間がかかる、食べこぼしが増えるといったことがあります。食後に声がかれる、体重が少しずつ減るといった変化も、うまく飲み込めていないサインの例とされています。

むせない誤嚥と、姿勢を整える目的

食べ物や水分が食道ではなく気管に入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。気道を守る反射が弱くなっていると、気管に入ってもむせないことがあります(不顕性誤嚥)。むせていないから大丈夫、とは限りません。

食事の姿勢を整えることは、食欲を増やし、栄養状態を保ち、誤嚥のリスクを減らすことにつながると期待されています。むせる前から見直しておくことがおすすめです。

2. こんなときは、相談や受診を

食べ物がのどに詰まったとき

苦しそうにしている、顔色が悪い、声が出せない、のどをつかむ動作をしている、というときは窒息のサインです。声が出せず、強い咳もできないときは、窒息と判断して、周囲に大声で助けを求め、119番通報を頼みます。近くに誰もいないときは、自分で119番に通報します。

窒息のときの応急手当
  • 助けを呼び、119番通報を頼みます。並行して、次の手当てを行います
  • 背部叩打法:手のひらの付け根で、左右の肩甲骨の間を、数回以上、力強く叩きます
  • 出てこなければ、腹部突き上げ法:上腹部を、手前上方へ強く突き上げます。内臓を傷める可能性があるため、行ったら救急隊に伝えるか、速やかに診察を受けます。乳児・妊婦・高度肥満の方には行いません
  • 反応がなくなったら、直ちに心肺蘇生を始めます

食べ物の窒息で亡くなる方の多くは、高齢の方です。令和4年には、気道がふさがる食物の誤えんによる死亡4,696人のうち、9割以上が65歳以上でした。高齢の方では、自分で食べていること、入れ歯をつけていても奥歯でかめないことなどが、窒息のリスクとして挙げられています。自分で食べる楽しみは続けながら、ひと口の量やペースをさりげなく見守り、入れ歯が合わないときは歯科に相談するのがおすすめです。

専門職に相談する目安

緊急ではなくても、次のような様子が続くときは、まずはかかりつけ医に相談することがおすすめです。ケアマネジャーに伝えると、必要に応じて、言語聴覚士などの専門職につないでもらえます。

食べ物の形や、リクライニングの角度は、専門職に相談します

むせが増えると、食べ物を細かくしたり、とろみをつけたりしたくなるかもしれません。ただ、その方に合う食べ物の形、とろみの程度、リクライニングの角度などは、飲み込みの機能の評価をもとに決めるとされています。かかりつけ医やケアマネジャーに様子を伝えて、必要に応じて言語聴覚士などの専門職に相談するのがおすすめです。

3. 車いすで食べるときの姿勢

基本の座り方を、足元から順に見る

車いすで食べるときは、次の点を見ます。姿勢が安定すると、誤嚥しにくくなるとされています。

車いすで食卓につき、スプーンで食事をする高齢の女性と、横で見守る娘
足の裏がフットサポートにつき、お尻が奥まで入り、体が傾かず、あごが軽く引けている座り方

車いすの選び方は、車いすの選び方|自走用と介助用の違いもご覧ください。

いすに乗り移れる方は、食卓のいすに座りかえる方法もあります

車いすからいすへの乗り移りができる方は、食卓のいすに座りかえて食べるのもおすすめです。背もたれのあるいすに深く腰かけ、いすの高さは膝が90度に曲がるくらいで、足の裏が床につく高さが目安です。乗り移りの方法は、リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。

崩れてきたときの直し方

食事の途中で体がずり落ちたり、傾いたりしたときは、いったん座り直すことがおすすめです。ご本人が自分で動ける部分は生かし、お尻を奥に引くなど、むずかしいところだけをそっと手伝います。

片麻痺のある方は、傾く側にクッションやタオルを入れると、体が支えられます。骨折や脚の痛みで姿勢が崩れやすい方も、痛い側を避けて、無理のない位置にクッションを入れて支えます。背中が丸い(円背)方は、骨粗しょう症と骨折予防の座り方も参考になります。首が反ってしまうときは、頭の後ろにクッションを入れて、あごを引きやすくする工夫があります。

リクライニングやティルト(座面ごと後ろへ傾ける)の機能がある車いすの角度は、専門職がその方に合わせて決めます。リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。

4. ベッドで食べるときの姿勢(ポジショニング)

できれば、ベッドから離れて食べます

食事は、できるだけベッドから離れて、いすや車いすで食べることが大切とされています。ベッドの背上げ機能だけで体を起こすと、体が足側にずれ、頭をしっかり起こせず、誤嚥しやすい姿勢になることがあります。実際に、足側にずり落ちた姿勢のまま食事を介助して、誤嚥しそうになった事例が報告されています。

体調などで、やむを得ずベッドで食べるときは、次の手順がおすすめです。ベッドの選び方は、介護ベッドの選び方もご覧ください。

姿勢づくりの手順

  1. 寝ている位置を直します:ベッドを平らにして、腰がベッドの折れ曲がる位置に合うように、頭の側へ体の位置を直します。ご本人の力を借りて、できる範囲でずれてもらいます
  2. 足元(膝)を先に上げます:足元が上がると、お尻がそれ以上、足側へずれにくくなります
  3. 背を上げます:適した角度は一人ひとり違い、体調でも変わります。専門職と相談して決めるのがおすすめです。一般には30〜60度の範囲とされています
  4. ずれたら、いったん平らに戻します:背を起こすと、お尻が足側にずれることがあります。ご家族が持ち上げて直すのは、腰への負担が大きく、危険が伴います。ベッドを平らに戻し、ご本人の力を借りて頭の側へ直してから、もう一度、足元から上げ直すのがおすすめです
  5. 頭と首を支えます:肩から頭にかけて枕やクッションを入れ、首が後ろに反らないようにします。頭がまっすぐで、少し下向きになる位置です
  6. 左右の傾きと足を見ます:体が傾くときは、枕やタオルで支えます。足の裏にクッションをあてて、足がずり下がらないようにします
介護ベッドで体を起こして食事をする高齢の男性と、横に座って視線の高さを合わせて介助する介護職の女性
足元が上がり、頭と首がクッションで支えられている。介助する人は座って、視線の高さをそろえる

ずれを減らす工夫は、床ずれ(褥瘡)の予防の記事でも紹介しています。

介助する人の位置と目線

食べさせる側の位置も大切です。立ったまま上から食べさせると、ご本人は斜め上を見ることになり、あごが上がって、誤嚥しやすくなります。介助する人は、座るなどして視線の高さをそろえることがおすすめです。頭がまっすぐで少し下向きになり、食べ物も見えやすくなります。

5. 食べる前の準備と、食事中のペース

食べる前の準備とペース

食事の前に、体を起こして姿勢を整えておきます。口が乾いていると飲み込みにくいため、口の中を潤してから食べ始めます。テレビを消すなど、食事に集中できる環境がおすすめです。

食べるときは、急がず、ゆっくり。少しずつ口に入れ、口の中のものを飲み込んでから、次を入れます。ご本人が自分で食べる楽しみは、できるだけ続けられるように、見守れる部分は見守ります。

疲れたら、休みます

食べる時間が長くなると、ご本人が疲れて、姿勢が崩れやすくなります。疲れが見えたら、無理せずに休むことがおすすめです。姿勢を保つのが苦しそうなときは、座り直しを手伝います。ご家族も、頑張りすぎないことが大切です。食事に時間がかかる、疲れてしまうという様子が続くときは、専門職に伝えてみてください。

理学療法士の視点から 現場でとても多いのは、車いすでお尻が前にずれて、骨盤が後ろに倒れ、背中が丸くなった座り方(仙骨座り)です。片側に傾いたまま食べている方も多くいらっしゃいます。ベッドでは、足側にずれる、斜めになる、頭が反るという崩れ方をよく見ます。 もうひとつ多いのが、食事に時間がかかり、途中で疲れて姿勢が崩れることです。始めはよい姿勢でも、後半で崩れていきます。食事の途中で一度、足・お尻・傾き・頭と首を見て、座り直しや休憩をはさむことをおすすめします。 とくに、頭と首の角度は、食べやすさに大きく関わります。あごが上がっていないか、首が反っていないかを、まず見てほしい場所です。撮れるときは、食事中の姿勢を横から写真や動画で撮っておくと、専門職に見せて相談しやすくなります。どのクッションをどこに入れるかは、体の状態によって一人ひとり違うので、リハビリ専門職に相談してみてください。

6. 口のケア:最低限やりたいことと、大切な理由

なぜ、口のケアが大切なのか

口の中には、300種類を超える細菌がいるとされています。ふだんはほとんど害になりませんが、誤嚥で肺に入ると、肺炎の原因になることがあります。また、口の中が汚れていると、食べ物の硬さや大きさが伝わりにくくなり、それも誤嚥の原因になるとされています。

日本の介護施設での研究では、毎食後の歯みがきと、週1回の専門職によるケアで、肺炎が少なかったと報告されています。ただし、研究を集めた分析では、研究の質が高くないとされています。口の中を清潔にすることは、肺炎の予防に役立つとされていますので、できる範囲で、続けることがおすすめです。

口の中は外から見えにくく、ご本人が訴えないと、汚れたままになりがちです。ふだんから、ときどき口の中を見てみるのがおすすめです。

最低限やりたいこと

汚れやすいのは、上あご、歯列の外側(歯と頬・唇の間)、歯と舌の間、義歯(入れ歯)の内側、舌、麻痺のある側です。ここを意識して見ます。

介助磨きのコツと、相談先

歯みがきを手伝うときは、座った姿勢(ベッドの方は、背を起こした姿勢)で行うのがおすすめです。歯ブラシは、ペンを持つように(ペングリップ)軽く持ち、弱い力で1〜2本ずつ磨きます。時間がかかり、ご本人も口を開け続けて疲れるので、一度に完璧を目指さないのがコツです。自分でできる部分は、ご本人にしてもらい、むずかしいところだけを手伝います。

いすに座った高齢の男性の歯みがきを、低いいすに座って視線の高さを合わせて手伝う娘
座った姿勢で、介助する人も座って視線の高さをそろえ、歯ブラシを軽く持って磨く

入れ歯の手入れや、口を開けてくれないなど、むずかしいときは、歯科医師や歯科衛生士に相談するのがおすすめです。自宅に来てもらえる訪問歯科もあります。

7. 相談先と、誰に何を聞けるか

どの専門職に、何を相談できるか

食事の姿勢や飲み込みで悩んだときは、いくつかの専門職に相談できます。介護・リハビリに関わる職種ガイドでも紹介しています。

退院のときや、サービスを使うときに伝える

病院から家に戻るときは、病院での食事の姿勢や工夫を、家でも続けられるように教えてもらうのがおすすめです。脳卒中のあとの暮らしは、脳卒中の親が退院するときもご覧ください。

訪問リハビリや通所リハビリを使うときも、家での食事の姿勢で困っていること、むせやすくなったことを、リハビリ専門職やケアマネジャーに伝えてみてください。訪問リハビリと通所リハビリの違いと選び方もご覧ください。

よくある質問

以前はむせなかったのに、ときどきむせるようになりました。様子を見てもよいですか?

かかりつけ医に、早めに相談するのがおすすめです。ケアマネジャーに伝えると、必要に応じて、言語聴覚士などの専門職につないでもらえます。「以前はむせなかったのに、ときどきむせるようになった」は、飲み込みの様子を見直すサインの例とされています。
いつから、どんな食べ物でむせるか、食後に声がかれないかなどをメモして伝えると、専門職が状況をつかみやすくなります。

ベッドで食べるとき、背中は何度に起こせばよいですか?

適した角度は一人ひとり違い、体調によっても変わるため、専門職と相談して決めるのがおすすめです。背もたれを30〜60度の範囲で調整するとされています。
背を上げる前に位置を直し、足元(膝)を先に上げて、肩から頭にクッションを入れて首が反らないようにすることも、あわせて大切とされています。

食事の途中で、体がずり落ちてきます。どうすればよいですか?

車いすやいすでは、いったん座り直し、お尻を奥に引いて、足の裏が床かフットサポート(足を乗せる部分)についているかを見るのがおすすめです。
ベッドでは、背を上げる前に位置を直し、足元(膝)を先に上げます。足の裏にクッションをあてる方法もあります。ずれたら、ご家族が持ち上げず、ベッドを平らに戻して、ご本人の力を借りて頭の側へ直します。それでも崩れるときは、クッションの使い方を、リハビリ専門職に相談してみてください。

口の中を磨かせてくれません。どうすればよいですか?

無理に開けさせず、歯科医師や歯科衛生士に相談するのがおすすめです。自宅に来てもらえる訪問歯科もあります。
自分でできる部分はご本人に任せ、むずかしいところだけ手伝います。一度に完璧に磨こうとせず、座った姿勢で、軽い力で1〜2本ずつ磨くのがコツです。

食事中に、むせて苦しそうです。どうすればよいですか?

声が出せず、強い咳もできないときは、窒息と判断します。周囲に大声で助けを求め、119番通報を頼みます。並行して、手のひらの付け根で左右の肩甲骨の間を、数回以上、力強く叩きます(背部叩打法)。
出てこなければ、腹部突き上げ法を行い、行ったら救急隊に伝えます。反応がなくなったら、直ちに心肺蘇生を始めます。くわしくは、この記事の「こんなときは、相談や受診を」の章をご覧ください。

出典・参考にした資料

最新の情報は、かかりつけ医、ケアマネジャー、各相談窓口で確認するのがおすすめです。姿勢や食事の方法は、リハビリ専門職や言語聴覚士の指導があれば、そちらを優先します。