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介護ベッドの選び方ご本人の動きから決める。借りる前に、事業所へ伝えたいこと

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月7日/最終確認日:2026年10月7日

この記事は、退院や要介護認定をきっかけに、介護ベッドを借りること(または買うこと)を考えているご家族と、その相談を受けるケアマネジャーに向けて書きました。「モーターは何個がよいのか」「柵は付けたほうがよいのか」「家具店の電動ベッドとは何が違うのか」といった疑問に答えます。

選ぶときは、機能の数から入るより、ご本人の動き(寝返る、起き上がる、座る、立つ)から入ると、迷いにくくなります。事故を防ぐために確かめておきたいことも、後半にまとめました。

この記事のポイント
  • 介護保険で借りられるのは、サイドレールを付けられ、背上げ・脚上げか、高さの調整ができるベッド(特殊寝台)。原則は要介護2以上で、介護保険では借りて使う仕組み(貸与)
  • 選ぶ順番は、ご本人の動き → 必要な機能。モーターの数は、「背上げ」「脚上げ」「高さ」のうち、何を電動で動かすかの違い
  • 高さは、端に座ったとき、足の裏が床につく高さが基本。低くまで下げられるかも確かめる
  • サイドレール(柵)は、本数を増やせば安全とは限らない。ご本人の動きと夜の様子に合わせて決める
  • 事故は、すき間への挟み込みが半数以上。古いベッドや、譲り受けたベッドは、特に確かめる
  • 事業所には、入院中の動き方、部屋の広さ、夜の様子を伝える

1. 介護ベッドとは

介護保険で「特殊寝台」として借りられるのは、サイドレールを付けられるベッドで、背上げ・脚上げなどの角度の調整か、床板の高さの調整ができるものです。ふつうの平らなベッドや、布団は、対象外とされています。家具として売られている電動ベッドには、サイドレールを付けられない、高さを変えられないなど、この条件に合わないものがあります。

背中の部分が少し起き上がり、頭側にサイドレールが付いた電動の介護ベッドの図
介護ベッドの例。背上げができ、サイドレールを付けられます

2. 先に整理する、ご本人の動き

ベッドの機能は、ご本人の動きに合わせて選びます。次の表のように、どの動きを、ご本人がしているかを整理すると、必要な機能が見えてきます。

動き見ること関係する機能
寝返り・
起き上がり
自分でできるか。手がかりがあればできるか。どちら側から起きるか背上げ、介助バー、サイドレールの位置
端に座る・
立ち上がる
座ったとき、足の裏が床につくか。立つときに、つかめる所があるか高さの調整、介助バー
乗り移り車いすやポータブルトイレへ、どちら側へ移るかベッドの置き場所、高さ
長く横になる起きて食事をするか。体がずれないか。床ずれの心配があるか背上げ、脚上げ、マットレス
介助する側ベッドの上で、着替えやおむつの交換をするか高く上げられること(介護する人の腰痛予防)
夜の様子寝ぼけて起きる、夜にトイレへ行く、ベッドから落ちそうになる低さ、サイドレールの使い方、センサー

入院中の動き方は、リハビリの担当者がよく知っています。退院前に、ベッドの上での動き(どちら側から起きるか、どこをつかむか)を、福祉用具の事業所に伝えてもらう方法があります(退院前カンファレンスで確認したいこと)。

3. 機能の選び方

モーターの数(1・2・3モーター)

電動の介護ベッドは、動かす部分の数で、モーターの数が変わります。メーカーや機種で、組み合わせは違いますが、おおむね次のように分かれます。

種類動くところ考え方の目安
1モーター背上げだけ、または高さだけ(機種により、背と膝の連動も)動かしたい部分が、はっきり1つに絞れるとき
2モーター背上げ+高さ(機種により、背と膝が連動して動く+高さ)起き上がりの補助と、高さの調整の、両方がほしいとき
3モーター背上げ、脚(膝)上げ、高さが、それぞれ別に動く長く横になる方や、細かく姿勢を変えたいとき

ベッドの高さ

高さは、端に座ったとき、足の裏が床につく高さが基本です。端座位(安定してベッドの横に座った姿勢)をとるには、足の裏を床につけ、マットレスにしっかり腰をおろせる高さに合わせることが大切とされています。端座位がとれる高さなら、誤って落ちたときの衝撃も少ないとされています。

介護ベッドの端に腰かけた高齢の女性を横から見た図。足の裏がかかとまで床についている
端に座ったとき、かかとまで床につく高さが目安です

幅と長さ

幅は、83cmと91cmの2種類から選べる機種が多く(メーカーの仕様の例)、長さは、体格で選びます(例:ミニ180cm〈身長150cm未満の目安〉、レギュラー191cm、ロング205cm)。

理学療法士の視点から 「大きくて、玄関から入らないのでは」と心配される方は多いのですが、ベッドは分けて運び入れ、お部屋で組み立ててくれることが多いです。玄関や階段、ドアの幅は、事業所が確かめてくれるので、気になることは伝えておきましょう。機能の面では、高さを変えられるかが、立ち座りのしやすさに関わります。長く横になって過ごす方では、背上げのときに体がずれやすいため、膝の動きも合わせられる機種が、選ばれることが多いです。機種ごとの動きは違うので、実際に、ご本人の体で動かして、福祉用具専門相談員に確かめてもらうのがおすすめです。

サイドレールと介助バー

ベッドの柵のように見える部品には、2つの役割があります。サイドレールは、ベッドからの転落や、寝具の落下を防ぐための柵です。介助バー(ベッド用手すり)は、起き上がりや立ち上がりの動作を助けるための手すりです。

柵の形をした枠の下に差し込み用の2本のピンがあり、右側が扉のように開く介助バーの図
介助バーの例。ベッドに差し込んで使い、手すりの部分を開いて使えます

マットレス

マットレスは、かためだと、起き上がりや寝返りがしやすい反面、体の一部に圧が集まりやすくなります。やわらかめだと、圧が分散されやすい反面、体が沈んで、寝返りや起き上がりに力がいることがあります。床ずれの心配が大きいときは、体にかかる圧を分散する用具(床ずれ防止用具)が、別の種目として借りられます(床ずれ(褥瘡)の予防)。ご本人の動きと、皮膚の状態を、訪問看護師やリハビリの担当者にも見てもらって、決めるのがおすすめです。

4. 安全に使うために

NITE(製品評価技術基盤機構)が集めた事故情報では、2007年度から2021年度に、65歳以上の方の介護ベッドまわりの事故が159件あり、そのうち52件が死亡事故でした。原因は、挟み込みが半数以上を占め、次いで、転倒、転落でした。サイドレールやベッド用グリップなどのすき間に、頭や首が入って、抜けなくなる事故が、特に重大です。

すき間の基準と、古いベッド

在宅用の電動介護ベッドは、JIS T 9254という規格で、すき間の寸法が決められています。首の太さ(60mm)、頭の幅(120mm)、胸の厚み(318mm)を基準に、挟み込まれにくい寸法が示されています。2009年の改正で、サイドレールのすき間などが細かく定められ、改正後の規格で作られたベッドによる死亡事故は、大きく減ったとされています。

一方で、ご家庭や中古市場には、古い基準で作られたベッドが残っています。NITEの報告書は、古い製品を使い続けることは、新しい製品より、事故のリスクが高いとしています。譲り受けたベッドや、昔から使っているベッドは、使う前に、メーカーか事業所に確かめるのがおすすめです。古いベッドを使うときは、メーカーが用意する、すき間を埋めるスペーサーやカバーがあります。

日々の使い方で、気をつけたいこと
  • サイドレールのすき間に、頭や首が入らないように、体の位置を確かめる。心配なときは、カバーやクッションで、すき間を埋める
  • ベッドを動かすとき(上げ下げ、背上げ)は、手足や体がすき間にないか、先に確かめる
  • 柵を片側だけに付けたときは、背上げをすると、マットレスと柵が「V」の字になって、すき間に体が挟まれることがある
  • 柵に腰かけたり、寄りかかったりしない。背上げをした姿勢を保てない方が、柵に倒れ込むと、首が圧迫される場合がある
  • 手元のスイッチは、操作を理解できない方(認知症の方、小さなお子さんなど)が、触れない場所に置く
  • 他のメーカーの柵や手すりを、組み合わせない。ぐらつきやロックのゆるみは、早めに事業所へ伝える

これらは、メーカーや業界団体の注意事項にある内容です。ご本人の状態(座る姿勢を保てるか、夜に寝ぼけることがあるか)によって、必要な備えが変わります。事業所の福祉用具専門相談員に、ベッドを置いた状態で、危ない所はないか、見てもらうのがおすすめです。

5. 事業所に伝えること、確かめること

伝えたいこと

確かめたいこと

6. 使い始めてから

理学療法士の視点から 介護ベッドは、睡眠を含めて、1日の長い時間を過ごす場所になることがあります。だからこそ、ご本人にとっても、介護するご家族にとっても、目的や使い方に合ったものを選ぶことが大切だと考えています。そして、ベッドは、横になるだけの場所ではなく、座る・立つ・移るを助ける道具にもなります。高さが合っていると、「端に座って、足を床について、立つ」という動きが、ご自身の力で出やすくなります。「柵を付けるか」「モーターは何個か」の前に、「今のこの方が、ベッドのどこで、何をするか」を、一緒に見てもらうのがおすすめです。

よくある質問

要介護1ですが、介護ベッドを借りられますか

要支援1・2と要介護1の方は、介護ベッドのレンタルが、原則、介護保険の対象外です。ただし、日常的に起き上がりが困難な方、または日常的に寝返りが困難な方は、例外として借りられます。認定調査の結果や、医師の所見、サービス担当者会議などをもとに判断されます。希望を伝えること自体は、いつでもできます。

介護ベッドは、介護保険で買えますか

介護保険では、介護ベッド(特殊寝台)は「借りて使う(貸与)」仕組みで、購入費の給付の対象になっていません。買う場合は、全額自己負担になります。借りるのがおすすめなのは、体の状態が変わったときに、ベッドや付属品を替えやすいこと、使い始めたあとも、事業所が使用状況を確かめてくれることからです。

家具店などで売っている電動ベッドでも、介護保険で借りられますか

介護保険で借りられる「特殊寝台」は、サイドレールを付けられ、背上げ・脚上げか、床板の高さの調整ができるベッドと決められています。家具として売られている電動ベッドは、この条件に合わないものがあります。借りたいときは、福祉用具貸与の事業所に、ケアマネジャーを通して確かめるのがおすすめです。

サイドレール(柵)は、両側に付けたほうが安全ですか

付ける本数を増やせば安全、とは限りません。寝ぼけている方や認知症の方、ベッドから降りようとする方が、柵を乗り越えようとして落ち、柵がない場合より重いけがになることがあります。柵が必要か、何本付けるかは、ご本人の動きと、夜の様子を見て、福祉用具専門相談員やリハビリの担当者と決めるのがおすすめです。低く下げられるベッドや、落ちたときの衝撃をやわらげるマットを組み合わせる方法もあります。

親戚から譲り受けた古い介護ベッドを使ってもいいですか

使う前に、いつごろ作られたベッドか、すき間への挟み込みを防ぐ基準(JIS T 9254)に合うかを、メーカーか事業所に確かめるのがおすすめです。NITE(製品評価技術基盤機構)の報告書では、2009年の規格改正より前に作られたベッドは、すき間の寸法が現在の基準を満たさないものがあり、古い製品を使い続けるほど事故のリスクが高いとされています。使うときは、メーカーが用意するスペーサーやカバーで、すき間を埋める方法があります。

背上げをすると、体がずり落ちてしまいます。どうすればよいですか

背上げをしたときに、体がずれたり、背中が突っ張るような感じが出たりすることがあります。背上げと同時に膝を上げて、ずれを減らす機能のあるベッドもあります。背上げや背下げのあとに、背中やお尻のシーツや衣類のしわを伸ばして、圧をぬく「背抜き」という方法もあります。ずれが続くときは、福祉用具専門相談員や、リハビリの担当者に、見てもらうのがおすすめです。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な内容です。機種や、必要な機能は、ご本人の状態によって変わります。選ぶときは、担当のケアマネジャー、福祉用具専門相談員、リハビリの担当者に、相談するのがおすすめです。