この記事は、退院や要介護認定をきっかけに、介護ベッドを借りること(または買うこと)を考えているご家族と、その相談を受けるケアマネジャーに向けて書きました。「モーターは何個がよいのか」「柵は付けたほうがよいのか」「家具店の電動ベッドとは何が違うのか」といった疑問に答えます。
選ぶときは、機能の数から入るより、ご本人の動き(寝返る、起き上がる、座る、立つ)から入ると、迷いにくくなります。事故を防ぐために確かめておきたいことも、後半にまとめました。
- 介護保険で借りられるのは、サイドレールを付けられ、背上げ・脚上げか、高さの調整ができるベッド(特殊寝台)。原則は要介護2以上で、介護保険では借りて使う仕組み(貸与)
- 選ぶ順番は、ご本人の動き → 必要な機能。モーターの数は、「背上げ」「脚上げ」「高さ」のうち、何を電動で動かすかの違い
- 高さは、端に座ったとき、足の裏が床につく高さが基本。低くまで下げられるかも確かめる
- サイドレール(柵)は、本数を増やせば安全とは限らない。ご本人の動きと夜の様子に合わせて決める
- 事故は、すき間への挟み込みが半数以上。古いベッドや、譲り受けたベッドは、特に確かめる
- 事業所には、入院中の動き方、部屋の広さ、夜の様子を伝える
1. 介護ベッドとは
介護保険で「特殊寝台」として借りられるのは、サイドレールを付けられるベッドで、背上げ・脚上げなどの角度の調整か、床板の高さの調整ができるものです。ふつうの平らなベッドや、布団は、対象外とされています。家具として売られている電動ベッドには、サイドレールを付けられない、高さを変えられないなど、この条件に合わないものがあります。
- 借りられる方:原則として、要介護2以上の方です。要支援1・2と要介護1の方は原則対象外ですが、日常的に起き上がりや寝返りが難しい方などは、例外として借りられます(福祉用具のレンタル)。
- 借りて使う仕組み:介護保険では、介護ベッドは「借りて使う」仕組み(貸与)になっていて、購入費は給付の対象になっていません。借りるのがおすすめなのは、体の状態が変わったときに、別のベッドや付属品へ替えやすいこと、使い始めたあとも、事業所が使用状況を確かめてくれることからです。
- 付属品:サイドレール、マットレス、ベッド用の手すり(介助バー)なども、ベッドと一緒に借りられます。
2. 先に整理する、ご本人の動き
ベッドの機能は、ご本人の動きに合わせて選びます。次の表のように、どの動きを、ご本人がしているかを整理すると、必要な機能が見えてきます。
| 動き | 見ること | 関係する機能 |
|---|---|---|
| 寝返り・ 起き上がり | 自分でできるか。手がかりがあればできるか。どちら側から起きるか | 背上げ、介助バー、サイドレールの位置 |
| 端に座る・ 立ち上がる | 座ったとき、足の裏が床につくか。立つときに、つかめる所があるか | 高さの調整、介助バー |
| 乗り移り | 車いすやポータブルトイレへ、どちら側へ移るか | ベッドの置き場所、高さ |
| 長く横になる | 起きて食事をするか。体がずれないか。床ずれの心配があるか | 背上げ、脚上げ、マットレス |
| 介助する側 | ベッドの上で、着替えやおむつの交換をするか | 高く上げられること(介護する人の腰痛予防) |
| 夜の様子 | 寝ぼけて起きる、夜にトイレへ行く、ベッドから落ちそうになる | 低さ、サイドレールの使い方、センサー |
入院中の動き方は、リハビリの担当者がよく知っています。退院前に、ベッドの上での動き(どちら側から起きるか、どこをつかむか)を、福祉用具の事業所に伝えてもらう方法があります(退院前カンファレンスで確認したいこと)。
3. 機能の選び方
モーターの数(1・2・3モーター)
電動の介護ベッドは、動かす部分の数で、モーターの数が変わります。メーカーや機種で、組み合わせは違いますが、おおむね次のように分かれます。
| 種類 | 動くところ | 考え方の目安 |
|---|---|---|
| 1モーター | 背上げだけ、または高さだけ(機種により、背と膝の連動も) | 動かしたい部分が、はっきり1つに絞れるとき |
| 2モーター | 背上げ+高さ(機種により、背と膝が連動して動く+高さ) | 起き上がりの補助と、高さの調整の、両方がほしいとき |
| 3モーター | 背上げ、脚(膝)上げ、高さが、それぞれ別に動く | 長く横になる方や、細かく姿勢を変えたいとき |
ベッドの高さ
高さは、端に座ったとき、足の裏が床につく高さが基本です。端座位(安定してベッドの横に座った姿勢)をとるには、足の裏を床につけ、マットレスにしっかり腰をおろせる高さに合わせることが大切とされています。端座位がとれる高さなら、誤って落ちたときの衝撃も少ないとされています。
- 低く下げられるか:機種によりますが、最も低い状態で、床から20cm台のものがあります(メーカーの仕様の例では、約21〜22cm)。マットレスの厚みも加わるので、ご本人の座った高さで、確かめます。
- 高く上げられるか:最も高い状態は、60cm台のものがあります(同じ例で、約62〜64.5cm)。着替えやおむつの交換など、介助する人が、腰をかがめずにすむ高さに上げられると、介助する側の負担が減ります。
- 立ち上がりが少し大変なときは、座面を少し上げる調整もあります。高さが合うかは、ご本人が座って、立ってみて確かめます。
幅と長さ
幅は、83cmと91cmの2種類から選べる機種が多く(メーカーの仕様の例)、長さは、体格で選びます(例:ミニ180cm〈身長150cm未満の目安〉、レギュラー191cm、ロング205cm)。
- 83cm幅:ベッドの横に立って介助しやすく、部屋に余裕がないときも置きやすい幅です。
- 91cm幅:寝返りに余裕があります。そのぶん、部屋の広さと、車いすを置く場所を、先に確かめます。
サイドレールと介助バー
ベッドの柵のように見える部品には、2つの役割があります。サイドレールは、ベッドからの転落や、寝具の落下を防ぐための柵です。介助バー(ベッド用手すり)は、起き上がりや立ち上がりの動作を助けるための手すりです。
- 介助バーは、起き上がりや立ち上がりで、手をかける場所になります。付ける側は、降りる側によって変わります(介護ベッドの置き場所と、介助バーを付ける側)。
- サイドレールは、「付ければ安全」とは限りません。寝ぼけている方や、認知症の方、ベッドから降りようとする方は、柵を乗り越えようとして、柵がないときより高い所から落ち、重いけがになることがあります。柵が必要か、何本付けるかは、ご本人の動きと、夜の様子を見て決めるのがおすすめです。
- 転落が心配なときは、低く下げられるベッドや、落ちたときの衝撃をやわらげるマットを使う方法があります。ただし、マットにつまずいたり、滑ったりすることもあるので、置く場所と種類を、専門職と相談します。
- ベッドが壁に近いときは、壁とのすき間に体が落ち込んで、挟まれる事故が報告されています。壁側へのサイドレールの追加が、対策の1つとされています。
マットレス
マットレスは、かためだと、起き上がりや寝返りがしやすい反面、体の一部に圧が集まりやすくなります。やわらかめだと、圧が分散されやすい反面、体が沈んで、寝返りや起き上がりに力がいることがあります。床ずれの心配が大きいときは、体にかかる圧を分散する用具(床ずれ防止用具)が、別の種目として借りられます(床ずれ(褥瘡)の予防)。ご本人の動きと、皮膚の状態を、訪問看護師やリハビリの担当者にも見てもらって、決めるのがおすすめです。
4. 安全に使うために
NITE(製品評価技術基盤機構)が集めた事故情報では、2007年度から2021年度に、65歳以上の方の介護ベッドまわりの事故が159件あり、そのうち52件が死亡事故でした。原因は、挟み込みが半数以上を占め、次いで、転倒、転落でした。サイドレールやベッド用グリップなどのすき間に、頭や首が入って、抜けなくなる事故が、特に重大です。
すき間の基準と、古いベッド
在宅用の電動介護ベッドは、JIS T 9254という規格で、すき間の寸法が決められています。首の太さ(60mm)、頭の幅(120mm)、胸の厚み(318mm)を基準に、挟み込まれにくい寸法が示されています。2009年の改正で、サイドレールのすき間などが細かく定められ、改正後の規格で作られたベッドによる死亡事故は、大きく減ったとされています。
一方で、ご家庭や中古市場には、古い基準で作られたベッドが残っています。NITEの報告書は、古い製品を使い続けることは、新しい製品より、事故のリスクが高いとしています。譲り受けたベッドや、昔から使っているベッドは、使う前に、メーカーか事業所に確かめるのがおすすめです。古いベッドを使うときは、メーカーが用意する、すき間を埋めるスペーサーやカバーがあります。
- サイドレールのすき間に、頭や首が入らないように、体の位置を確かめる。心配なときは、カバーやクッションで、すき間を埋める
- ベッドを動かすとき(上げ下げ、背上げ)は、手足や体がすき間にないか、先に確かめる
- 柵を片側だけに付けたときは、背上げをすると、マットレスと柵が「V」の字になって、すき間に体が挟まれることがある
- 柵に腰かけたり、寄りかかったりしない。背上げをした姿勢を保てない方が、柵に倒れ込むと、首が圧迫される場合がある
- 手元のスイッチは、操作を理解できない方(認知症の方、小さなお子さんなど)が、触れない場所に置く
- 他のメーカーの柵や手すりを、組み合わせない。ぐらつきやロックのゆるみは、早めに事業所へ伝える
これらは、メーカーや業界団体の注意事項にある内容です。ご本人の状態(座る姿勢を保てるか、夜に寝ぼけることがあるか)によって、必要な備えが変わります。事業所の福祉用具専門相談員に、ベッドを置いた状態で、危ない所はないか、見てもらうのがおすすめです。
5. 事業所に伝えること、確かめること
伝えたいこと
- 入院中の動き方:寝返り、起き上がり、立ち上がり、乗り移りを、どのようにしているか。麻痺や痛みのある側。リハビリの担当者に、まとめてもらえます。
- 部屋の様子:広さ、ドアや窓の位置、コンセントの位置、床の種類(畳、フローリング)。ベッドを運び入れる通路(階段、ドアの幅)。運び入れと組み立ては事業所が行いますが、入りにくそうな所は先に伝えておくと安心です。
- 夜の様子:夜にトイレへ行くか(ポータブルトイレの置き場所と選び方)。寝ぼけたり、ベッドから降りようとしたりすることがあるか。
- 体格:身長と体格(長さと幅を選ぶため)。
確かめたいこと
- 最新の安全基準(JIS T 9254)に合うベッドか。古い製品の場合は、すき間を埋める備えがあるか。
- 高さを、どこまで下げられて、どこまで上げられるか。
- サイドレールや、介助バーを、どの位置に、何本付けるのが合うか。
- 使い始めたあとの、点検やモニタリングの予定。体の状態が変わったとき、ベッドや付属品を替えられるか。
- 停電のときの動き方や、故障したときの連絡先。
- 月額の料金。事業所は、貸与する商品の全国平均貸与価格を説明し、機能や価格帯の異なる複数の商品を示すことになっています(福祉用具のレンタル)。
6. 使い始めてから
- 背上げのあとの、ずれや圧(床ずれの予防にも関わります):背上げをすると、体がずれたり、背中が突っ張るように感じたりすることがあります。背上げや背下げのあとに、背中・お尻・かかとの、シーツや衣類のしわを伸ばして、圧をぬく方法(背抜き)があります。機種によっては、背上げと膝の動きを合わせて、ずれを減らす機能もあります。
- 体の状態が変わったとき:立ち上がりがしにくくなった、夜に落ちそうになった、といった変化は、ベッドの高さや、柵の使い方を見直すきっかけです。借りている用具は、事業所が、使い始めから一定の期間に、使用状況を確かめて、ケアマネジャーへ報告することになっています。気づいたことは、早めに伝えます。
- ベッドの周り:ベッドの横や足元に、つまずく物(コード、マット)を置かないようにします。夜は、足元の明かりがあると、安心です。
よくある質問
要介護1ですが、介護ベッドを借りられますか
要支援1・2と要介護1の方は、介護ベッドのレンタルが、原則、介護保険の対象外です。ただし、日常的に起き上がりが困難な方、または日常的に寝返りが困難な方は、例外として借りられます。認定調査の結果や、医師の所見、サービス担当者会議などをもとに判断されます。希望を伝えること自体は、いつでもできます。
介護ベッドは、介護保険で買えますか
介護保険では、介護ベッド(特殊寝台)は「借りて使う(貸与)」仕組みで、購入費の給付の対象になっていません。買う場合は、全額自己負担になります。借りるのがおすすめなのは、体の状態が変わったときに、ベッドや付属品を替えやすいこと、使い始めたあとも、事業所が使用状況を確かめてくれることからです。
家具店などで売っている電動ベッドでも、介護保険で借りられますか
介護保険で借りられる「特殊寝台」は、サイドレールを付けられ、背上げ・脚上げか、床板の高さの調整ができるベッドと決められています。家具として売られている電動ベッドは、この条件に合わないものがあります。借りたいときは、福祉用具貸与の事業所に、ケアマネジャーを通して確かめるのがおすすめです。
サイドレール(柵)は、両側に付けたほうが安全ですか
付ける本数を増やせば安全、とは限りません。寝ぼけている方や認知症の方、ベッドから降りようとする方が、柵を乗り越えようとして落ち、柵がない場合より重いけがになることがあります。柵が必要か、何本付けるかは、ご本人の動きと、夜の様子を見て、福祉用具専門相談員やリハビリの担当者と決めるのがおすすめです。低く下げられるベッドや、落ちたときの衝撃をやわらげるマットを組み合わせる方法もあります。
親戚から譲り受けた古い介護ベッドを使ってもいいですか
使う前に、いつごろ作られたベッドか、すき間への挟み込みを防ぐ基準(JIS T 9254)に合うかを、メーカーか事業所に確かめるのがおすすめです。NITE(製品評価技術基盤機構)の報告書では、2009年の規格改正より前に作られたベッドは、すき間の寸法が現在の基準を満たさないものがあり、古い製品を使い続けるほど事故のリスクが高いとされています。使うときは、メーカーが用意するスペーサーやカバーで、すき間を埋める方法があります。
背上げをすると、体がずり落ちてしまいます。どうすればよいですか
背上げをしたときに、体がずれたり、背中が突っ張るような感じが出たりすることがあります。背上げと同時に膝を上げて、ずれを減らす機能のあるベッドもあります。背上げや背下げのあとに、背中やお尻のシーツや衣類のしわを伸ばして、圧をぬく「背抜き」という方法もあります。ずれが続くときは、福祉用具専門相談員や、リハビリの担当者に、見てもらうのがおすすめです。
出典・参考にした資料
- 厚生労働省「身体拘束ゼロに役立つ福祉用具・居住環境の工夫」:端座位をとるための高さの考え方(足の裏が床につく高さ)、柵を乗り越えての転落、低いベッドや衝撃緩和マットの考え方。2026年10月確認 リンク
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「介護ベッドの事故防止対策報告書」(令和5年1月):事故情報159件・死亡52件、挟み込み・転倒・転落、2009年のJIS改正と古い製品のリスク、壁側のサイドレール、スペーサーやカバー、安全マット。2026年10月確認 リンク
- 消費者庁「介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故に注意」:挟まれ事故の4つの型、すき間を埋めるカバーやクッション、操作前の確認。2026年10月確認 リンク
- JIS T 9254:2016「在宅用電動介護用ベッド」:首(60mm)・胸(318mm)・頭(120mm)を基準にした、すき間の試験。2026年10月確認 リンク
- 医療・介護ベッド安全普及協議会「ベッド柵類での、はさまれについてのご注意」:片側だけの柵のV字のすき間、柵への腰かけや寄りかかり、座位を保てない方、操作できない方への注意、他社製品の組み合わせ、点検。2026年10月確認 リンク
- パラマウントベッド「楽匠フィット」「レント」の仕様:床高(最低約21〜22cm、最高約62〜64.5cm)、マットレス幅83cm・91cm、ボトム長さ、1・2・3モーターの構成(機種の一例)。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(令和8年3月)と、「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」:特殊寝台が貸与の種目であること、軽度者の例外(日常的に起き上がり・寝返りが困難な方)。2026年10月確認 リンク
この記事は一般的な内容です。機種や、必要な機能は、ご本人の状態によって変わります。選ぶときは、担当のケアマネジャー、福祉用具専門相談員、リハビリの担当者に、相談するのがおすすめです。