入院や介護が始まると、周りに、たくさんの職種の人が現れます。理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、相談員、福祉用具の相談員…。名前は聞いても、「誰に、何を相談すればよいのか」は、わかりにくいものです。
この記事は、入院・退院や介護の相談を始めたばかりの、ご家族に向けて書きました。職種の決まりを説明するのが目的ではなく、「この困りごとは、この人に聞けばよい」とわかり、相談先に迷わないことをめざしています。法律や厚生労働省の資料をもとに、役割をまとめました。
- まず困りごとから探せる早見表を載せました。職種名を知らなくても、使えます
- 立つ・歩くは理学療法士、食事・着替え・家事など暮らしの動きは作業療法士、話す・聞く・飲み込むは言語聴覚士が、主に関わります
- サービスの組み立てはケアマネジャー、申請前の相談は地域包括支援センター、入院中の退院や制度の相談は病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)が、窓口になります
- 福祉用具は福祉用具専門相談員が、体の状態や住まいを確かめながら、一緒に選びます
- どの窓口も、ほかの窓口につなぐ役割を持っています。迷ったら、近い窓口にそのまま話すのがおすすめです
- 相談するときは、「何をしたいか」「何に困っているか」を、具体的に伝えると、専門職が動きやすくなります
1. 困りごとから探す早見表
「この職種だけが担当」と決まっているわけではなく、職種どうしがつないでくれるのが基本です。迷ったときの、最初の入口の目安として使えます。
どこに話せばよいか迷ったときの、入口は3つです。
- いま、入院している病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)や、病棟の看護師
- すでに、介護保険のサービスを使っている担当のケアマネジャー
- まだ、何も使っていない(申請の前)地域包括支援センター
入口が違っても、必要な窓口を案内してもらえることがほとんどです。
そのほか、困りごと別の目安は、次の表のとおりです。
| こんなときは | 最初に聞く先の例 | ひとこと |
|---|---|---|
| 立つ・歩く・起き上がるのが、むずかしそう | 理学療法士(PT) | 体の動かし方、介助のしかた、杖や歩行器の相談 |
| 食事・着替え・トイレ・家事が、しにくそう | 作業療法士(OT) | 暮らしの動きと、道具・やり方の工夫の相談 |
| むせる、飲み込みにくい、話しにくい | 言語聴覚士(ST) | 飲み込みや話し方、食事の形や姿勢の相談 |
| 介護保険を使いたい、サービスを選びたい | ケアマネジャー、地域包括支援センター | 申請の前なら、地域包括支援センターが入口 |
| 退院後の行き先、費用、制度、住まいが不安 | 病院の相談員(医療ソーシャルワーカー) | 入院中の、退院・転院の相談窓口 |
| ベッドや手すり、車いすを借りたい・買いたい | 福祉用具専門相談員、ケアマネジャー | PT・OTが、動きの面から助言することもあります |
| 家を直したい(段差、手すり、トイレ) | ケアマネジャー、PT・OT | 退院前の家屋調査で、一緒に見ることもあります |
| 薬が多い、食事の量や内容が心配 | 薬剤師、管理栄養士、看護師 | 入院中は病棟で、退院後は薬局や訪問でも相談可 |
よく使われる呼び方
現場や書類では、短い呼び方がよく使われます。聞き慣れない言葉が出てきたときの、手がかりになります。
| 職種 | よく使われる呼び方 | 会える場所の例 |
|---|---|---|
| 理学療法士 | PT(ピーティー) | 病院、訪問リハ、通所リハなど |
| 作業療法士 | OT(オーティー) | 病院、訪問リハ、通所リハなど |
| 言語聴覚士 | ST(エスティー) | 病院、訪問リハ、通所リハなど |
| 上の3職種をまとめて | リハビリ職、セラピスト | どの職種も、会える場所は事業所により異なる |
| 介護支援専門員 | ケアマネジャー、ケアマネ | 居宅介護支援事業所、施設など |
| 医療ソーシャルワーカー | MSW、相談員、ソーシャルワーカー | 病院の医療相談室、地域連携室など |
| 地域包括支援センター | 包括(ほうかつ) | お住まいの地域ごとの窓口 |
2. リハビリの職種:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
家族にとってのこの3職種の意味は、「どう動けば、その人らしい暮らしが続けやすいか」を、体の状態を見ながら一緒に考えてくれることです。名前の違いは、得意とする場面の違いとして、覚えておくと便利です。
理学療法士(PT)
法律(理学療法士及び作業療法士法)では、主として基本的動作能力の回復を図るため、治療体操などの運動や、電気刺激・温熱などの物理的手段を用いる人とされています。寝返る・起き上がる・立つ・歩くといった、基本の動きに関わります。家族にとっては、介助のしかたや、動きやすい環境(ベッドの高さ、手すりの位置、杖や歩行器)を、体の状態に合わせて相談できる相手です。
作業療法士(OT)
同じ法律で、主として応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るため、手芸や工作などの作業を行う人とされています。食事、着替え、トイレ、入浴、家事、趣味など、暮らしの中の動きと、その人の役割に関わります。道具の使い方や、やり方の工夫を相談できます。
言語聴覚士(ST)
言語聴覚士法では、音声機能、言語機能、聴覚に障害のある方について、機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、必要な検査、助言・指導などを行う人とされています。同じ法律で、医師または歯科医師の指示の下に、嚥下(えんげ:飲み込み)の訓練などを行えるとされています。「話す」「聞く」のほか、飲み込みの相談にも関わります。
理学療法士・作業療法士は、法律では「医師の指示の下に」行うこととされています。リハビリの内容や頻度は、医師の方針や、サービスの種類によって決まります(退院後のリハビリは「訪問リハ・通所リハ」)。「もっと動きを見てほしい」という希望は、医師や担当の療法士、ケアマネジャーに、伝えてかまいません。
3. 暮らしと制度を支える職種:ケアマネジャー・包括・相談員
家族にとってのこの3つの窓口の意味は、制度やサービスの「道案内」です。自分たちだけで、制度を調べ尽くさなくてよいように、つないでくれます。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
介護保険法では、要介護者や要支援者からの相談に応じ、心身の状況に合ったサービスを利用できるよう、市町村やサービス事業者との連絡調整などを行う人とされています。介護保険を使い始めると、多くの場合、ここが中心の窓口になります。「居宅と包括の違い」の記事で、くわしく説明しています。
地域包括支援センター
介護保険法では、地域住民の心身の健康の保持や、生活の安定のために必要な援助を行う施設とされています。厚生労働省の通知では、原則として保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を置くこととされています。厚生労働省の通知では、高齢者の相談に応じ、必要なサービスや機関、制度の利用につなげる「総合相談支援」が、業務の1つとされています。まだ介護保険の申請をしていない段階の相談や、どこに聞けばよいかわからない相談の、最初の入口になります。
病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)
厚生労働省の業務指針では、医療ソーシャルワーカーは、退院や転院に伴って生じる、経済的・心理的・社会的な問題を予測し、相談に応じて、解決や調整を援助するとされています。転院先や施設の選び方、在宅サービスの情報、住まいの改造に関する相談なども、役割に含まれています。病院によって、「医療相談室」「地域連携室」など、呼び名や体制は違います。退院が近づくと、これらの職種が集まって話し合う場が開かれることもあります(「退院前カンファレンスで確認したいこと」)。
4. 医療・介護の現場の職種
家族にとっての意味は、毎日の様子を一番近くで見ている人に、小さな気がかりを伝えられることです。
- 医師:診断・治療の方針を決め、リハビリや退院の見通しについて説明する人です。理学療法士・作業療法士は、医師の指示の下で関わります。
- 看護師:法律では、傷病者に対する療養上の世話、または診療の補助を行う人とされています。入院中の毎日の様子を、近くで見ています。訪問看護で、家に来ることもあります。
- 介護福祉士:法律では、心身の状況に応じた介護を行い、本人と介護者に対して、介護に関する指導を行う人とされています。施設やデイサービス、訪問介護などで、日々の介助にあたります。
- 薬剤師:法律では、調剤や医薬品の供給などをつかさどる人とされています。薬の種類や飲み方、飲み込みにくいときの工夫などを相談できます。
- 管理栄養士:法律では、傷病者に対する療養のために必要な栄養の指導などを行う人とされています。食事の量、形、むせやすいときの食事などを、相談できます。
5. 福祉用具と住まいの職種
福祉用具専門相談員
介護保険のサービスの基準(厚生省令)では、福祉用具専門相談員は、利用者の希望、心身の状況、置かれている環境を踏まえて「福祉用具貸与計画」を作り、福祉用具が適切に選ばれ、使われるよう、専門的知識に基づいて相談に応じることとされています。機能や使い方、利用料などを説明し、体の状態に合わせて調整すること、求めに応じて使い方を確かめ、必要なら使い方の指導や修理を行うことも、基準に含まれています。福祉用具のレンタル事業所には、2人以上(常勤換算)置くこととされています。借りたあとも、合わなくなったときの相談先になります。借りる流れは「福祉用具レンタルの料金」で説明しています。
住まいの工事に関わる人
住宅改修では、ケアマネジャーが申請を含めた全体の流れを、施工業者が工事を担当します。退院前の家屋調査などで、理学療法士・作業療法士が、動きの面から助言することもあります。どこをどう直すかは、ご本人の動きと、家の作りを合わせて考える必要があります。「住宅改修の対象になる工事と、ならない工事」も、あわせてどうぞ。
6. 相談するときの伝え方
職種を正しく選ぶよりも、困っていることを具体的に伝えるほうが、話が早く進みます。次の3つがおすすめです。
- 「何をしたいか」を伝える:「家に帰りたい」「また、庭の草むしりをしたい」「トイレは自分で行きたい」など、本人と家族の希望をそのまま伝えます。
- 「いつ、どこで、何に困るか」を伝える:「夜中のトイレで、立ち上がるときにふらつく」のように、場面を1つ決めて話します。
- 「わからない」と伝える:専門用語がわからないときは、遠慮せずに聞き返してかまいません。
家族が、希望を伝えること自体は、いつでもできます。通るかどうか、できるかどうかは、そのあと専門職が一緒に考えます。
よくある質問
理学療法士と作業療法士の違いは何ですか
法律では、理学療法は「主として基本的動作能力の回復を図るため」の運動などを、作業療法は「主として応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため」の作業などを行うこととされています。立つ・歩くなどの基本の動きは理学療法士、食事・着替え・家事・趣味など、暮らしの中の動きは作業療法士、と考えると、イメージしやすくなります。実際の現場では、重なる部分も多く、一緒に関わることもあります。
どこに相談すればよいか、わからないときは
入院中なら病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)や看護師、すでに介護保険のサービスを使っているならケアマネジャー、まだ何も使っていないなら、お住まいの地域の地域包括支援センターが、入口になります。地域包括支援センターは、高齢者の相談に応じ、必要なサービスや機関、制度の利用につなげる役割があるとされています(厚生労働省の通知)。入口が違っても、必要な窓口を案内してもらえることがほとんどなので、迷ったときは近い窓口に、そのまま話してみるのがおすすめです。
入院中に、家に帰る相談をしてよいのは誰ですか
病院の医療ソーシャルワーカー(相談員)が、退院や転院、在宅サービス、住まいの相談に応じる役割を担うとされています(厚生労働省の業務指針)。そのほか、病棟の看護師や、リハビリの理学療法士・作業療法士にも、家での動きや、必要な準備を聞けます。病院によって、窓口の呼び名や体制が違うので、まず病棟の看護師に「退院の相談はどこでできますか」と聞くのがおすすめです。
リハビリの先生は、退院後も家に来てくれますか
介護保険のサービスには、リハビリ職が家を訪ねる「訪問リハビリ」や、通い先でリハビリを行う「通所リハビリ」があります。使えるかどうか、どれくらいの頻度かは、医師の判断やケアプラン、地域の事業所の体制によって変わります。くわしくは「訪問リハ・通所リハ」の記事で説明しています。使いたいときは、ケアマネジャーに相談するのがおすすめです。
ケアマネジャーに、どこまで頼んでよいのでしょうか
介護保険法では、ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者などからの相談に応じ、適切なサービスを利用できるよう、市町村やサービス事業者との連絡調整などを行う人とされています。困りごとを幅広く話してかまいません。ケアマネジャーの担当ではない内容でも、ほかの職種や窓口につないでもらえます。話してよいかどうか迷う内容も、まず伝えてみるのがおすすめです。
出典・参考にした資料
- e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」第2条(定義):理学療法・作業療法・理学療法士・作業療法士の定義、医師の指示の下に行うこと。2026年10月確認 リンク
- e-Gov法令検索「言語聴覚士法」第2条(定義)、第42条(嚥下訓練などを、医師又は歯科医師の指示の下に行えること)。2026年10月確認 リンク
- e-Gov法令検索「介護保険法」第7条第5項(介護支援専門員の定義)、第115条の46(地域包括支援センター)。2026年10月確認 リンク
- e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」第5条(看護師)、「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条(介護福祉士)、「薬剤師法」第1条、「栄養士法」第1条(管理栄養士)。2026年10月確認 リンク(保健師助産師看護師法)
- 厚生労働省「地域包括支援センターの設置運営について」(平成18年10月18日老計発第1018001号ほか):職員の配置(保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を原則として置くこと)、総合相談支援業務(適切なサービス、機関、制度の利用につなげる支援)。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針」:退院(社会復帰)援助として、転院・施設の選定、在宅ケアサービスの活用、住居問題の解決などを援助すること。2026年10月確認 リンク
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第194条(福祉用具専門相談員の員数:常勤換算で2以上)、第199条(具体的取扱方針:相談、情報提供、調整、使用方法の指導、使用状況の確認と修理)、第199条の2(福祉用具貸与計画の作成)。2026年10月確認 リンク
この記事は一般的な内容です。窓口の名前、体制、サービスの内容は、病院・事業所・市区町村によって違います。くわしくは、病院の相談窓口、担当のケアマネジャー、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに、確認するのがおすすめです。