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トイレの介助のしかた:立ち座り・ズボンの上げ下ろし・後始末退院後、トイレで手助けが要る親に。見守る位置、麻痺のあるときの手の使い方、後始末、用具の注意

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月12日/最終確認日:2026年10月12日

退院して自宅に戻った親が、トイレまでは行けても、立ち座りやズボンの上げ下ろし、後始末で手助けが要る。そんなときの、家族の手の貸し方をまとめました。片麻痺の方、骨折や膝・股関節の痛みのある方、ふらつきの出てきた方を想定しています。トイレの中は狭く、動作も多いので、手の出しすぎも、見守りすぎも、お互いに疲れやすい場所です。

この記事のポイント
  • トイレの動作は、入る・向きを変える・座る・ズボン・後始末・立つの6つに分かれます。どこで困るかが分かると、手を貸す場面が絞れます
  • ご本人ができるところは任せて、手伝いが要る部分だけ手を貸すのがおすすめです
  • 麻痺があるときは、どちらの手で手すりを握り、どちらの手でズボンを上げるかが大切です。基本は、麻痺のない側の手で手すりを握ります
  • 介助する人が抱えて持ち上げるのは、腰への負担が大きいため、原則として避けます
  • ポータブルトイレを手すり代わりにしたり、歩行器を片手だけで支えたりすると、転びそうになった例があります

1. トイレで手助けが要る場面

トイレの動作は、6つに分かれる

トイレは、便座に座って排泄するだけの場所ではありません。実際の動作は、次のように分かれます。

  1. トイレに入る
  2. 便器に向きを変える
  3. ズボンと下着を下ろして、座る
  4. 排泄する
  5. 後始末をする
  6. 立ち上がって、ズボンを上げる

どこで困るかを見つける

便器の前に立てても、向きを変えるときにふらつく方がいます。ズボンを下ろすために片手を離すと、バランスを崩しやすい方もいます。どこで難しさが出ているかが分かると、手を貸す場面が絞れて、ご家族の負担も、ご本人の「やってもらっている」感じも、小さくなります。

2. 見守りと手助けの基本

ご本人ができることは、ご本人に

トイレの介助は、ご本人ができるところは任せて、手伝いが要る部分だけ手を貸すのがおすすめです。ご本人が動く機会が残りますし、ご家族も、動作のすべてを引き受けずにすみます。

見守る位置

狭いトイレの中で、右半身に麻痺のある男性が、左手で壁の縦手すりを握って便器の前に立っている。娘が右側のやや斜め後ろに立ち、すぐ支えられる位置から見守っている
手すりを握る手と、見守る人の立ち位置のイメージ。立ち位置は、トイレの広さやご本人の状態で変わります

歩く方を見守るときの立ち位置は、やや斜め後ろが基本とされています。ただし、立ち位置には個人差があり、トイレの広さでも変わります。ご本人が動きやすく、家族がすぐ手を出せる位置を、リハビリ専門職に教えてもらうのがおすすめです。

声かけとプライバシー

トイレは、ご本人にとって、人に見られたくない場所です。「ズボンを下ろしますね」「立ちますよ」と、動作の前に声をかけると、ご本人が次の動きを分かったうえで体を動かせます。見守りが必要な間はそばにいて、手伝いが要らない場面では、できるだけ任せるのがおすすめです。

抱えて持ち上げない

介助する人が、ご本人を抱えて持ち上げると、介助する人の腰に大きな負担がかかります。厚生労働省の指針でも、介護で人を抱き上げる作業は、原則として人力ではしないこととされています。ご本人の力と手すりを使って立つ、便座や座面の高さを合わせるなど、前かがみやひねりの姿勢を避ける工夫を優先します。腰を痛めない介助の考え方は、介護する人の腰痛予防の記事にまとめています。

3. 入る・向きを変える・座る

片麻痺の方の場合

トイレに入って、便座に座るまでの動作は、手すりを使うと安定しやすくなります。麻痺があるときは、どちらの手で手すりを握るかが大切です。基本は、麻痺のない側の手で手すりを握って体を支えます。右半身の麻痺なら、便座に座ったときの左側に縦手すりがあると、左手で握りやすくなります。手すりの位置と左右の決め方は、トイレの手すりの高さと位置の記事に書きました。

脚の痛みや骨折がある方の場合

トイレの中で、高齢の男性が便器に向かって立ち、便器の横の壁に付いた縦の手すりを片手で握っている
痛みの少ない脚で体を支えるときは、その脚と同じ側の手すりを握ると、体を支えやすくなります

麻痺がなくても、片方の脚が痛む、体重をかけにくいときは、痛みの少ない脚で体を支えて立つことが多くなります。その場合は、痛みの少ない脚と同じ側に手すりがあると、体を支えやすくなります。どちらの脚に体重をかけやすいかを確かめて、向きを変える動きを見守ります。

動作の方法は人によって違います。リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。

4. ズボン・下着の上げ下ろし

立ったまま行うとき

トイレの中で、高齢の男性が、片手で壁の縦手すりを握ったまま、もう片方の手でズボンのウエストを持っている
片手で手すりを握ったまま、もう一方の手でズボンを上げ下ろしします

トイレの中で意外と難しいのが、立ったままのズボンの上げ下ろしです。片手を手すりから離すため、ふらつきやすくなります。基本は、麻痺のない側の手で手すりを持って立つ方法です。麻痺が軽い方は、麻痺のある側の手で手すりを持って、麻痺のない手でズボンを上げ下ろしする方法もあります。どちらが合うかは、麻痺の程度と、立ったときのバランスで変わります。手すりの使い方は、トイレの手すりの記事の6章にくわしく書きました。

ふらつきが心配なとき

ふらつきがあるときは、無理にひとりで行わず、リハビリ専門職と、安全な手順を一緒に決めておくのがおすすめです。座ってから行う方法など、ご本人に合った順番を教えてもらえます。ズボンの脱ぎ着そのものの工夫は、着替えの介助の記事にあります。

5. 後始末と立ち上がり

拭く動作は、できる範囲でご本人に

後始末も、まずはご本人ができる範囲でしてもらうのがおすすめです。手が届きにくい、体を傾けるとバランスが崩れる、というところだけ手伝います。何をどこまで手伝うかは、ご本人と話して決めておくと、お互いに気づまりが少なくなります。

立ち上がる前に

立ち上がる前に、足の裏が床についているかを確かめます。足が浮いていると、力が入りにくく、バランスを崩しやすくなるとされています。「立ちますよ」と声をかけて、ご本人のタイミングで立ち上がるのを見守ります。立ち上がりの介助の基本は、いす・ベッドからの立ち上がりの介助の記事で書いています。

理学療法士の視点から トイレの介助で、とくに大切にしているのは、麻痺のあるときに、どちらの手で手すりを握り、どちらの手でズボンを上げるかです。ここが合っていないと、立つのが難しくなったり、ふらついたりしやすくなります。 入院中は、ご本人に合った方法を、リハビリの中でお伝えしています。ご家族は、その方法をそのまま覚えていただければ十分です。退院後に、ご本人の動きが変わったときは、リハビリ専門職に、もう一度見てもらうのがおすすめです。

6. 車いす・ポータブルトイレ・歩行器のとき

車いすで便器に移るとき

車いすからの乗り移りの基本は、乗り移りの介助の記事にまとめています。トイレは狭いので、便器に固定するタイプの手すりの脚に、車いすのキャスターがぶつかって、浅く座っていた方が前に転落しそうになった例があります。手すりと車いすの位置関係を、実際に動かして確かめておくのがおすすめです。

ポータブルトイレを使うとき

ポータブルトイレを手すり代わりにして立ち上がろうとして、バランスを崩した例があります。「トイレに頼って立っているようなら、安全かどうかを確かめる」ことが勧められていて、立ち上がりには、床置き形の手すりなど、目的に合ったものを選ぶとされています。

ひじ掛けのないポータブルトイレに、固定できない手すりを足したところ、使うたびに動いて、転びそうになった例もあります。ご本人の動作や乗り移りの力と、ポータブルトイレの形が合っていなかったことが原因でした。ひじ掛けのあるものに替えて解決しています。選び方は、ポータブルトイレの選び方の記事にあります。

置くだけの手すりは、ゆるみを確かめる

ねじなどで固定しない、置くだけの手すりは、手軽に付けられる反面、立ち上がるたびに握るうちに、固定がゆるんでズレることがあります。ぐらつきがないか、ときどき確かめるのがおすすめです。

歩行器を使うとき

寝室のベッドのそばで、高齢の女性が歩行器を両手で握って立っている。娘が横から、ポータブルトイレの蓋を開けている
歩行器は両手で支えたまま。蓋の開け閉めは、家族が代わりにするのがおすすめです

歩行器は、両手で支えて使う用具です。歩行器を片手だけで支えて、もう片方の手でポータブルトイレの蓋を開けようとして、バランスを崩した例があります。蓋の開け閉めを家族が代わりにするなど、両手で歩行器を支えたままで動ける工夫がおすすめです。歩くときの付き添い方は、歩くときの付き添い方の記事にまとめています。

7. 困ったときの相談先

ひとりで抱え込まない

トイレの介助は、ご家族の負担が大きくなりやすいところです。うまくいかないときも、ご自身のやり方が悪いわけではありません。次のようなときは、相談するのがおすすめです。

誰に何を相談できるか

相談先相談できること
かかりつけ医体の状態や、痛みの変化
ケアマネジャー手すりの取り付け、ポータブルトイレなどの福祉用具、介護サービスの調整
リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士)その方に合った介助のしかた、見守る位置、手すりの使い方

退院直後と比べて、ご本人の動きが変わったとき、介助するご家族が負担を感じ始めたときは、方法や用具を見直す時期かもしれません。

よくある質問

ポータブルトイレを手すり代わりにして、立ち上がってもよいですか?

おすすめしません。ポータブルトイレに手をかけて立とうとして、バランスを崩した例があります。「トイレに頼って立っているようなら、安全かどうかを確かめる」ことが勧められています。
立ち上がりのときは、床置き形の手すりなど、目的に合ったものを選ぶとされています。どれが合うかは、ケアマネジャーやリハビリ専門職に相談できます。

置くだけの手すりが、しばらく使うとぐらつくのはなぜですか?

ねじなどで固定しない手すりは、立ち上がるたびに握るうちに、固定がゆるんでズレることがあるためです。実際に、固定部がゆるんでズレた例があります。
ぐらつきがないかを、ときどき確かめるのがおすすめです。ひじ掛けのないポータブルトイレに、固定できない手すりを足して、使うたびに動いた例もあります。

歩行器を使っていて、ポータブルトイレの蓋を開けるときの注意は?

歩行器は、両手で支えて使う用具です。片手だけで支えて、もう片方の手で蓋を開けようとして、バランスを崩した例があります。
蓋の開け閉めを家族が代わりにするなど、両手で歩行器を支えたままで動ける工夫がおすすめです。

出典・参考にした資料

最新の情報は、かかりつけ医、ケアマネジャー、各相談窓口で確認するのがおすすめです。トイレでの動作の方法は、リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。