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介護する人の腰痛予防腰を痛めない介助の考え方と、受診の目安

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月7日/最終確認日:2026年10月7日

この記事は、自宅で親やご家族を介助していて、「介助のたびに腰が痛い」「このまま続けられるか不安」と感じているご家族に向けて書きました。ご本人の体を支えたり動かしたりする作業は、腰に大きな負担がかかります。腰が痛くなるのは、介助が下手だからではありません。ベッドの高さ、動き方、用具、人手を見直すことで、負担を減らせることがあります。

介護の仕事をする人のために示されている腰痛予防の考え方は、家庭での介助にも、そのまま参考になるものが多くあります。この記事では、その考え方をもとに、ご家族が取り入れやすい形でまとめました。

この記事のポイント
  • 腰に負担がかかるのは、抱え上げる、前かがみ・中腰、ひねる、離れて支える、同じ姿勢が続く、急に動くときです。介護の仕事では、人力のみで人を抱え上げることを、原則として行わない考え方があります
  • 腰を守る5つの工夫:① ベッドの高さを上げる ② 近づいて、ひねらない ③ 持ち上げず、水平に滑らせる ④ ご本人の力を借りる ⑤ 一人で抱え込まない
  • 用具(介護ベッド、スライディングボードなど)は、ご本人の介護保険で借りられるものが多い。サービスで、介助の回数を減らす方法もある
  • 腰が痛いときは、原因がさまざまなので、まず整形外科の受診がおすすめです。安静にしていても痛い、足のしびれが広がる、熱があるなどは、早めに受診

1. 介助で腰が痛くなる理由

腰痛の原因として、次のような動きが考えられます。介助の場面には、これらが重なりやすいのです。

腰の痛みには、ご本人の状態(介助の程度、協力してもらえるか)、福祉用具があるか、作業の姿勢、部屋の広さなど、いろいろな要因が関わります。そのため、「気をつけて、がんばる」だけでは、なかなか減らせません。環境と用具、やり方を、一緒に見直すのがおすすめです。

2. 腰を守る5つの工夫

① ベッドの高さを、前かがみにならない高さまで上げる

ベッドサイドでの介助では、立ったとき、前かがみにならない高さまで、電動でベッドを上げて、介助する人が高さを調整するのが、望ましいと考えられます。目安は、ベッドの横に立って、太ももの上のほうから、腰の上のあたりまでの高さです。着替えやおむつの交換、体の向きを変えるときは、ベッドを上げて、腰を曲げずにすむ高さで行います。

ベッドで横になる方の介助の比較図。左は、低いベッドで、介助する人が深く前かがみになっている。右は、ベッドを上げて、前かがみが少なくなっている
左:ベッドが低く、深い前かがみになる。右:ベッドを上げると、前かがみが少なくなる

ただし、介助が終わったら、ベッドを低い位置へ戻します。ご本人が、ベッドの端に座ったとき、足の裏が床につく高さが基本だからです(介護ベッドの選び方)。「介助するときは高く、ご本人が動くときは低く」と、使い分けます。

② 近づいて、足を開き、膝を曲げて、ひねらない

前かがみやひねりを避けられないときは、壁に手をつく、ベッドの上に膝をつくなどして、体を支えると、腰への負担を分けられます。ご本人のほうへ、体を正面に向けることも、ひねりを減らす工夫です。

③ 持ち上げず、水平に滑らせる

ご本人を持ち上げるのではなく、滑らせて、水平に動かすと、腰への負担が減ります。スライディングボードやスライディングシートを使って、垂直方向の力を水平方向に変えることで、抱え上げずに移れる場合があります。

ベッドのすぐ横に、足を前後に開き、膝を少し曲げて立つ介助する人が、横になる方の肩と腰に手を添えている図。体の下に、滑りやすいシートが敷かれている
滑りやすいシートを使うと、持ち上げずに、水平に動かせます

④ ご本人の力を借りる

ご本人が、介助する人の手や体、手すりなどをつかむだけでも、介助する人の負担は軽くなります。「さん、はい」と声をかけて、ご本人が力を入れるタイミングと、手伝うタイミングを合わせるだけでも、動きやすくなることがあります。

理学療法士の視点から 介助で腰を痛めている方を見ていると、ご本人を持ち上げて、全部を介助しようとしている場合があります。けれども、寝返りや立ち上がりの途中までは、ご本人が自分でできることも多いのです。どこまでご本人にしてもらえるかを、リハビリの担当者に見てもらうと、介助の形が変わって、腰への負担が減ることがあります。ご本人にとっても、自分の力を使う機会が残ります。

⑤ 一人で抱え込まない

どうしても人の力で支えざるを得ないときは、人数を増やす方法もありますが、人数が増えても、前かがみや中腰の姿勢では、腰への負担は残ります。家庭では、二人で持ち上げるより、用具や、ご本人の力を使う方法を先に考えるのがおすすめです(乗り移りの介助の、よくある質問に、くわしく書いています)。

介助の回数そのものを減らす、サービスもあります。次の章で紹介します。

3. 場面ごとの、腰への負担と工夫

場面腰に負担がかかる理由工夫
ベッドの上
(おむつ、着替え)
ベッドが低く、前かがみ・ひねりが続くベッドを上げる。ベッドの上に膝をつく。近づく(寝返り・起き上がりの介助)
起き上がり腕を引っぱって起こそうとする横向きから、ご本人の力を借りる。介助バーを使う(寝返り・起き上がりの介助)
立ち上がり前に引き上げようとするご本人の前かがみを待ち、声をかけてタイミングを合わせる。手すり、高さを調整する(立ち上がりの介助)
乗り移り抱え上げて、ひねる足の向きで方向を変える。座ったまま移るなら、スライディングボード。難しいときはリフト(乗り移りの介助)
トイレ・入浴狭い場所で、中腰やひねりが続く手すり、入浴用いすなど(トイレの手すり、お風呂の手すり)。入浴はサービスを使う方法も
布団で
寝ている方
床に近く、強い前かがみになるベッドにすると、介助する高さを作れる(布団のままか、ベッドにするか)
床に転んだときあわてて抱え起こす一人で抱え起こそうとせず、起こす前に確かめることを先に(親が家で転んだら)

4. 用具とサービスで、介助の負担を減らす

借りられる用具

対象になる要介護度や、借り方は、福祉用具のレンタルと福祉用具の早見表にまとめています。

サービスと相談先

5. 自分の腰が痛いとき

まずは、整形外科の受診がおすすめです

腰の痛みには、原因がさまざまあります。介助のせいだと思っていても、背骨の骨折や、神経の病気などが隠れていることもあります。痛みが続くとき、強いときは、まず整形外科を受診するのがおすすめです。次のようなときは、特に早めに相談します。

次のようなときは、整形外科などへ、早めに相談する
  • 安静にしていても、夜も、痛い(時間や、動きに関係のない痛み)
  • 足のしびれや、力の入りにくさが、広がっている
  • 熱がある。体重が、理由なく減っている
  • 転んだり、ぶつけたりしたあとに、強い痛みが出た
  • 癌の治療を受けたことがある、ステロイドを飲んでいる
  • 排尿や排便がうまくいかない、足の付け根まわりの感覚がおかしい(すぐに受診)

これらは、「腰痛診療ガイドライン2019」の、重篤な脊椎の病気(腫瘍、感染、骨折など)を疑う危険信号(red flags)の表と、重い神経症状(下肢の麻痺、膀胱直腸障害)、脊椎の外傷(椎体骨折など)の記載をもとにしています。当てはまるときは、介助のことより先に、ご自身の受診を優先するのがおすすめです。

受診のあと、介助を続けるときに

理学療法士の視点から 介助をしている方が、「自分が休んだら、この人はどうなるのか」と、痛みを我慢して続けてしまう場面を、よく見ます。けれども、介助する人の腰が壊れてしまうと、介護そのものが続けられなくなります。大変なときは、一人で抱え込まず、ケアマネジャーへの相談や、ショートステイ、レスパイト入院など、制度やサービスを使うことも、考えてほしいと思います。「少し楽にする工夫」を足すことは、わがままではありません。

どこに、どう相談すればよいか

よくある質問

介助のとき、腰痛ベルト(コルセット)をつけたほうがよいですか

市販のコルセットは、腹圧を高めたり、姿勢を支えたりすることで、腰への負担が軽くなる場合があります。一方で、効果には個人差があり、痛みの原因によっては合わないこともあります。まず整形外科を受診して、使ってよいか、どのようなものがよいかを、相談するのがおすすめです。

介助で、一人で抱え上げてもよいですか

介護の仕事では、人を人力のみで抱え上げることは、腰への負担が大きいため、原則として行わない考え方があります。家庭でも、まず、ご本人の力を借りる方法と、用具(スライディングボードやリフトなど)を考えるのがおすすめです。やむを得ず人の力で支えるときは、人数を増やしても、前かがみや中腰の姿勢では腰への負担が残るので、ご本人に近づき、腰を落として行います。

腰が痛いとき、まず何をすればよいですか

腰の痛みには、原因がさまざまあります。痛みが続くとき、強いときは、まず整形外科の受診がおすすめです。安静にしていても痛い、足のしびれや力の入りにくさが広がる、熱がある、排尿や排便がうまくいかない、といったときは、早めに受診します。受診のあとは、介助の方法やサービスの利用を、早めに見直します。

ベッドを上げると、本人が動きにくくなりませんか

介助するときだけ、ベッドを高く上げ、終わったら低い位置へ戻すのがおすすめです。ご本人が、ベッドの端に座って立つときは、座ったとき足の裏が床につく高さが基本です。高さを変えられる電動の介護ベッドは、介護保険で借りられます(要介護2以上が原則)。

介助する人が腰を痛めたとき、どこに相談すればよいですか

担当のケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に、「介助でこちらの腰がつらい」と伝えられます。介助の方法は、リハビリの担当者に見てもらう方法があります。腰の痛みそのものは、整形外科で相談できます。介助する人が休めるように、ショートステイなどを使う方法もあります。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な内容です。腰の痛みの原因や、介助のやり方は、お一人おひとり違います。痛みが続くときは医療機関で、介助のやり方は、リハビリの担当者に、相談するのがおすすめです。