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着替えの介助:袖を通す順番と、座って・寝たままのやり方片麻痺や痛みのある親の着替え。袖を通す順番、座って・ベッドで寝たままの手順、床ずれを防ぐしわの整え方

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月10日/最終確認日:2026年10月10日

この記事は、親の着替えを手伝うなかで、「袖がうまく通らない」「痛がって時間がかかる」と悩んでいるご家族に向けて書きました。片麻痺や骨折のある方、ベッドで過ごす時間が長い方の着替えを、お互いの負担を減らしながら進めるコツをお伝えします。

この記事のポイント
  • 脱ぐときは動く側(健側)から、着るときは麻痺や痛みのある側(患側)からが基本です
  • 袖を通すときは、手先を包むように支えると、指が引っかかりにくくなります
  • 座って着替えるときは、手すりや支えを使い、本人ができる動作を引き出します
  • 寝たままのズボンは、腰を浮かせてもらうと、横を向かなくても下ろせます
  • 寝たままのシャツは、服を体の下に入れて、左右1回ずつ横向きになってもらいます
  • ベッドで過ごす時間が長い方は、着替えのあとに、背中やおしりの下の服のしわを伸ばすことがおすすめです。床ずれの予防につながるとされています

1. 着替えで、いちばん大変なのは「袖を通すところ」

なぜ、袖を通すのが難しいのか

親の着替えを手伝うとき、ご家族がいちばん苦労しやすいのが「袖を通す」場面です。腕が上がりにくかったり、肩や肘が痛んだりすると、袖に腕を通すだけで一苦労になります。

手先が曲がっていたり、指が開きにくかったりすると、指が袖口に引っかかって先に進まないこともあります。

時間がかかるのは、よくあることです

朝の忙しい時間などは、時間がかかるぶん、ご家族もつい急いでしまいます。ただ、急いで腕を引っぱると痛みが出ることがあり、そうなると、着替えそのものがつらい時間になりやすくなります。

袖を通す順番と、手の添え方を知っておくと、通しやすくなることがあります。ご本人の力を活かしながら、安全に進める方法を、順に見ていきます。

2. 基本の順番:着るときは痛みや麻痺のある側から

脱ぐときは動く側、着るときは動かしにくい側

福祉施設や病院で、介護職員や看護師が行う着替えの手伝いには、基本となる順番があります。脱ぐときは動く側から、着るときは麻痺や痛みのある側からという原則で、「脱健着患(だっけんちゃっかん)」と呼ばれます。

動く側を「健側(けんそく)」、麻痺や痛みのある側を「患側(かんそく)」といいます。動かしにくい側の動きを少なくできるため、ご本人の痛みや負担が少なくなるとされています。

脱ぐとき
  1. 1動く側(健側)の袖から抜く
  2. 2動かしにくい側(患側)の袖を、最後に抜く
着るとき
  1. 1動かしにくい側(患側)の袖から通す
  2. 2動く側(健側)の腕を通す

片麻痺の方の場合

脳卒中のあとなどで、体の片側に麻痺がある方(片麻痺の方)の場合です。脱ぐときは、麻痺のない動きやすい側の袖から抜きます。着るときは、麻痺のある側の袖から先に通し、そのあとで動きやすい側の腕を通します。

ズボンも同じで、はくときは麻痺のある側の脚から、脱ぐときは動きやすい側の脚から進めます。

骨折や関節の痛みがある方の場合

骨折のあとや、肩・肘・手首などの関節に痛みがある方も、考え方は同じです。脱ぐときは痛みの少ない側から、着るときは痛みのある側から進めます。

足の付け根(股関節)の骨折で人工の骨頭や人工関節に入れ替える手術を受けた方は、ズボンや靴下をはくときに、座ったまま前かがみで足元に手を伸ばす動きに、気をつける姿勢が決められていることがあります。どの動きに気をつけるかは、手術の方法で違うため、主治医やリハビリ専門職に確かめておくのがおすすめです(足の付け根(股関節)の骨折のあとのリハビリ)。

動作の細かいやり方は、状態によって変わります。リハビリ専門職から個別の指導があれば、そちらを優先するのがおすすめです。

3. 座ってする着替えと、本人の力を引き出す手伝い方

前開きの上着:脱ぐとき・着るとき

いすやベッドの端に座って着替えるときの流れです。

脱ぐときは、少し前かがみになってもらい、背中の衣類をまくり上げます。座った姿勢がぐらつきやすい方は、介助する人が前やそばに立ち、体が前や横に倒れないよう支えながら進めます。次に動く側の袖を抜き、背中から服を脱いで、最後に動かしにくい側の袖を抜きます。

着るときは、動かしにくい側の袖から通します。このとき、介助する人が手先を包み込むように支えると、指が引っかからずに通りやすくなります。そのあと背中に服を回し、動く側の腕を通して、背中の服を下ろし、裾や腕まわりを整えます。

ベッドの端に座る高齢の女性の手を、娘が包み込むように支えて、シャツの袖を通そうとしている
袖口をたぐって、手先を包むように支える

かぶるタイプの服

頭からかぶる服は、首や腕を大きく動かす必要があります。関節が固くなっている方や、痛みのある方には、前開きの服より負担が大きくなりやすいとされています。

かぶる服を着るときは、ゆったりしたサイズのものがおすすめです。首や肩が痛むときは、前開きの服にすると進めやすくなります。

ズボンと、立つ場面

座ったまま、動かしにくい側の脚から先に通し、引き上げられるところまで上げます。おしりまで上げるときに、立ち上がる場面があります。立つときは、手すりやベッドなど、しっかりした支えを使ってもらいます。

立つのが不安なときは、無理に立たず、第4章の寝たままの方法も参考になります。立ち上がりの手伝い方はいす・ベッドからの立ち上がりの介助、手伝う人の腰の守り方は介護する人の腰痛予防もご覧ください。

声をかけて、本人の力を引き出す

安全を第一に、ご本人のペースに合わせて進めます。袖口を自分で引き寄せてもらう、動く側の手でボタンを押さえてもらうなど、できる部分はご本人にお願いします。

「右の袖を通しますね」「立ちますよ」と、先に声をかけてタイミングを合わせると、ご本人も力を入れやすくなります。

4. ベッドで横になったままの着替え

ズボンを脱ぐ・はく

脱ぐときは、おしりの左右に手を入れて、腰を少し浮かせてもらいます。横を向かなくても、ズボンを下ろすことができます。足元まで下ろしたら、まとめて抜きます。

はくときは、ズボンの裾から腰まわりまでを、蛇腹(じゃばら)のようにたたんで手に持ちます。片足ずつ、かかとを支えながら膝の上まで引き上げます。両膝まで入ったら、可能であれば腰を浮かせてもらい、その間におしりまで引き上げます。腰を上げるのがむずかしいときは、一度横を向いてもらって引き上げます。

シャツを着る:横向きのしかた

シャツも、動かしにくい側の腕から通します。袖を蛇腹にたたんで、手先を包み込むように支えながら通します。片腕が通ったら、横向きになってもらい、シャツの中心を背骨に合わせます。このとき、シャツの片側の半分を、体の下に入れておきます。

次に、反対側に横向きになってもらい、体の下に入れていた半分を引き出して、反対の腕を通します。仰向けに戻ってもらい、ボタンを留めて、裾を整えます。

横向きにする間は、ベッドから落ちないよう、手を添えてそばを離れないことが大切です。体の向きの変え方は、寝返りと起き上がりの介助で詳しく書いています。

ベッドで横向きに寝ている高齢の男性の肩と腰に手を添えて、そばで支える息子
横向きの間は、肩と腰に手を添えて、そばを離れない

浴衣(寝巻き)という選び方

浴衣のような前を合わせる寝巻きは、袖も身幅も広く、腕を通しやすい服です。左右1回ずつ横向きになってもらえば、全身の着替えが済むという利点があります。

着替えの間は、体が冷えないよう、あらかじめ室温を整え、タオルケットや毛布で体を覆いながら進めます。

関節が固くなっている方の場合

膝などが曲がったまま固くなっている状態を「拘縮(こうしゅく)」といいます。拘縮のある方を横向きにするときは、膝の動きに注意します。

寝返りの手伝いに気を取られて、足元を見ないまま横向きにして、脚がベッドの柵(サイドレール)にぶつかりそうになった、という事例があります。横向きにする前に、脚の位置と柵との距離を確かめておくと安心です。ベッドまわりの環境は介護ベッドの選び方もご覧ください。

5. 着替えのあとに整える:服のしわと床ずれ

服のしわは、同じ場所に当たり続けることがあります

ベッドで過ごす時間が長い方は、体の向きを自分で変えにくいことがあり、背中やおしりの下の服のしわが、長い時間、同じ場所に当たり続けることがあります。着替えが終わったときに、服がしわになったままだと、そこが床ずれ(褥瘡:じょくそう)のきっかけになることがあります。

床ずれは、皮膚の同じ場所が長く圧迫されたり、こすれたりしてできる傷です。体の向きを変えるときも、寝衣のしわによる圧迫をなくすよう整えることが大切とされています。

着替えの最後に、しわを伸ばす

着替えの手順の最後に、背中・腰・おしりの下など、体の重みがかかるところの服のしわを伸ばす、という一手間を加えるのがおすすめです。体の向きを変えたあとも、同じように整えます。

体の向きを変えるときは、ベッドからの転落や、皮膚のこすれを防ぐために、人手があるときは2人で行うと、より安全とされています。

横向きに寝ている高齢の男性の腰のあたりに、娘がやさしく手を当てて、寝間着を整えている
着替えのあとに、横向きのまま、背中の服を整える

着替えは、皮膚を見るよい機会

着替えのときは、背中やおしりなど、ふだん見えにくいところを目にする機会でもあります。赤くなっているところがないか、ひと目見ておくのがおすすめです。詳しい予防の方法は、床ずれ(褥瘡)の予防をご覧ください。

理学療法士の視点から 現場で多いのは、袖を通すところで、ご家族の手が止まってしまう場面です。動かしにくい側から着る、手先を包むように支える。この2つだけでも、ずいぶん通りやすくなります。 袖を通すときの、ちょっとしたこつがあります。動かしにくい側の袖を通したら、袖を肩まで上げず、服を下げたまま、反対の腕を入れるのがおすすめです。肩にかけずにおくと、反対側の袖口が手先まで届きやすくなり、通しやすくなります。 もうひとつ、ベッドで過ごす時間が長い方で気になるのは、着替えのあとに、服がしわになったままになっていることです。ご本人は自分で直せないため、同じ場所にしわが当たり続けて、床ずれのリスクになりえます。 着替えの手順の最後に「しわを伸ばす」を加えてもらえると、うれしいです。

6. 着やすい服の選び方と、手を出しすぎない見守り方

着やすい服の特徴

着やすい服は、前開きで、袖口や肩まわりが広く、生地に伸縮性があるものとされています。ズボンは、ウエストと裾口がゴムになっていると、上げ下げがしやすくなります。

反対に、伸びにくい固い素材や、細身の服は、動きが制限されて、痛みの出やすい方には負担になりやすくなります。

ご本人の好みや気持ちも、同じくらい大切

着やすさだけでなく、ご本人の好みや気持ちも大切です。お気に入りの色や柄の服を着ると、気分が明るくなったり、出かける気持ちがわいたりすることがあります。

「今日はどれにする?」と、一緒に選ぶ時間を持つことも、着替えを穏やかにするこつです。

着替えを、ご本人の役割として残す

ご家族がすべて手伝うほうが早く終わることもあります。ただ、ご本人ができることまで手伝うと、残っている力を使う機会が減ってしまうことがあります。

ボタンを1つだけ留めてもらう、袖口を自分で引き寄せてもらうなど、小さなことで十分です。「できることは、ご本人の日課として残す」という考え方で、見守る部分を作っておくのがおすすめです。

7. 専門職に相談する目安

迷ったときは、ひとりで抱え込まない

着替えの手伝いを続けるなかで、「これでいいのかな」と迷う場面は出てくると思います。袖が通らない、時間がかかる、といったことには、ご家族の工夫で楽になるものと、専門職の目で見たほうがよいものがあります。

次のようなときは、無理をせず、相談するのがおすすめです。

転んだあとに強く痛がる、急に腫れてきて動かせない、というときは、骨折の心配があります。着替えを止めて、早めに受診してください。

相談先

かかりつけ医やケアマネジャー、リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士)に相談できます。実際の着替えの場面を見てもらうと、ご本人の体に合った手順や、服の選び方を教えてもらえます。相談先の探し方は介護・リハビリに関わる職種ガイドをご覧ください。

よくある質問

袖がどうしても通らないときは、どうすればよいですか?

まず、動かしにくい側(痛みのある側)から着せているかを見直すのがおすすめです。袖を先にたぐって手先を包むように支えると、指が袖口に引っかかりにくくなります。
それでも通らないときは、袖口や肩まわりに、ゆとりのある服を試してみます。

頭からかぶる服と前開きの服、どちらがよいですか?

首や肩、腕が動かしにくい方には、前開きの服のほうが負担が少ないとされています。かぶる服は、固まった首や腕を大きく動かす必要があるためです。
ただし、ご本人の好みや、服のゆとりによって着やすさは変わります。迷うときは、リハビリ専門職に相談するのがおすすめです。

寝たままの着替えは、何回横向きにすればよいですか?

シャツを着せるときは、左右に1回ずつ横向きになってもらうのが基本の手順です。浴衣のような前を合わせる服なら、左右1回ずつで全身の着替えが済むとされています。
横向きの間は、ベッドから落ちないように、手を添えてそばを離れないことが大切です。

着替えのあと、服のしわはどこを見ればよいですか?

ベッドで過ごす時間が長い方は、背中やおしりの下など、体の重みがかかるところを見るのがおすすめです。
着替えが終わった直後と、体の向きを変えたあとに、しわが寄っていないかを確かめます。体の向きを変えるときは、転落や皮膚のこすれを防ぐため、人手があるときは2人で行うと、より安全とされています。

着替えの途中で痛がるときは、続けてよいですか?

強く痛がるときは、いったん手を止めて、関節を無理に動かさないのがおすすめです。痛みがあるまま続けると、着替えそのものがつらくなってしまうことがあります。
痛みが続くとき、関節のまわりに腫れや赤みがあるときは、かかりつけ医やケアマネジャー、リハビリ専門職に相談します。

出典・参考にした資料

最新の情報は、かかりつけ医、ケアマネジャー、各相談窓口で確認するのがおすすめです。着替えの方法は、リハビリ専門職の指導があれば、そちらを優先します。