やまねこのリハビリ・介護手帖理学療法士がひもとく、家族の安心と現場の実践ツール

車いすで暮らす家の広さ|廊下・曲がり角・回る広さの寸法の目安通れる幅、回れる広さ、すれ違える広さ。自宅を測る前に知っておきたい基準の見方

監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
公開日:2026年10月23日/最終確認日:2026年10月23日

退院後に車いすを使うことになったご本人とご家族、家屋調査の前に、家の寸法を測っておきたい方に向けて書きました。車いすが通る・曲がる・回る・すれ違うのに、どれくらいの広さが必要なのかを、基準の見方と一緒に整理します。車いすそのものの選び方や、廊下・入口の幅の基本は「車いすの選び方」にあります。この記事は、「家のどこが、足りるか」を考えるための寸法の見方を、くわしくしたものです。

この記事のポイント
  • 車いすで通れるのは幅80cm、通りやすいのは90cmが、国土交通省の建築設計標準の目安です。曲がり角や、廊下から曲がって出入口に入るときは、もっと余裕が必要です
  • その場で回る(360度)なら直径150cm、向きを変える(180度)なら140cmが目安です。電動車いすは、直径160〜180cmが必要になるものがあります
  • すれ違うのは、人と車いすで150cm、車いす同士で180cmが目安です
  • これらは公共の建物の標準です。住宅では、住宅性能表示の目安(通路78cm以上、出入口75cm以上など)が示されています
  • リクライニング・ティルトの車いすは、使うときの全長が約145〜165cmほどになる例があり、回る広さも変わります
  • 足りないときは、車いすの大きさ、使い方、部屋の使い方を先に見直し、そのあとに工事を考えるのがおすすめです

1. 基準の寸法の見方:通る・回る・すれ違う

国土交通省の建築設計標準には、車いすの使い方ごとに、主要な寸法の意味が整理されています。

寸法意味(建築設計標準)
80cm車いすで通過できる寸法(出入口など)
90cm車いすで通過しやすい寸法。通路を車いすで通行できる寸法
120cm人が横向きになれば、車いす使用者とすれ違える寸法。通路を車いすで通行しやすい寸法
140cm車いす使用者が転回(180度方向転換)できる寸法
150cm車いす使用者が回転(360度)できる寸法。人と車いす使用者がすれ違える寸法
180cm車いす使用者が回転しやすい寸法。車いす使用者同士がすれ違える寸法

「通れる」と「通りやすい」の差、「回れる」と「回りやすい」の差は、介助する人の動きや、本人が自分でこぐかどうかで、大きく変わります。自分でこぐ方は、手が壁に当たらない余裕が、あると安心です。

電動車いすは、手動より大きく、360度回転するのに、直径約160〜180cmが必要になるものがあります(座位変換型は、約180cmが目安)。使う車いすの種類を、先に確かめておきます。

2. 住宅の目安

上の寸法は、公共の建物を想定した標準です。住宅には、住宅性能表示制度の「高齢者等配慮対策等級」に、介助式の車いすで暮らしやすい家の目安が示されています。

等級は、新築の住宅で、高齢の方への配慮がどのくらい手厚いかを、5段階(等級1〜5)で示すものです。数字が大きいほど、通路やドア、浴室などの幅や広さに余裕があることを表します。等級は、住宅を建てるときに評価を受けた場合に示されるもので、すでにある家に、等級がついているとは限りません。このあとの数字は、広さを考えるときの目安として見ます。

場所等級5等級4
通路の幅85cm以上78cm以上
出入口の幅80cm以上75cm以上
浴室の短辺(内法)140cm以上140cm以上(等級3は130cm以上)

日本の住宅では、柱の中心から中心まで91cmの廊下が多く、柱や壁の厚みの分、実際に通れる幅は80cmに届かないことが多くあります。通れても、曲がれないことが、よくあります。この目安は、新築のときの基準で、すでにある家は、これに合っていないことが多くあります。基準に足りない=暮らせない、ではありません。家の様子と、使う車いすで、確かめます。

3. 場所ごとの見方

廊下・曲がり角

まっすぐ通れても、曲がって部屋に入れないことがあります。廊下から直角に曲がるには、通れる幅より、広い幅が必要です(くわしい数字は「車いすの選び方」)。曲がり角の手前と先に、広さの余裕があるかも、見ておきます。

出入口(ドア)

開き戸は、開いたドアの厚みやドアノブの分、通れる幅が狭くなります。ドアを開けるための前の広さも、必要です。引き戸にすると、通れる幅を広く使えます(記事「ドアを引き戸に替える工事」)。

トイレ・浴室

トイレは、便器の前と横に、車いすと介助の場所があるかが、ポイントです。トイレの広さは、車いすのままで向きを変えられるかではなく、車いすから便座に、移る動作ができる広さがあるかが、大切です。必要な広さは、本人の動き方や、介助の方法で変わるため、リハビリ職と一緒に、実際に確かめるのがおすすめです。浴室は、洗い場に、介助する人が入る広さが、あるかを見ます。工事の考え方は、住宅改修の記事(「住宅改修の対象工事」)にまとめています。

寝室・ベッドまわり

ベッドの横に、車いすを置いて、乗り移る広さが必要です。乗り移りの向きや、車いすの付け方は、本人の動き方で変わります(記事「ベッドから車いすへの乗り移り(移乗)の介助」)。ベッドの置き方は「介護ベッドの置き場所」にあります。

ベッドの端に座った高齢の男性の横に、車いすがななめに置かれ、理学療法士が乗り移りを見守っている図。ベッドと車いすのまわりに、動ける広さがある
ベッドの横に、車いすを置いて、人が動ける広さがあると、乗り移りがしやすくなります

玄関

玄関は、段差と広さの両方が問題になります。車いすのまま家に入る場合は、スロープなどが必要になります。靴の脱ぎ履きの場所と、車いすを置く場所を、別に考えることもあります(記事「玄関の上がり框の段差をどうする?」)。

4. 車いすの大きさで変わること

車いすの種類で、必要な広さが変わります。家に合わせて、車いすを選ぶこともできます。選び方は「車いすの選び方」にあります。

5. 家の測り方

  1. 車いすの大きさを調べる:使う車いすの、幅と全長(背もたれやフットサポートを含む)を、カタログや実物で確かめます。
  2. 通る場所を測る:廊下は、壁から壁まで(手すりがあれば、その内側まで)、ドアは、開けたときに実際に通れる幅を測ります。
  3. 曲がる場所の広さを見る:曲がり角の手前と先に、車いすの全長が入る余裕があるかを見ます。
  4. 回る場所を測る:トイレの前、寝室、玄関など、向きを変えたい場所の、縦と横を測ります。
  5. 間取り図に書き込む:「かんたん間取り図メーカー」で、車いすを置いて、通れるかを確かめられます。測り方と描き方は「家屋調査の間取り図の書き方」にあります。
廊下で、女性がメジャーを壁から壁へ当てて、幅を測っている図。横には空の車いすが置かれている
廊下は、壁から壁まで(手すりがあれば内側まで)を測ります

家屋調査の前に測っておくと、リハビリ職やケアマネジャーに、的確に相談できます。家屋調査の流れは「退院前の家屋調査とは?」にあります。

6. 足りないときの選択肢

寸法が足りないときは、すぐに工事を考えず、次の順番で見直すのがおすすめです。

  1. 車いすの大きさや使い方を見直す:コンパクトなものにする、家の中は歩行器や伝い歩きを使い、外出や長い距離だけ車いすにする、など。
  2. 部屋の使い方を見直す:寝室を、トイレに近い部屋に移す、通れない場所の手前まで車いすで行き、そこから歩く、など。
  3. 置き場所を見直す:家具や物を動かして、通路や回る場所を広げる。
  4. 小さな工事を考える:開き戸を引き戸にする、敷居の段差を減らす、など。介護保険の住宅改修の対象になるかは、工事の前に確かめます(記事「住宅改修の対象になる工事と、ならない工事」)。

家の中を歩行器や伝い歩きで動く、途中から歩く、といった使い分けは、本人の歩く力と、転びやすさによって合う・合わないがあります。リハビリ職に、安全に歩ける範囲を聞いてから決めるのがおすすめです。

壁を動かして、廊下を広げるような大きな工事は、費用も大きくなります。まず、担当のケアマネジャーやリハビリ職に、実際の家の様子を見てもらって、どの方法が合うかを相談するのがおすすめです。

7. 家族ができる関わり

よくある質問

車いすが通れる廊下の幅は、何cmですか

国土交通省の建築設計標準では、80cmが「車いすで通過できる」寸法、90cmが「通過しやすい」寸法とされています。曲がり角や、廊下から曲がって出入口に入るときは、もっと余裕が必要です。これは公共の建物を想定した標準で、住宅では、住宅性能表示の目安(通路78cm以上、出入口75cm以上など)が示されています。

車いすで、その場で向きを変えるには、どのくらいの広さが必要ですか

建築設計標準では、車いす使用者が回転(360度)できる寸法として、直径150cm、転回(180度の方向転換)できる寸法として、140cmが示されています。電動車いすは、360度回転するのに、直径約160〜180cmが必要になるものがあります。

リクライニングやティルトの車いすは、大きくなりますか

手動車いすの全長は、日本産業規格(JIS)で120cm以下とされています。背もたれを倒し、足を上げて使うリクライニング・ティルト式では、使うときの全長が、約145〜165cmほどになる例があるとされています(寸法は例で、これより大きなものもあります)。

杖を使う場合は、どのくらいの幅が必要ですか

建築設計標準では、杖を片手で使って歩くときの幅は70〜90cmほど、松葉杖を使って歩くときの幅は90〜120cmほどとされています。

家の廊下が狭くて、車いすが通れません。工事しかありませんか

工事の前に、車いすの大きさを変える、歩行器と使い分ける、通れる場所までを車いす、そこから先は歩く、部屋の使い方を変える、といった方法があります。工事を考えるときは、住宅改修の対象になるかを、工事の前に、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認するのがおすすめです。

出典・参考にした資料

この記事は一般的な内容です。基準の寸法は、新築や公共の建物での目安で、すでにある家は、これに合わないことが多くあります。実際に通れるかは、使う車いすと、家の様子で確かめます。工事を考えるときは、担当のケアマネジャーやリハビリ職、お住まいの市区町村の窓口に、工事の前に確認するのがおすすめです。