この記事は、家屋調査の報告書を書く、リハビリ職(理学療法士・作業療法士)や看護師の方に向けて書きました。報告書を受け取る、ケアマネジャーやご家族にも、何が書かれているかの参考になります。
家屋調査の報告書は、測った記録ではなく、退院してからの暮らしを、ほかの人に引き継ぐための書類です。誰が読んで、何に使うのかを先に決めておくと、載せる項目と書き方が、自然に決まります。当日に見る点は「家屋調査のチェックリスト」、間取り図は「家屋調査の間取り図の書き方」にまとめています。
- 報告書を主に読むのはケアマネジャー。そのほか、福祉用具の事業者、施工業者、ご家族が読む。ケアプランや、住宅改修の理由書、用具の手配に使われる
- 載せる項目は、場所ごとの写真、寸法、動作、提案(福祉用具・住宅改修など)、間取り図など。書式は、病院によって違う
- 寸法は、提案の根拠としても使い、提案と結びつけて書く。測った数字が並んでいるだけでは、何に使うのか、読む人に伝わりにくい
- 場所ごとだけでなく、家に帰ってからの1日の流れで書くと、生活が伝わる
- 提案は、どこに・何を・どの高さや長さで・なぜを書き、優先順位をつける
- 専門職から見た安全だけでなく、ご本人の性格や生活リズムに合うか、暮らしの邪魔にならないかを確かめる
1. 報告書は、誰が読んで、何に使うか
報告書を主に読むのは、ケアマネジャーです。そのほかに、福祉用具の事業者や施工業者、ご家族が読みます。読む人ごとに、報告書から知りたいことが違います。
病院の中では、退院前訪問指導として行った場合、指導や指示の内容の要点を、診療録(カルテ)などに記載することになっています。点数や回数、家屋調査のあいだの時間の扱いは、退院前訪問指導料の算定と、家屋調査の時間にまとめています。カルテの記録と、外に渡す報告書は、読む人が違います。外に渡す報告書は、医療の専門職ではない人が読んでも分かることを前提に書きます。
2. 報告書に載せる項目
報告書の書式は、病院によって違います。よく入るのは、次の項目です。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 写真 | 場所ごとに。玄関、廊下、トイレ、浴室、寝室など、ご本人が使う場所。手すりを付ける壁や、段差の場所が分かるように撮る |
| 寸法 | 段差の高さ、便座や浴槽の高さ、通路やドアの幅など。提案の根拠としても使う |
| 動作 | その場所で、ご本人がどう動けたか、どこで手助けが要ったか。自分でできたこと、見守りが要ること、介助が要ること |
| 提案 | 福祉用具(レンタル・購入)、住宅改修、家具の配置、介助の方法。優先順位もつける |
| 間取り図 | 部屋のつながりと、動線、提案した場所の印 |
| 意向 | ご本人とご家族の希望、まだ決まっていないこと |
病院によっては、入院中に、ご家族に調査票(住宅の状況、場所ごとのドアの形や段差など)と、見取り図や写真を出してもらい、調査の前に情報を集めているところもあります。前もってふだんの生活や、ご本人・ご家族の意向を聞いておくと、当日に見る場所が絞れ、報告書にも生かせます。
写真の撮り方や、図面の考え方は、住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方も参考になります。
写真に、手すりの位置や寸法を書き込んで、A4の写真貼付シートにするときは、無料の「住宅改修の写真書き込みシート」が使えます。
3. 慣れないうちに、起こりやすいこと
家屋調査の報告書は、項目がそろっていても、読む人に使ってもらえないことがあります。慣れないうちに起こりやすいのは、次のようなことです。
測った数字が、使われていない
測れるところを全部測って、数字を並べたものの、その数字が、何の提案に使われたかが書かれていない。読む人は、どの数字を見ればよいか分かりません。
直し方:測った数字は、提案の根拠としても使い、提案の文の中で結びつけます。数字と、動作と、提案をつなげて書きます(4章の例)。
家に帰ってからの生活が、伝わらない
場所ごとの記録はあるのに、朝起きてから寝るまで、ご本人が家でどう過ごすのかが見えない。ケアマネジャーは、生活の流れが分からないと、どの時間に、どんな手助けを入れればよいか、考えにくくなります。
直し方:場所ごとの記録とは別に、1日の流れ(起きる→トイレ→着替え→食事→日中→入浴→寝る)に沿って、どこで何が難しく、何を使えばできるかを、短くまとめます。
提案が、本人の暮らしに合っていない
安全を考えるほど、専門職の側の希望を詰め込みすぎてしまうことがあります。その結果、ご本人の性格や生活リズムに合わない、手すりや用具が通り道をふさいで、かえって暮らしの邪魔になる、ということが起こります。使われない用具や、外されてしまう手すりにもなります。
直し方:提案ごとに、ご本人とご家族が、その形で暮らしたいかを確かめます。毎日の動きで本当に使うか、家族の動線をふさがないか、ご本人が受け入れられるかも、あわせて考えます。やめてもらう前提ではなく、今の暮らしを続けるための工夫として提案します。
4. 伝わる書き方のコツ
- 見たこと・測ったことと、提案を分ける:「便座から立つとき、両手で手すりにつかまっても、前にふらつく(見たこと)」と、「便器の横の壁に縦手すり(提案)」を、分けて書きます。
- 提案は「どこに・何を・どの高さや長さで・なぜ」:「トイレに手すり」だけでは、事業者も家族も動けません。理由まで書くと、ケアマネジャーが理由書を書きやすくなります。
- 優先順位をつける:住宅改修の介護保険の対象は、工事費20万円まで(自己負担は1〜3割)です。退院までに要るものと、暮らし始めて様子を見てからでよいものを、分けて書きます。
- 専門用語を避ける:「端座位」「移乗」「ADL」などは、ご家族や事業者には伝わりにくいので、「ベッドの端に座る」「乗り移る」「身の回りの動作」と言い換えます。
- まだ決まっていないことも書く:ご家族の相談が必要なこと、退院までのリハビリで変わりそうなことは、「未定」として残します。
- 早めに渡す:住宅改修は、工事の前に市区町村への申請が要り、福祉用具の手配にも時間がかかります。まとめたら、早めにケアマネジャーに渡すのがおすすめです。
提案の書き方を、トイレを例に比べると、次のようになります。
数字は、説明のための例です。手すりの高さや位置の考え方は、トイレの手すりの高さと位置、手すりの高さの決め方にまとめています。
5. ケアマネジャーが使う形を意識する
報告書を受け取ったケアマネジャーは、主に次のことに使います。それぞれに必要な材料が、報告書にあると、手配が進みやすくなります。
住宅改修の理由書
住宅改修の申請では、住宅改修が必要な理由書を出します。国の通知では、ご本人の心身の状況、日常生活の動線、住宅の状況、福祉用具の導入状況などをふまえて、工事の種類と、それを選んだ理由を書くものとされています。報告書に、どの動作が、なぜ難しく、改修で何ができるようになるかが書かれていれば、理由書の材料になります。くわしくは、住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方をご覧ください。
福祉用具の手配
要支援1・2と要介護1の方は、車いす、特殊寝台(ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器などの貸与が、原則、介護保険の対象外です。日常的に起き上がりや寝返りが難しい方などは、例外にあたる場合があり、その判断には、認定調査の結果や、医師の所見、サービス担当者会議などでの話し合いが使われます。起き上がりや寝返り、歩行の様子を、具体的に書いておくと、話し合いの材料の一つになります。
要介護度が決まっていないときは、介護保険の申請の流れの「結果を待つあいだ」もご覧ください。
6. 記録シートと間取り図を使う
場所ごとのチェックと写真、ご本人の動き、ご家族の困りごと・希望、提案のまとめは、下のツールで記録できます。間取り図も、ブラウザで描いて、画像として保存できます。
関連ツール 家屋調査の記録シート 場所ごとのチェック、写真、動作、提案のまとめを記録して、A4で印刷・PDF保存できます。 関連ツール かんたん間取り図メーカー 家屋調査の間取り図を、ブラウザ上で描いて、画像として保存できます。よくある質問
家屋調査の報告書は、誰に渡しますか
主に、ケアマネジャーに渡します。そのほか、福祉用具の事業者や施工業者、ご家族が読むことがあります。
病院の中では、退院前訪問指導として行った場合、指導や指示の内容の要点を、診療録(カルテ)などに記載します。
報告書には、どんな項目を書けばよいですか
書式は病院によって違いますが、場所ごとの写真、寸法、その場所での動作、提案(福祉用具・住宅改修・家具の配置・介助の方法)、間取り図、ご本人とご家族の意向が、よく入る項目です。
測った寸法は、どう書けばよいですか
測った寸法は、提案の根拠としても使い、提案の文の中で結びつけて書くのがおすすめです。数字が並んでいるだけでは、何に使う数字なのか、読む人に伝わりにくくなります。
決まった書式はありますか
報告書そのものに、国が決めた書式はありません。退院前訪問指導では、指導や指示の内容の要点を診療録などに記載することになっています。住宅改修の申請に使う理由書には、国の標準様式があります。
報告書は、いつまでに渡せばよいですか
決まった期限はありませんが、住宅改修は工事の前に市区町村への申請が要り、福祉用具の手配にも時間がかかります。まとめたら、早めにケアマネジャーに渡すのがおすすめです。
出典・参考にした資料
- 診療報酬点数表 B007 退院前訪問指導料(令和8年度):患者の病状、家屋構造、介護力などを考慮した、退院後の在宅での療養上の指導。医師の指示を受けた保健師、看護師、理学療法士、作業療法士等が訪問すること。指導又は指示内容の要点を診療録等に記載すること。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」:住宅改修の種類、支給限度基準額(20万円)と保険給付の割合、事前申請の書類(住宅改修が必要な理由書、完成予定の状態が分かるもの)。2026年10月確認 リンク
- 厚生労働省の通知「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年老企第42号):理由書に書く内容(心身の状況、日常生活の動線、住宅の状況、福祉用具の導入状況などをふまえた、工事の種類と選んだ理由)と標準様式。くわしくは記事「住宅改修の申請書類と、図面・写真の書き方」の出典を参照。
- 厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」:軽度者に原則対象外となる種目と、例外にあたる場合の判断(認定調査の結果、医師の所見、サービス担当者会議等を通じたケアマネジメント)。2026年10月確認 リンク
- 彩都リハビリテーション病院「家屋状況についての調査票」:入院中に家族に提出を求める、住宅の状況、場所ごとのドアの形式・段差・便座や浴槽の高さ、見取り図、写真。病院の書式の例として。2026年10月確認 リンク
- 宮崎直人ほか「家屋調査実施前に収集すべき重要評価項目の検討」Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy 14巻3号 145〜150ページ(2025年):家屋調査の前に、物理的な住宅情報だけでなく、生活の情報や本人・家族の意向を集めることの重要性。2026年10月確認 リンク
報告書の書式や項目は、病院や地域によって違います。この記事は一般的な内容です。所属する施設の書式や決まり、受け取る側のケアマネジャーとの取り決めを優先するのがおすすめです。