フレイルの判定と
カットオフ値
改定日本版CHS基準(J-CHS 2020)の5項目
5つの項目に答えると、フレイル・プレフレイル・ロバスト(健常)の判定を表示します。各項目のカットオフ値も一覧にしています。入力した内容は、お使いの端末の外には送信されません。
監修:やまねこ(運動器認定理学療法士・リハビリテーション科主任)
対象:理学療法士・作業療法士などのリハビリ職、養成校の学生
フレイルとは
フレイルは、加齢にともなって心と体の働きが低下し、健康な状態と、介護が必要な状態との間にある段階を指します。日本老年医学会が2014年に「Frailty」の訳語として提唱した言葉で、「虚弱」と訳すと衰えが固定したものに聞こえるため、あえてカタカナが使われています。
この言葉が重視されるのは、適切に働きかければ、元の状態に戻る可能性がある段階だという点にあります。すでに介護が必要になった状態と区別して、早めに気づくための概念です。
3つの側面
- 身体的フレイル:筋力や歩行速度の低下、体重の減少など。J-CHS基準が見ているのは主にこの側面です。サルコペニア(筋肉量と筋力の低下)が背景にあることが多くあります。
- 精神・心理的フレイル:意欲の低下、気分の落ち込み、認知機能の低下など。身体面の変化より先に現れることもあります。
- 社会的フレイル:外出の機会が減る、人と会わなくなる、役割がなくなるなど。閉じこもりが身体面の低下につながることが知られています。
J-CHS基準で判定できるのは身体的フレイルの部分です。5項目で0点(ロバスト)でも、外出しなくなった、意欲が落ちたといった変化があれば、別の側面の評価をあわせて考えます。
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J-CHS 2020のカットオフ値
| 項目 | 基準 | 測り方の例 |
|---|---|---|
| 体重減少 | 6か月で2kg以上の、意図しない体重の減少 | 問診 |
| 筋力低下 | 握力が、男性28kg未満・女性18kg未満 | 握力計 |
| 疲労感 | ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする | 問診 |
| 歩行速度の低下 | 通常の歩行速度が1.0m/秒未満 | 歩行テスト |
| 身体活動の低下 | 軽い運動・体操と、定期的な運動・スポーツのどちらも、週に1回もしていない | 問診 |
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判定:3項目以上に当てはまる=フレイル、1〜2項目=プレフレイル、0項目=ロバスト(健常)
この基準は、2008年の日本版CHS基準を2020年に改定したものです(国立長寿医療研究センター)。フレイルの判定は、病気による体重減少や筋力低下との区別が前提になります。判定だけで原因を決めず、医師の評価とあわせて使います。
関連する指標との関係
- 握力のカットオフ値(男性28kg未満・女性18kg未満)は、サルコペニアのAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia、アジアサルコペニアワーキンググループ)2019・2025の65歳以上の基準と同じ値です(握力のページ)。
- 歩行速度の1.0m/秒未満は、AWGS 2019の身体機能の低下の基準と同じ値です(10m歩行テストのページ)。
- サルコペニアは筋肉量と筋力を中心にした状態、フレイルは身体・心理・社会の面を含む広い概念で、重なりはありますが別のものです。
5項目を測るときの注意
握力
立位で、腕を自然に下ろした姿勢で測るのが基本です。左右2回ずつ測り、最大値を採用します。上肢に痛みや麻痺がある側は避け、測れなかったことを記録に残します。握力計の握り幅が合っていないと値が下がるため、示指の第2関節がほぼ直角になるよう調整します。
歩行速度
「通常の歩行速度」で測ります。急いで歩いた値では基準と合いません。歩き始めと止まる前を除くため、前後に助走と減速の区間をとって、中央の一定距離の時間を測ります。ふだん使っている杖や歩行器は、使ったまま測り、何を使ったかを記録します。
体重減少
「意図しない」減少であることが条件です。ダイエットや、医師の指示による減量は当てはまりません。本人の記憶があいまいなことも多いため、健診の記録や、家族からの情報も手がかりにします。
疲労感と身体活動
いずれも問診です。「わけもなく疲れたような感じ」という聞き方は伝わりにくいことがあるので、「この2週間、特別なことをしていないのに疲れを感じることがありましたか」のように、場面に置き換えて尋ねると答えやすくなります。
5項目のうち、測定が必要なのは握力と歩行速度の2つです。この2つが測れる環境かどうかで、使える場面が決まります。
働きかけるときの目安(ボルグ指数と身体活動量)
J-CHS基準は、いまの状態を位置づけるためのものです。当てはまる項目が分かったあと、実際に運動や活動をすすめる段階では、別の目安を使います。
ボルグ指数(自覚的運動強度・RPE)
ボルグ指数は、運動しているときの「きつさ」を本人の感じ方で表す尺度です。6から20までの数字に言葉が対応していて、心拍数を測らなくても強さの見当がつけられます。高血圧の薬(β遮断薬)を飲んでいる方は心拍数が強さの目安になりにくいため、この尺度が主な目安になります。
| 数字 | 感じ方 | 目安 |
|---|---|---|
| 7 | 非常に楽である | ほとんど負荷を感じない |
| 9 | かなり楽である | ゆっくり歩く程度 |
| 11 | 楽である | 会話を続けながら動ける |
| 13 | ややきつい | 会話はできるが、少し息が上がる |
| 15 | きつい | 会話が途切れる |
| 17 | かなりきつい | 続けるのがむずかしい |
| 19 | 非常にきつい | 限界に近い |
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目安として広く使われているのは11〜13(楽である〜ややきつい)です。心血管疾患のリハビリテーションのガイドラインでも、有酸素運動の強さをこの範囲とし、週3〜5回、抵抗運動は11〜13の中等度で週2〜3回と示されています。フレイルやプレフレイルの方に運動をすすめるときも、この範囲が出発点になります。
同じ「ボルグ」でも、息切れや痛みの強さを0〜10で表す修正ボルグスケール(CR10)は別の尺度です。6〜20のRPEと数字が混ざらないよう、記録にはどちらを使ったかを書き添えます。
身体活動の量の目安
J-CHS基準の「身体活動の低下」は、軽い運動・体操と、定期的な運動・スポーツのどちらも週に1回もしていない、という質問です。当てはまった方に、どれくらいを目標にするかの目安として、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の高齢者向けの推奨があります。
- 歩数:1日約6,000歩以上(体力のある方は約8,000歩)
- 時間:1日40分以上、強度3メッツ以上の身体活動(週15メッツ・時以上)
- 筋力トレーニング:週2〜3日
- 多要素な運動(筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせたもの):週3日以上
- 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにする
この推奨量は、達成できない方が多いことも前提にされています。ほとんど動かない状態と比べれば、少しの身体活動でも死亡率は下がることが示されているため、目標に届かないことより、いまより少し増やせるかどうかを見るほうが実際的です。運動を課題として課すより、本人の役割や好きなことを手がかりに、暮らしの中に組み込むほうが続きやすくなります。
結果とあわせて、生活の様子を聞く
フレイルが疑われたときは、判定の結果だけでなく、次のことを聞き取ります。
- 日ごろの生活(動く量、役割)
- 食事(量、内容)
- 口腔機能(かむ・飲み込む)
よくある質問
基本チェックリストとの違いは?
基本チェックリスト(25項目)は、市区町村の介護予防の事業で対象者を見つけるために使われる質問票です。J-CHS基準は、握力や歩行速度の測定を含む5項目で、研究や臨床で広く使われています。目的と場面が違います。
握力や歩行速度が測れないときは?
測定できない項目があると、5項目での判定はできません。問診の3項目だけの結果は、参考として扱い、測定できる場面で改めて評価します。
疲労感や身体活動の項目に、ボルグ指数は使えますか?
判定の代わりには使えません。ボルグ指数は、運動しているその場での「きつさ」を表す尺度です。一方、J-CHS基準の疲労感は「この2週間、わけもなく疲れた感じがあるか」という、運動していないときも続く疲れを聞いています。身体活動の項目も、運動の強さではなく、運動する機会があるかどうかを聞いています。見ているものが違うため、置き換えることはできません。
ただし、判定のあとに運動をすすめる段階では、ボルグ指数が役に立ちます。11〜13(楽である〜ややきつい)を目安に強さを決め、同じ動作を続けたときの数字の変化を見ると、経過が追えます。くわしくは働きかけるときの目安にまとめました。
フレイルとサルコペニアは、どう使い分けますか?
サルコペニアは筋肉量と筋力の低下という、体の一部分をとらえた状態です。フレイルは、そこに疲労感や活動量、心理や社会の面を含めた、より広い概念です。サルコペニアがあればフレイルの身体的な側面に当てはまりやすくなりますが、逆にフレイルでも筋肉量は保たれていることがあります。評価の目的が「筋肉の状態を見る」ならサルコペニア、「暮らし全体の脆さを見る」ならフレイルが近くなります。
プレフレイルの人には、何をしますか?
1〜2項目に当てはまるプレフレイルは、働きかけの効果が期待しやすい段階とされています。運動を課題として課すより、本人の役割や好きなことを手がかりに、暮らしの中で体を動かす機会を増やすほうが続きやすくなります。あわせて、体重減少の背景(食事の量、口の状態、飲んでいる薬など)を確認します。
65歳未満にも使えますか?
J-CHS基準は高齢者を対象に作られた基準です。65歳未満の方に当てはめると、握力や歩行速度のカットオフ値が実情と合わないことがあります。年齢が下の方では、参考にとどめるのが無難です。
判定の結果は、本人にどう伝えますか?
「フレイルです」と結果だけを伝えると、衰えを宣告されたように受け取られることがあります。どの項目が当てはまったのか、その項目に対して何ができるのかを具体的に示すほうが、次につながります。判定は、状態に名前を付けるためではなく、働きかける先を決めるためのものです。
出典・参考にした資料
- Satake S, Arai H. The revised Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria (revised J-CHS criteria). Geriatr Gerontol Int. 2020;20:992-993.:5項目の基準と判定(3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイル) 国立長寿医療研究センター
- 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)「フレイルの診断」:各項目の評価基準 Web
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」:有酸素運動の自覚的運動強度をボルグ指数11〜13とし週3〜5回、抵抗運動は11〜13の中等度で週2〜3回 PDF
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:高齢者版:1日40分以上(約6,000歩以上)、3メッツ以上で週15メッツ・時以上、筋力トレーニング週2〜3日、多要素な運動週3日以上、座位行動を長くしすぎない Web
- 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)「運動強度とは」:自覚的運動強度(ボルグスケール)の数値と感じ方の対応 Web